期限迫るアウディとポルシェのF1参戦、焦点は”形式”…レッドブルの動向に神経を尖らせるライバル
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フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディとポルシェがF1に参戦する否かは既にホットな話題ではない。今は参戦を前提として、どういう形で関与するのかに焦点が移っている。
両ブランドのダブル参戦なのか。それとも1ブランドのみなのか。パートナーシップとしてなのか。パワーユニット・サプライヤーとしてなのか。それとも既存チームの買収によるワークス参戦なのか。
可能性が高いとされているのは、グループとして一つのパワーユニットを開発・製造し、FIA世界耐久選手権(WEC)でVWグループが展開したのと同じ様に、アウディとポルシェを同時参戦させる計画だ。
ポルシェ・モータスポーツ部長を務めるトーマス・ラウデンバッハは2枚看板を掲げる意義を費用対効果で説明する。パワーユニット開発には莫大なコストが生じるが、一度作り上げてしまえば1チームで使うよりも2チームで使った方が回収効率が上がるというわけだ。
ではチームはどうするのか? コラボレーションの可能性を探るため、マクラーレン、レッドブル、ウィリアムズ、ザウバーの4チームと既に話し合いの場が持たれたと見られている。
独auto motor und sportによるとVWの第一プランはアウディがマクラーレンを買収し、ポルシェが現在のホンダと同じ様な形でレッドブルとパートナーシップを結ぶものだという。パドックではレッドブルの代替としてウィリアムズが取り沙汰されている。
マクラーレンの買収はグループ全体か、あるいはレーシングチームのみが検討されているというが、今のところマクラーレン側は売却に関心を持っていないように見える。
メルセデスのトト・ウォルフ代表とマクラーレンのザク・ブラウンCEOが明らかにしたように、F1人気の高まりに加えてバジェットキャップの導入とより公平な分配金システムが整備された事でチームの価値は右肩上がりだ。
また、昨年末にマクラーレン・レーシングの一部株式を1億8500万ポンドで取得した米国を拠点とするMSPスポーツ・キャピタル率いるコンソーシアムは、2022年に出資比率を3分の1にまで高める意向だと伝えられている。
レッドブルは2026年に向けてパワーユニットを内製化するために英国ミルトンキーンズのファクトリーに専用施設を建設している。クリスチャン・ホーナー代表によると来春には稼働する予定との事で「毎週のように新しいメンバーがチームに加わっている」と言う。
ただしあらゆる選択肢をオープンにしており、ポルシェがコラボレーションに興味を示したり、ホンダが復帰を考えたりした場合に柔軟に対応する用意があるとしているが、フェラーリ、メルセデス、ルノー(アルピーヌ)はそんなレッドブルの動向に神経を尖らせているようだ。
自分達の2倍の予算と2倍のテストベンチ作業をライバルに許す可能性があるとすれば、既存のエンジンメーカー達が警戒を強めるのも頷ける。ポルシェとレッドブルが並行して開発を進めるシナリオが成立し得る状況を許すわけにはいかない。
いずれにせよ、最終決定までに残された時間は多くはない。
F1を統括する国際自動車連盟(FIA)は12月15日に開催される世界モータースポーツ評議会(WMSC)で2026年以降の新しいパワーユニット・レギュレーションを採択したいと考えている。
現時点ではまだ、解決すべき問題が幾つか残されているようだが、クリスチャン・ホーナーやフェラーリのスポーティング・ディレクターを務めるローラン・メキーズは同日までの合意に比較的前向きな姿勢を示している。
先行開発したメルセデスがV6ハイブリッド時代に支配的な強さを誇った事が象徴的であるように、少なくともスタートシグナルと同時に走り出さなければ遅れを取るのは必至。伝えられるところによると、フォルクスワーゲンはF1プロジェクトに関する最終計画を12月初旬の取締役会で投票にかける予定だという。タイムリミットは後ひと月しかない。