角田裕毅、新アプローチは「シルバーストンでは上手く機能しないはず」予選での苦戦を覚悟
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アルファタウリ・ホンダの角田裕毅は週末に対するアプローチを変更した事がレッドブル・リンク2連戦での予選Q3進出の成功要因と考えているものの、同じ手が上手く機能する見込みが薄いとして、F1第10戦イギリスGP予選での苦戦を覚悟している。
角田裕毅はポールリカールを初戦とする今季初のトリプルヘッダーにおいて、フランスGPこそ予選Q1でクラッシュを喫するミスを犯したものの、チームのセミホームであるシュタイヤーマルク及びオーストリアの各グランプリでは共に予選Q3進出を果たし、第1レースでは10位でフィニッシュして今季3度目となる入賞を飾った。
過去2戦の好パフォーマンスの理由について角田裕毅は、相次ぐ予選でのミスを経てシュタイヤーマルクGPから週末に対するアプローチを変更した事が功を奏したとの考えを示した。
「フランスとオーストリアでの3連戦ではネガティブな要素がありましたが、同時にポジティブな要素もありました」と角田裕毅。
「マイナスの部分としては、フランスGPでの予選の酷いミス(クラッシュ)と、オーストリアGPでのピットレーン入口の白線を越えてしまった点が挙げられます」
「一方で最も良かった点は、レッドブル・リンクでの第1レースから週末全体のアプローチを変更してそれが上手くいった事だと思っています」
「それまでの僕は自信がついたらすぐにプッシュする、あるいはクルマのセットアップを変更した直後にプッシュするという傾向がありました。F2までの他のフォーミュラでは上手く機能していたのですが、F1では上手くいかないというか、リスクが大きいと気づいたのでやり方を変える事にしました」
「具体的にはフリー走行を通して徐々に自信を深めながら少しずつタイムを積み上げていき、予選まではプッシュする事を控えるようにしました。結果としてそれが功を奏したように思いますし、それに加えてエンジニアとのミーティングのやり方や、クルマに乗る前のウォームアップの方法も変えたのですが、こうした取り組みによって一歩前進する事ができ、また、より良い仕事の進め方を多く学ぶ事ができました」
「オーストリアでの2回目の週末は3回のセッションを順調にこなし、予選では今季最高の結果を得ることができました。FP3で大きなスナップに見舞われて少し自信を失っていただけに、こういう結果が残せた事に満足しています」
「オーストリアでの連戦を終えた後はレッドブル・リンクで新しいピレリタイヤをテストする機会がありました。ルーキーの僕にとって、マシンに乗る時間は多ければ多いほど良いですし、興味深く仕事に取り組む事ができました」
願わくばこの勢いをキープしたいところだが、鳴り物入りでスプリント予選レースが導入される初の週末となるシルバーストンのフォーマットは変則的で、通常のレースウィークとはスケジュールが大きく異る。
初日は現地14時30分より1時間に渡ってFP1が行われた後、直ぐに予選に突入する。2日目は再び1時間のフリー走行が用意されているものの、その後は決勝のグリッドを決するスプリント予選が控えており、コースの習熟やマシンのセットアップを突き詰める時間は限られている。
F1直下のFIA-F2選手権カレンダーに組み込まれている事もあり角田裕毅はシルバーストンでの走行経験を持つものの、既知のコース故に得られるアドバンテージよりも、変則的なフォーマットによるディスアドバンテージの方が勝ると考えており、予選で好成績を期待するのは「かなり難しい」と指摘する。
「今週末のシルバーストンは、昨年のF2のフィーチャーレースで3位になった良い思い出があるコースですし、レッドブル・リンクと同様にF3時代から何度も走行を重ねてきたサーキットで、そういった点においてはポジティブですが、 F1マシンを走らせるのは今回が初めてですし、それに加えて予選前のフリー走行が1回しかなく、土曜日には初めてのスプリント予選レースが行われる事になります」
「つまり、オーストリアで試した新しいアプローチは、今回はあまり上手くいかない可能性があるということです」
「予選は1回のみのプラクティスの直後に行われる事になりますので、良いパフォーマンスを期待するのはかなり難しいと考えていますが、それでもオーストリアの時と同じ様に段階的にスピードを上げていきたいと思っています」
「スプリントレースは僕だけでなく全員が未経験のイベントですし、FP1から予選まではセットアップ変更が可能であるものの、それ以降は一切変更できないという点にも配慮する必要がありますので誰にとってもチャレンジングな週末になると思いますが、僕としては自分のことだけに集中して、できる限りの準備をしていきたいと思っています」
最大荷重5.5Gを記録するマゴッツ、ベケッツ、チャペルと続く著名コーナーに代表されるようにシルバーストンは数多くの超高速コーナを備えており、F1マシンの性能を存分に引き出せるという点で多くのドライバーの支持を得ているが、角田裕毅も例に漏れずF1マシンでの初走行に大きな期待を抱いているようだ。
「F1マシンでシルバーストンの高速コーナーを走るのが楽しみです」と角田裕毅は語る。
「フリー走行の時間が限られれている事がキツイところですが、ジュニア時代の走行経験もありますし、週末に向けての自信はまずまずといったところです。特にマゴッツ、ベケッツ、チャペルの連続コーナーでのF1マシンがどんな感じなのかが楽しみです」
イギリスGPの舞台となるのは1周5891m、全18コーナーを有するF1発祥の地、シルバーストン・サーキットだ。
昨年のグランプリでは序盤に2度に渡るセーフティーカーが導入された挙げ句、最終盤には3台がタイヤブローに見舞われる波乱のレースとなった。
結果としてはファイナルラップに左フロントタイヤをパンクしながらも執念でフィニッシュラインまで走りきったルイス・ハミルトン(メルセデス)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、3位にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続いた。
F1イギリスGPは日本時間7月16日(金)22時30分からのフリー走行1で幕を開ける。