ハミルトンとラッセル、”鬼の居ぬ間”に無線とコースで激しい火花も「命令だ!」と鈴鹿ラスト5周でウォルフ介入
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鬼の居ぬ間になんとやら、とはよく言ったものだ。ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは指揮官トト・ウォルフ不在のF1日本GPで2度に渡って接触しかけ、喧々諤々の無線を披露するなど幾度も火花を散らせた。
オープニングラップの混乱により導入されたセーフティーカー(SC)を経てレースが再開されるとラッセルはシケインでチームメイトをパス。ただ、すかさず背後についた7度のF1王者はターン1で接触しかけながらも即座にポジションを取り返した。
16周目、ハミルトンがデグナー2個目で膨らむとラッセルがスプーンカーブを前に並走。アウト側から仕掛けたが、ハミルトンに追いやられる形となってコース外に飛び出した。ラッセルは無線を通して、自分たちが戦うべきはお互いなのか、それとも他のチームなのかと問いかけた。
ウォルフは十字靱帯再建術のために鈴鹿を欠場していた。これがラッセルとハミルトンのレースにどれだけの影響を及ぼしたのか分からないが、メルセデスのピットウォールはレース終盤に再び頭を悩ませる事になる。
唯一の1ストッパー、ラッセルは終盤に向けてタイヤに苦戦していた。背後には、ラッセルより10周フレッシュなタイヤを履くハミルトンが、更に4周新しいハードを履くカルロス・サインツ(フェラーリ)に攻め立てられていた。
ハミルトンはチームに対し、チームオーダーを発動して順位を入れけなければ2台揃ってコンストラクター争いのライバルであるフェラーリに交わされると警告した。メルセデスはその翌周、「ジョージには指示を出した。ターン1で入れ替える」とハミルトンを安心させた。
ただラッセルは乗り気ではなく、DRSを利用して2台でフェラーリに防衛戦を挑むのはどうかと提案した。これに対してチームは「ジョージ、これは命令だ。入れ替えろ」と突っぱねた。独「AMuS」によるとこれは、ウォルフが自宅からピットウォールを通して発したメッセージだったという。
残り5周で順位を入れ替えた後、ハミルトンはチームからの指示でラッセルを支援すべく速度を落とした。1週間前のシンガポールGPでサインツがランド・ノリス(マクラーレン)と協力して1-2フィニッシュを成功させた例のDRS戦術だ。
「ジョージにDRSを与えるためにルイスが130Rでアクセルを戻したのが分かったから、クルマの中で笑っちゃったよ」とサインツは回顧した。
この試みは功奏せず、サインツはラッセルを抜き去ると4周もしないうちに7.4秒差を築き上げ、ハミルトンの1秒以内でフィニッシュした。
3人の中で最も低い7位でレースを終えたラッセルは無線を通して「僕は序盤に押し出されたって言うのにチームゲームかよ…」と悔しさを滲ませ、クルマを降りると「あの無線での発言はガス抜きだ」と釈明した。
5位フィニッシュを経て「もうヘトヘトだ」と疲労感を訴えるハミルトンは、「彼(ラッセル)は僕と戦おうとしていたし、それによって自分のタイヤを痛めていた」として、もっと早くチームオーダーを出すべきだったと主張。DRS戦術に関しては「無意味だった」と振り返った。
2023年F1第17戦日本GP決勝レースではマックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインでレッドブルのコンストラクターズ選手権連覇を決め、2位にランド・ノリス、3位にオスカー・ピアストリが続く結果となった。
ロサイル・インターナショナル・サーキットを舞台とする次戦カタールGPは10月6日のフリー走行1で幕を開ける。