F1予算:無実主張のレッドブルが審理での徹底抗戦を選ばなかった理由

ミルトンキーンズのファクトリーに展示されたマックス・フェルスタッペンのヘルメットと歴代レッドブルF1マシン、2022年1月26日Courtesy Of Red Bull Content Pool

2021年の予算超過騒動は、レッドブルが700万ドルの罰金と空力テスト10%減を受け入れる形で幕を下ろした。潔白を訴えていたにも関わらず、何故コストキャップ裁定委員会の審理で無実を争わなかったのだろうか?

「不本意ながら」のABA締結

結果的には昨年度のコストキャップを186万4000ポンド(約3億1922万円)、率にして1.6%超過したわけだが、この内の143万1348ポンドは想定税額控除の処理を誤った事に依るものだった。FIAは、この処理が正しく行われていれば違反額は43万2652ポンド(0.37%)に留まったと指摘している。

レッドブルには「違反是認(ABA)」を締結せず徹底抗戦する選択肢もあった。コストキャップ裁定委員会はFIA総会にて選出された6名から最大12名までの審査員で構成されるもので、聴取を経て多数決で裁定が下される仕組みだ。

規定上、ABAを締結した場合、科す事ができるペナルティの選択肢は制限される。ただその一方で、チームは定められた費用を負担し、制裁措置および強化された監視を受け入れ、更には異議申し立ての権利を放棄することになる。

ヘルムート・マルコと同じ様にクリスチャン・ホーナー代表は、重ね重ね、自分達が提出した会計報告書の正当性を主張してきたが、事実上の司法取引を「不本意ながら」受け入れた。

少なからず争う価値はあったように思われれるが、何故レッドブルは審理ではなくABA締結の道を選んだのか?

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事態の早期収束を優先

ホーナーはこの点について「もし我々がコストキャップ管理局との間のプロセスを引っ張り、事実上の控訴に踏み切っていれば、(終結は)更に何ヶ月も後の事になっていただろう」と説明した。

「これに加えて、FIA国際控訴裁判所に提訴すればもう数ヶ月はかかった可能性がある。つまり、事態の収束に12ヶ月をかけるという選択肢もあったんだ」

「パドックでさまざまな憶測やコメント、中傷が飛び交う中、我々は自分達の利益、FIAの利益、F1の利益、そしてすべての人の利益になると考え、決着をつけることにした」

「我々はこのレギュレーションが未熟であること、解釈の余地があること、そしてFIAがこのレギュレーションを今後も継続していく事を受け入れている」

ホーナーはまた、審理の場で敗れれば、ポイント剥奪を含む更に厳しいペナルティが科せられる可能性がある事に触れた上で「この件に関しては(罰則)軽減の絶対的余地があったと思うが、プロセスを長引かせることは誰の利益にもならないと感じた」と付け加えた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

予算超過に関して記者会見を開いたレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月28日F1メキシコGP

甚大な風評被害、ライバルに謝罪要求

理由や程度はどうあれ、ABAの締結によりレギュレーションに違反した事は厳然たる事実となったが、ホーナーは謝罪する必要は感じていないとして、逆に自分達を批判したライバルチームが頭を垂れるべきだと主張した。

「本音を言えば、我々はおそらく、幾つかのライバルチームから謝罪を受けるべき立場にあると思っている。我々は自分達が行ってきた方法や行動について謝罪するつもりはない」

「報告書類に潜在的な誤りがあった、またはあったという教訓を勇気を出して受け入れることにした。後の祭りだが、それによって誰もがスペシャリストになる事ができる」

「ただし意図的なものではなく、不誠実な事も一切なく、一部が主張しているのような不正行為がなかった事も事実だ」

ABA締結に至るまでのやり取りにおけるレッドブルの態度についてコストキャップ管理局は「プロセスを通して協力的」であり「追加情報や証拠を求めた際には適時、提出するよう努めていた」として、悪意を以て「不正や詐欺的行為」を働こうとする事はなかったとしている。

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Courtesy Of Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペンと並んで歩くレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月28日F1メキシコGP

ホーナーは「謝罪の必要はないと考えている。我々を教訓を学んだ。誰もが将来に目を向ける事ができる」と続ける。

「ライバルチームの告発によって我々は公の場で非難に晒されてきた。ドライバー達はサーキットでブーイングを受けてきた。根拠のない主張による風評被害は甚大だ」

「今こそ、それを止め、前進する時だ」

ホーナーは「誰にとっても学ぶべき教訓があると思うし、手を取り合って取り組むべき課題があると思う」と述べ、F1、FIA、そしてライバルチームと協力してレギュレーションを洗練させることでルール上の解釈の余地をなくしていく必要があると訴えた。

「コストキャップは今後のF1にとって重要な要素だ。だが、一貫性と適用性を備えていなければならないし、今後、成熟させていく必要がある」

「この規制は凄まじいほどに複雑で、事業体や系列会社、OEMに属する会社、独立会社、エナジードリンクメーカーの子会社といった違いを巡って、真新しい概念が持ち込まれている」

「我々の組織体制、原価基準、支出というものは、こういった事業体間で全て異なっているんだ」

ホーナーによると、FIAから180万ポンドの予算上限違反が通告されたのは、マックス・フェルスタッペンが鈴鹿でのF1日本GPでドライバーズ世界選手権を獲得した90分後のことだった。

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