生粋のレーサーであり続けたフランツ・トスト「緊張」を以て挑んだ45年に渡るキャリアの最終戦、角田裕毅の戦略を悔やむ
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チーム代表としての18年に渡るF1キャリアのラストレース。ヤス・マリーナ・サーキットのグリッドに立つアルファタウリのフランツ・トスト代表は緊張していた。ただしそれは、これが引退レースだから、というわけではない。
アブダビでのレース前グリッドでは国歌斉唱に続いて別れのセレモニーが行われた。全チーム代表、そしてマックス・フェルスタッペンやアレックス・アルボンなど、ゆかりのあるドライバーが勢ぞろいした。
レーシングドライバーとして1979年にスタートした45年に渡るモータースポーツ・キャリアの最後の1戦。トストの頭の中にあったのは”引退”の2文字ではなく、あくまでも目の前の”7位”だった。
レース前のグリッドでインタビューに応じたトストは「緊張している。良いパフォーマンスを発揮してコンストラクターズ選手権で7位を獲得する事が目標だからね」と語った。
「そのためには多くのポイントを稼がなければならない。正直に言えば、今の私の頭の中にあるのは、その事だけだ」
トストにとっての最後の弟子、角田裕毅は恩師に捧げる特別なトリビュートヘルメットを被って6番グリッドに着いたが、直近のライバルが揃って2ストップ戦略を採った一方、1ストップを採用した事で、チェッカーを前に8位に後退した。
その結果、ウィリアムズに対して3点及ばず、アルファタウリはコンストラクターズ選手権での逆転を果たす事ができなかった。
56周のレースを振り返ったトストは、1ストップ戦略は誤りだったと悔やんだ。
「6番手スタートのユーキと15番手のダニエル(リカルド)に対して我々は戦略を分けることにした。ユーキが1ストップ、ダニエルが2ストップだ。2人は1周目にポジションを守ったが、最終的に、これは間違った戦略だった」
「2ストップ戦略を採っていれば、ユーキは6位、あるいは少なくとも7位でフィニッシュできただろうと私は考えている。何故なら彼は最終ラップで彼を追い抜いた他のライバルより速かったのだから」
「その結果、我々はコンストラクターズ選手権8位でシーズンを終える事になった。7位を目標としていたわけだから残念だよ」
「それでも空力面においては幾つか前向きな材料があった。新しいフロアは本当に上手く機能していた。来年のマシン開発に向けて良い兆しだ」
「引退レースというこの場を借りて、FIA、FOM、すべてのF1チーム、ホンダ、ピレリ、そして過去18年間に渡って良好な関係を築いてきた全ての人たち、そしてもちろん私のチーム、幸運にも一緒に仕事をする事ができた全てのドライバー、全てのF1ファンに感謝したい」
「みんなの今後の成功を願っている」
チーム代表としてのF1キャリアは終わった。だが、F1に対する愛情が終わる事はない。トストは「F1は私の人生で最も多くを占めるものだ。今後もそれは変わらない。なぜならこれからは家で全てのレースを見るからね」と語った。
2000年にF1キャリアをスタートさせたトストは、2006年から伊ファエンツァのチームを率いてきた。
これまでに監督したドライバーはセバスチャン・ベッテル、ダニエル・リカルド、マックス・フェルスタッペンなど17名に及ぶ。2008年のモンツァではベッテルを、2020年のモンツァではピエール・ガスリーを勝利に導いた。