再審請求の却下はフェルスタッペンの走りを正当化するものに非ず…混乱するドライバーと分断を懸念するチーム代表
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スチュワードによるメルセデスの再審請求却下は、F1サンパウロGPでの48周目のマックス・フェルスタッペンを正当化するものではない。あくまでも、新たに提出された証拠が再審請求の要件を満たしていなかったという事を意味するに過ぎない。
メルセデスはインテルラゴスでのレース2日後に公開された新たなオンボード映像を証拠として、再審請求権を要求してスチュワードに事故の再調査を迫ったが、国際スポーティング・コード第14条1項1に定める要件を満たしていないとして却下された。
今回行われた聴聞会はメルセデスに再審請求権を認めるか否かを判断するために行われたものであり、サンパウロでの一件そのものを再評価するために行われたわけではない。
スチュワードは声明の中で「これはレース中に行われたスチュワードの決定を肯定または検証するものではなく、再審請求権が存在するか否かに関する評価である事に留意されたい」と記し、わざわざこれを強調している。
何が許容される動きで、何がペナルティの対象になるのか分からない…この事態は何人かのドライバーに混乱を与えたようだ。
請求却下を受け、金曜の夜にロサイル・インターナショナル・サーキットで行われたドライバー達とFIAレースディレクターを務めるマイケル・マシとのミーティングでこの件が議題に上げられた。
ルイス・ハミルトンは「マックス以外のすべてのドライバーが明確な説明を求めていた」とした上で、今後、同じようなインシデントが発生した場合、異なるスチュワードが同じ裁定を下すとは限らないと言われた、と明かした。
F1ドライバー組合、グランプリ・ドライバーズ・アソシエーションのディレクターを務めるジョージ・ラッセルは「ケースバイケースで対応しなければならない事は理解している」としながらも、フェルスタッペンのハミルトンに対する防御は「一線を越えていた」と疑問を呈した。
ラッセルは、結果的にハミルトンが優勝したためにフェルスタッペンにペナルティが科されなかったのでは言わんばかりに、裁定に際してはインシデントの結果ではなくインシデントそのものを評価しなければならない、とのスチュワードの基本方針を繰り返した。
スチュワードの一貫性のなさを一貫して批判し続けているドライバーの一人、フェルナンド・アロンソは改めて「白黒はっきり」したルールの必要性を訴えた。
アロンソの後輩、カルロス・サインツもまた「クルマをアウト側にプッシュしてワイドに走らせても良いのかどうか、そうすることでどうなるのかを知る必要がある」と述べ、具体的な例を挙げて問題点を指摘した。
「警告が出されるのか? 一度なら許されるのか? 2、3回やって警告を受けた場合に、4回目はどうなるのか? それともオーストリア(ペレスとノリスの一件)の時のように、すぐにペナルティが科されるのか?という事をね」
メルセデスのトト・ウォルフ代表は、再調査が行われず線引が曖昧なままとなっている事で、再びチャンピオンシップ争いの当事者達が同様の状況に遭遇した際に巻き起こるであろう状況を懸念している。
「この後に控える3つのレースのいずれかで議論を呼ぶような事態が発生した場合、この問題が如何ほどの分断と論争を引き起こすか想像できるだろうか? 単純な話だ。明確になっていないのだから」
F1のスチュワードは各グランプリ毎に国際自動車連盟(FIA)指名の3名(レース主催国以外の国籍保持者)とレース開催国のモータースポーツ管轄団体(ASN)が指名する1名の計4名から構成される。
つまり、グランプリ毎に異なる面々がインシデントの調査を行い、ペナルティーの有無や内容を判断しているわけで、これが裁定の一貫性の欠如に繋がっているとの指摘もある。
こうした背景から、選手権の全ラウンドに出席して全てのインシデントを裁く”常任スチュワード”を任命すべきだという声も上がっている。