ラッセルへの”勝てる”無線、F1キャリア史上「最も非常識だった」と赤面のメルセデス代表トト・ウォルフ
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F1オーストリアGP終盤のジョージ・ラッセルへの無線についてメルセデスのトト・ウォルフ代表は、20年来に渡るF1キャリアの中で「最も非常識」なものだったと認め、「永遠に恥じる」と語った。
首位を争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)が残り8周で衝突したことで、当時3番手を走行していたラッセルに突如、”棚ぼた勝利”のチャンスが舞い込んだ。
この事故を目にしたウォルフが興奮のあまり、無線を通して「ジョージ、勝てるぞ! 勝てるぞ、ジョージ」と叫ぶとラッセルは、上司に対して「糞ったれ!ドライブさせてくれ!」と怒鳴り返した。
無理もない。当時のラッセルは、1周4,318mのレッドブル・リンクの最難関の一つ、ターン3に向けて、高速からの難しいハードブレーキングに差し掛かるタイミングだったのだ。
分別を欠いたウォルフの無線についてラッセルは、トップチェッカーを受けた後の会見の中で、「トトが突然、耳元で『勝てるぞ!』って叫んだんだ。その瞬間、危うくクラッシュしかけたよ。それほど大きな声だったんだ」と語った。
ウォルフは自らの振る舞いを次のように振り返った。
「あれはメルセデスで過ごした20年間の中で最も非常識な行為だった。私は永遠にこれを恥じるだろう」
「ドライバーにメッセージを送るタイミングには気をつけなければならない。ブレーキング中や高速コーナーでは絶対にやってはならないからだ」
「彼がどこにいるのかGPSで確認しなかったんだ。ただ、2人が互いにぶつかり合うのを見て、感情的にボタンを押して『これで勝てる』と言ってしまった」
「あのメッセージで彼をコースアウトさせる可能性もあった。そんな事になったらどんな気分になっただろうか」
「私は感情的な人間だ。チーム、ルイス(ハミルトン)、そしてジョージの活躍を見るのは楽しい。あの瞬間、ただ感情に流されてしまった。彼が言ったように、本当に恥ずかしかった」
ステアリングを握っている時こそ、当然ながらも暴言で突き返したラッセルだが、クルマを降りた後、上司の例の非常識な振る舞いは「情熱の表れだ」と理解を示した。
「これは僕ら全員が情熱に溢れていることの表れだ。チームはここのところ、多大な努力を注いできた。ファクトリーの皆は一刻も早くアップグレードを用意するために残業を続けてきた。時にはその努力に見合うだけの報酬を得られないこともあるけど、今日は報われた」とラッセルは付け加えた。
残り8周で降って湧いたリードを手にしたとは言え、後方からオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が猛追する中、ラッセルは勝利を確信していなかった。
「正直、ピアストリに追いつかれると思っていたんだ。でも、追いつかれるのと追い越されるのは別の話だと考えることにした」とラッセルは振り返る。
「昨日のレースでは10周に渡ってカルロス(サインツ)にDRSを許してしまい、僕もカルロスのDRSに8周もいたけど、オーバーテイクするのは楽じゃなかった。だから自分に『ベストを尽くせ、ヒーローになろうとするな、そうすれば勝てる』って言い聞かせたんだ」