リアム・ローソン「文脈を無視された」マクラーレンの英国国歌報道を巡り、浮かび上がる時代遅れのF1慣習

ドライバープレスカンファレンスに出席するリアム・ローソン(RBフォーミュラ1)、2024年11月20日(水) F1ラスベガスGPプレビュー(ラスベガス市街地コース)Courtesy Of Red Bull Content Pool

リアム・ローソン(RBフォーミュラ1)は、マクラーレンが優勝した際にニュージーランドではなく英国の国歌が流れることに対し、冗談交じりに疑問を呈した自身の発言について、「文脈を無視して取り上げられた」と説明した。

ポッドキャストでの発言を釈明

マクラーレンはローソンと同じニュージーランド出身のブルース・マクラーレンによって1963年に設立され、その3年後にF1への参戦を開始した。しかしながら、チームはイギリスを拠点としており、グランプリレースで優勝した際には英国国歌が流れる。

これについてローソンは、「むちゃくちゃだよ。特にニュージーランド出身の人間にとっては、顔に泥を塗られたようなものさ!」と語った。

この発言は、F1コメディ・ポッドキャストを自認するThe Red Flags Podcastに出演した際にホストから、マクラーレンが勝った際にニュージーランドの国歌が流れないのはおかしいと冗談交じりに振られて返答した際のコメントで、一同、笑いながらのやり取りの中での出来事だった。

しかしながら、一部の報道はこれを「ローソンが非難した」「激怒した」あるいは「不快感をあらわにした」といった表現で伝えた。

この件についてローソンはラスベガスGPを前に、「文脈が無視されることがある。ポッドキャストであの発言をした時は笑っていたし、冗談のつもりだったのに、文字通りに受け取られてしまった」と説明し、「だから、この件について特に付け加えることはない」と続けた。

「もちろん、僕はニュージーランドの出身であること、そして母国のモータースポーツの歴史を誇りに思っている」

「ブルース・マクラーレンはニュージーランドのモータースポーツ界において絶対的な象徴だ。僕は彼を尊敬し、若い頃に多くを学んだ」

「つまり、ニュージーランド人であることを誇りに思ってはいるけど、国歌についてはこれ以上特に言うことはない」

Courtesy Of McLaren

ブルース・マクラーレン

F1における国歌選択の背景

国歌の選定に関する厳密なルールは存在しない。例えば、英国ミルトンキーンズに拠点を置き、オーストリア資本で運営されているレッドブルがレースで勝利した際に流れるのはオーストリア国歌だ。

一方で、ローソンが所属するRBはレッドブル傘下のチームだが、イタリアのファエンツァに拠点を構えており、2020年にピエール・ガスリーがイタリアGPで優勝した際にはイタリア国歌が演奏された。

国歌の選択が変更されることも珍しくない。イタリアのファッションブランド、ベネトンは1986年にイギリスのトールマンを買収したが、最初の勝利の際に演奏されたのはイギリス国歌で、後にイタリア国歌へ切り替えられた。

国歌演奏は時代遅れ?

世界選手権化された当初はチームと国籍が密接に結びついていた。イギリスのチームは緑、イタリアは赤など、車体の色が明確に色分けされており、国別対抗戦の様相を呈していた。

しかしながら、こうしたナショナルカラーはスポンサーの台頭により、1960年代後半以降、姿を消していった。

現代のF1では、チームの所有権と所在地が必ずしも一致しないうえに、チームメンバーの国籍も多様化している。更に言えば、車体を構成する各々のコンポーネントの設計・製造国もバラバラだ。

バーレーン資本で運営されているマクラーレンが優勝した際に英国国歌が流れるのは奇妙といえば奇妙だが、かといってニュージーランド国歌やバーレン国歌が流れるのも腑に落ちない。

そもそも、優勝した際にコンストラクター向けに国歌を演奏するという慣習自体が、現代のF1にそぐわなくなっているのかもしれない。

Courtesy Of McLaren

ブランズハッチで開催された1966年F1イギリスGPの様子

F1ラスベガスGP特集

この記事をシェアする

関連記事

モバイルバージョンを終了