アウディF1、パワーユニット開発開始「僅か2年」でレース距離走破…”全目標達成”で次フェーズへ
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2026年のF1参戦に向けてアウディは、パフォーマンスや燃焼効率など、設定された全ての目標を達成しており、統合されたF1パワーユニット(PU)のテストベンチ作業を通してグランプリを想定したレースディスタンスを走破するなど、順調に開発を進めているようだ。
ドイツの大手自動車メーカーは第6のPUサプライヤーとして次世代レギュレーションが導入される2026年よりF1に参戦する。車体とチーム運営に関しては、現在タイトルスポンサーのステイクの名でエントリーしているザウバーを完全買収し、ファクトリー体制を取る。
22基の最新鋭のテストベンチを備えるノイブルクに建設されたアウディ・フォーミュラ・レーシング(AFR)のファクトリーでは2022年からPUの開発が進められているが、その詳細はこれまでほとんど明らかにされておらずベールに包まれていた。
アダム・ベイカーCEOが2024年6月28日(金)に明らかにしたところによると、開発開始から「僅か2年」ながらも、ICEの単気筒テストや、電動モーターといった別個のコンポーネントの開発を経て、今やバッテリーや制御機器を含め、全てが統合されたPUがフルレース距離を消化するなど、開発は順調だという。
「アウディのパワーユニットは既にテストベンチでレース距離のシミュレーションをカバーしている」とベイカーは語る。
「2023年は個々のコンポーネントに関するテスト時間を大幅に増やしたのだが、これにより得られた経験を次の構築段階に並行して組み込むことができている」
最高技術責任者のシュテファン・ドレイヤーは「テストの目的に応じて、現在のF1カレンダーとは異なるレイアウトでパワーユニットをテストベンチ上で動かしている」と補足する。
「例えばラスベガスは、エネルギーマネジメントという点で開発チームにとって興味深いコースだ。2キロメートルに渡る全開走行、そして高速と低速のコーナーの組み合わせは、内燃エンジンとERS(エネルギー回収システム)コンポーネントの微調整に最適な開発環境を提供してくれる」
F1パワーユニットの開発経験がないにも関わらず、プロジェクトが順調に進展しているのは他のモータスポーツでの経験によるところが大きいとドレイヤーは説明する。
「特に重要だったのは、内燃エンジン、電気モーター、バッテリー、制御エレクトロニクス、ソフトウェアなど、個々のコンポーネントの開発における良好な基礎を作り、早い段階でそれらを互いに連動させることだった」
「これまでのモータースポーツ・プロジェクト、ル・マンやフォーミュラE、そしてダカールでの経験が大いに役立った。我々は従来型、ハイブリッド、純電動ドライブトレインの開発で成功を収めている」
「とは言え、F1における挑戦は、最先端技術と競争という点で全く異なる。これは我々のパートナーやサプライヤーにも当てはまる。だが、あらゆる方面から非常に強いコミットメントを感じている」
ドレイヤーはまた、「これまでのところ、パフォーマンスと効率に関するあらゆる目標を達成している」と強調し、「次はパワーユニットとトランスミッションを組み合わせて同様のテストを行う。同時に、設定された目標を達成するためにパフォーマンス開発にも全力を注いでいる」と付け加えた。
「我々は2022年より、F1で長年の経験を持つ強力なパートナーとともに燃料の開発を進めてきた。燃料は本当に決定的に重要だ。2026年に導入される新しい持続可能燃料は、競争力の構成材料として大きな比重を占めるからだ」
ホンダやフェラーリ、メルセデスといった他のF1パワーユニットメーカーと同等の位置に立つためにアウディは、コストキャップの制限内で運用効率を最大限に高めることを重視し、アウディ・フォーミュラ・レーシングGmbHという新会社を設立して敢えて白紙の状態からスタートすることで、構造、システム、プロセスをF1プロジェクトに最適化させた。
ファクトリーには経験豊富なエンジニアや技術者が23カ国から集まっており、外部の人材や組織が持つF1でのノウハウを積極的に取り入れるなどして学習曲線を加速させている。
車体側の開発を担当するザウバーの方でも2026年に向けた取り組みがスタートしており、スイス・ヒンウィルのファクトリーではギアボックス・ハウジングやリアアクスルなどの構造部品の開発が進められている。