F1スチュワードの判断基準:ペナルティーの”重さ”は事故の”結果”に左右されない

FIAレースディレクターを務めるマイケル・マシとアルピーヌのトラックサイド・オペレーション部門を率いるアラン・パーメイン、2021年7月4日F1オーストリアGPにてCourtesy Of Alpine

FIAレースディレクターを務めるマイケル・マシは、インシデントの「結果」はペナルティ裁定の判断材料であってはならないとするのがスチュワードの長年の通例だと説明した。

物議を醸すF1イギリスGPでの1周目の事故について「主に責任がある」とされたルイス・ハミルトンは10秒ペナルティを科され、「どちらかと言えば被害者」とされたマックス・フェルスタッペンはリタイヤに終わった。

そしてレースを終えてみればハミルトンは逆転優勝によって満足の25ポイントを手にし、対するフェルスタッペンはノーポイントに終わり、ドライバーズタイトル争いにおけるフェルスタッペンのリードは33点から8点にまで激減した。

こうした事から、10秒ペナルティはリタイヤという「結果」に見合ったものではないとの声が一部で上がっているが、マシはエマニュエル・ピロら5名から成る審判団の判断を支持した。

故チャーリー・ホワイティングに代わってレースディレクターを担う42歳のオーストラリア人モータースポーツディレクターは「私はスチュワードと彼らが適用したペナルティに同意する」と述べた上で、スチュワードの役割を次のように説明した。

「長年に渡って続いてきたスチュワードの重要な役割のひとつは、インシデントにおける判断を下す際に結果を考慮してはならないという点にある」

「つまりインシデントを判断する際には、インシデントそのもの、インシデントの事実的側面を判断するのであって、結果としてその後に起こることは考慮しないという事だ」

「これはスチュワードが長年に渡って取り組んできた事であり、トップダウンでアドバイスがなされてきた事でもある。(考慮してはならないのは)チームの関与などもそうだ」

「結果を判断材料としないのは、そうしてしまうとあまりにも多くの変数が絡んでくるため、事件そのものを判断する事ができなくなってしまうからだ」

チャンピオンシップの結果を左右しかねないジャッジになるとの懸念から、シルバーストンでの一件ではメルセデスとレッドブル・ホンダ双方のチーム代表が裏で”暗躍”した。

赤旗の最中、トト・ウォルフがスチュワードに会いに行った事を知ったクリスチャン・ホーナーはこれを追いかけた。

その理由についてホーナーは、スチュワードによる「公正な判断」を望んだためであり「彼がスチュワードに働きかけるためにあそこに行った事は受け入れがたい」と説明した。

「スチュワードを邪魔するべきじゃない。スチュワードは冷静に判断しなければならない」

一方のウォルフは、ホーナーがマシと連絡を取った事を知りマシに連絡したところ、マシから「遠慮なく2階に行ってスチュワードを訪ねてくれ」と言われたためにそれに従ったまでだと主張した。

なおレースの最中にチーム代表がスチュワードと直接話をする事は珍しくなく、マシ自身がそれを推奨している。

マシは両チーム代表からコンタクトがあった事について「誰もが自分の縄張りを守りたいと思うものであり、それは彼らの仕事の一部だ」として、何も問題ないとの認識を示した。

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