どう変化した?2020年のF1エンジン勢力図…ルノーと肩を並べるホンダ、50馬力遅れるフェラーリ

レッドブル・ホンダRB16のノーズに掲げられたHondaのロゴcopyright Red Bull Content Pool

1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ導入から7シーズン目を迎えた2020年のF1世界選手権。ホンダ、メルセデス、フェラーリ、ルノーの4つエンジンメーカーのパワー勢力図はどう変化したのだろうか?

各マニュファクチャラーは詳細な馬力を公開しておらず明確な事は分からないものの、ホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクターが開幕戦の予選を振り返り「驚いた」と語るように、メルセデス製F1パワーユニット「M11 EQ Power+」の飛躍的な進化には眼を見張るものがあり、対照的に、昨季のグリッドを席巻したフェラーリ製PUは最下位に転落したように見える。まるでハイブリッド・ターボ導入の最初の数シーズンに戻ったかのようだ。


メルセデスの歴代F1パワーユニット

ハイブリッド・ターボが導入された2014年は、それまでの空力学に代わってエンジンパワーがチャンピオンシップの主たる決定要因となった。英国ブリックスワースでは、新レギュレーション施行の遡ること7年前から、HGU-KとMGU-Hを備えるパワーユニットの開発が進められていた。この先行投資によってメルセデスが得たアドバンテージは莫大だった。

メルセデスは19レース中16レースで優勝を果たしてチャンピオンを獲得。同じメルセデス製PUを使うカスタマーチームの活躍も著しく、ウィリアムズは3位、マクラーレンは5位、そしてフォース・インディアは6位でシーズンを締め括った。対してフェラーリ勢は、ワークスが4位、マルシャが9位、そしてザウバーが10位と下位に沈んだ。フェラーリのマッティア・ビノット代表は2014年当時について、メルセデスに対して80馬力劣っていたと認めている。

2020年シーズンはまだ、3戦を消化しただけではあるものの、先の意味において今季はハイブリッド・ターボ初年度を彷彿とさせる。メルセデスを背負うものが前を走り、フェラーリが遅れる。露骨な馬力の差が感じられる。

今ではマラネロ自身が認め、FIA技術指令書によって穴が塞がれているが、昨年のフェラーリ製PU「064」は 、レギュレーションに準拠しない方法で違法な出力を得ていた。メルセデスのトト・ウォルフ代表によると、フェラーリとの馬力差は最大70馬力以上も開いていたという。2019年の跳馬は向かうところ敵なしのパワーを誇っていた。

だが、そんな序列も、今シーズンは完全にひっくり返ってしまった。

今季のメルセデスエンジン勢の活躍には脱帽だ。ピンクメルセデスこと、レーシングポイント「RP20」はコンスタントに表彰台に上がっても何ら不思議ないほどに速く、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーとダニール・クビアトが認める通り、ウィリアムズはグリッド最下位から抜け出してミッドフィールドの一員と見なされている。

レッドブル・リンクでの開幕戦でシャルル・ルクレールは、昨季の自身のポールタイムより1秒も遅い7番手に終わり、セバスチャン・ベッテル共々スピードトラップで最下位に並んだ。ハースとアルファロメオを含むフェラーリPU勢は、昨年比で全車が0.6〜1.1秒もタイムを落とした。

燃料流用に関する一連の技術指令書が発行されたのは昨年11月に入ってからであったため、マラネロにはこれに対応できるだけの十分な時間がなかった。フェラーリ、ハース、アルファロメオは長期に渡って苦しみ続ける事だろう。

今季の序列はどう変化したのか? 独AMuSが第4戦イギリスGPを前に、GPS分析によって導き出した今季最初の試算によると、メルセデスが最も高いパワーを誇り、25馬力差でルノーが、30馬力差でホンダが、そして50馬力差でフェラーリが続いているという。

Pos. メーカー 馬力
1位 メルセデス
2位 ルノー -約25馬力
3位 ホンダ -約30馬力
4位 フェラーリ -約50馬力

分析に際しては車体の空気抵抗値が必要となるが、今回はシーズン当初の仮定値を用いており、今後データが増えるに従ってより正確な値を求める事ができるとしている。そのため、具体的な馬力については一定の振れ幅があると見るべきだが、並びについては概ね合点がいく。

ルノーの「E-TECH 20」は2019年型のパフォーマンスレベルを維持した上で、信頼性を向上させることに焦点を置いた。他方ホンダの「RA620H」は出力を増し、そんなルノーと肩を並べるようになった。AMuSはホンダについて、予選での相対的パフォーマンスはやや後退したものの、レースディスタンスにおいては若干の改善が見られると分析している。

F1イギリスGP特集

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