事故の責任は佐藤琢磨に非ず、と4冠フランキッティ…チームも異例の声明でレーシングアクシデントを主張

ダリオ・フランキッティcopyright Indycar

超高速のポコノ・レースウェイでのクラッシュについて様々な意見が飛び交う中、インディカー4度のチャンピオンにして、インディ500で3勝を誇るレジェンド、ダリオ・フランキッティは、今回の事故はレーシングアクシデントだと主張。佐藤琢磨に非はないと考えている。

シリーズ第14戦ポコノのオープニングラップでは、時速350kmを超える高速走行中に5台が絡む大クラッシュが発生。タイトル争いの渦中にいたアレクサンダー・ロッシと佐藤琢磨の接触を起点として、ライアン・ハンター=レイ、ジェームズ・ヒンチクリフ、フェリックス・ローゼンクヴィストの計5名が巻き込まれた。

ロッシとハンター=レイは、一昨年までチームメイトであった佐藤琢磨の走りを非難。「馬鹿げている」「恥ずべきこと」として、事故の責任は佐藤琢磨にあると主張した。また、元インディカードライバーのポール・トレーシーに至っては「出場停止処分が妥当」と述べるなど、佐藤琢磨への厳しい意見が噴出している。

ダリオ・フランキッティは琢磨を擁護

本戦の中継を担当した現地NBCスポーツでの放送では、事故のリプレイとして、事故前後のロッシのオンボード映像が流された。この映像では、事故発生直前に、ロッシの右横に並んだ佐藤琢磨がステアリングを左に切ったかのような動きをみせていた。

ロッシと琢磨のオンボード映像

だが、ダリオ・フランキッティは、このような状況での視覚的証拠は誤解を招くものだと警告。事故の責任は佐藤琢磨を含めたどのドライバーにもないと断じ、レーシングアクシデントだと主張した。

「全員が無事で良かった。見方によって様々な主張がある。これほどコース幅が広いサーキットでは、完全にまっすぐ走り続けることは不可能だ。なぜならば、ドライバーに視覚的な手掛かりを与えるような目印が不足しているからだ。それに、路面の継ぎ目やダーティーエアの影響によってクルマは(ドライバーの意図とは無関係に)動いてしまうものだ」

「2台(ロッシとハンター=レイ)が同じ方向へと動き、もう1台(佐藤琢磨)は反対方向へと動いていたように見えるが、いずれもミリメートル単位で走行しており、結果的にアクシデントへと至った。これは、こういった状況下で相応の経験をしてきたこの僕が、リプレイ映像を見て感じた意見だ。僕としては、ドライバー同士の意見が食い違っているのは完全に理解できる」

ロッシとハンター=レイは共に、佐藤琢磨がロッシ側に向かって横切ろうとしていたと考えているが、レース中に放映されなかった佐藤琢磨のオンボード映像を見ると、佐藤琢磨はステアリングを全く切っておらず、左にも右にも動かずにまっすぐに走行。責任が佐藤琢磨にあるとは言い難い事実が記録されている。

RLL Racingが異例の声明を発表

佐藤琢磨が所属するレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLL Racing)は20日、一件について異例の声明を発表。佐藤琢磨には一切責任がない事を強調した。

「日曜日にポコノ・レースウェイで開催されたレース1周目に事故が起きてしまった。だが、全員が無事であった事に我々はホッとしている」

「通常、こういった状況でチームがコメントを発表する必要はないが、タクマに非難が集中している状況を鑑み、オンボードデータとカメラ映像によって判明している事を明確にする必要があると感じている」

「データとビデオから明白なことは、タクマがこの事故でアレクサンダーの方に向かって動いていないという事だ。実際に、タクマは(事故の瞬間)にまずステアリングを右に切っている。最初の接触の直後、彼はマシンを修正しようとしていた」

「レースでこの手の事故が発生するのは常であり、レースというものはトラックポジションが重要だ。我々の見解では、今回の一件はスポーツの一部とみなすべきものだと考えている。レーシングインシデントだ」

「今回はチャンピオンシップの行方に影響を与えかねないレース・インシデントだった。2015年のポコノでのクラッシュの時は、我々が同様の影響を受けた。だからこそ、ドライバーやチームのフラストレーションについては十分理解しているつもりだ」

スリーワイドでターン2に向かっていた3人の内、両側から挟まれる格好となったロッシに為す術はなかった。外側にいた佐藤琢磨は、これ以上アウト側のラインを走行する事は出来なかった。唯一、今回の接触事故を避けるチャンスを作れたのは、もっともイン側にいたハンター=レイだが、明らかな不手際とは言えず、事故の責任を問うのは酷だ。ハンター=レイが右へと寄せた事でロッシも右に寄り、結果として3者がタイトになり事故が発生した。

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