ポーパシング調査の過程で浮上した思わぬフロアトリック疑惑、その手法とは? 矛先はレッドブルとフェラーリか
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2022年シーズンの上半期が終盤に差し掛かる中、F1と国際自動車連盟(FIA)、F1チームは舞台裏で2つのルールについて議論を進めている。1つはポルシェやアウディの参戦に関わる2026年の次世代パワーユニット規定、もう一つはフランスGPでの導入が計画されるポーパシング制限だ。
激しい上下動によりドライバーの健康が脅かされている実態が明らかとなり、FIAは各車のポーパシング及びバウンシングに介入する決断を下した。許容値を上回る振動が確認された場合、セットアップの強制変更指示など、各種ペナルティが科される可能性がある。
具体的にどのような指標で制限を設けるのかについて検討するために、モントリオールの週末に予備調査が行われたわけだが、ここで本件とは直接関係のない一つの嫌疑が浮かび上がったとの憶測が飛び交っている。
どうやらプランク及びスキットブロックを調査する過程で、フロア剛性を意図的に操作している事が疑われるチームが浮上したらしい。
プランクは厚さ10mm±0.2mmの長方形状の板材で、フロア最前部のいわゆる”キール”から後輪前方付近にかけてのフロア下に取り付けられており、車高制限のために利用されている。
車体が地面を擦るとプランクが摩耗する。1mmまではOKだが、これを超えると違反となる。プランクにはチタン製の滑材=スキッドを取り付ける事ができる。
フロア中央部の”たわみ”検査は、プランクに予め開けられている厚み検査用の穴の位置で測定される。2箇所の測定位置はいずれもコックピット前方に集中しており、各々2mm以下のたわみであれば問題ない。
逆に言うと後方側、ドライバーのお尻の位置よりも後ろの方の剛性に関しては問われていない。
そこで一部のチームは、中央部から後方寄りのプランク及びフロアを地面と反対方向にたわませ、本来可能である以上に車高を下げ、車体側面からフロア下へと流入する気流を遮断する事でダウンフォースをより多く生成する抜け道を使っているというのだ。
その矛先が向けられているのは、どうやらレッドブルとフェラーリのようだ。両チームのマシンは、外見上は全く異なるものの、ライバルを大きく引き離しているという点では共通している。その最たる秘密がフレキシブルフロアなのではないか、という事のようだ。
FIAは6月30日に発行した改訂版の技術指令を通して、フロアの柔軟性に制限をかける方針を示したとされる。この点についてメルセデスのテクニカル・ディレクターを務めるマイク・エリオットは「明らかに不満があるからこそ、FIAはそれを変えるようなルールを導入したのだ」と指摘した。
FIAのこの動きは、ポーパシング制限を口実に各チーム間のパフォーマンス差を縮小させようとする狙いがあるものと理解されている。つまりどのチームかはさておき、このトリックを使っている側は反発必至というわけだ。
このポーパシング制限と合わせて、F1オーストリアGPの週末に開催されるF1コミッションでは、2026年以降のエンジンレギュレーションも議論される事になる。
次世代エンジン規定に関しては当初、6月29日の世界モータースポーツ評議会(WMSC)で承認される予定であったものの、計画は頓挫した。
規定承認の先延ばしは新規参入メーカーの実現を妨げうる可能性があるが、既に大枠は固まっており、あとは細部の詰めを残すだけの状態だという。
遅れの理由についてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はイギリスGPの週末に「単なるプロセス」の問題だとして「技術的な部分は概ね終わったと思う」と語った。
「レギュレーションには技術、競技、財務に関するものがあり、これらはすべて一つのパッケージとして明確にされなければならない。加えて2026年以降のガバナンスについての件もある」
「つまりパッケージをまとめる事が必要とされているだけだ。(議論は)今、FIAの手に委ねられているから、来週のF1コミッションでアップデートが得られることを期待している」
アルピーヌのオトマー・サフナウアー代表もこれに同意しつつ、「現在参戦しているエンジンメーカーとこれから参戦してくるメーカーの双方にとって公平な競争環境にするためには、もう少し時間がかかると思う」と付け加えた。
レッドブル・リンクでの週末は各ルールの動向からも目が離せない。