F1イギリスGP車体改良一覧:全12箇所変更で激変したウィリアムズ、「確実に進歩」したメルセデス

ウィリアムズFW44のローンチ版とF1イギリスGPでアップグレードされたBスペック版の横方向からの比較Courtesy Of Williams

全18コーナーがありながらもエンジン全開率72%を誇る屈指の高速コース、シルバーストン・サーキットに向け、角田裕毅擁するアルファタウリ以外の全9チームがアップデートを持ち込んだ。

中でも注目は12箇所と、ほぼ全身に手を入れる超大型アップグレードが投入されたウィリアムズFW44と、初日フリー走行で有望な兆しを感じさせたメルセデスW13だろう。今季より設けられた空力アップデート開示ルールに基づき公開された各チームの変更点をまとめる。

チーム アップデート内容
ウィリアムズ・メルセデス
  • フロントウイング
  • フロントコーナー
  • サイドポッド・インレット
  • フロア・フェンス
  • フロア・ボディ
  • フロア・エッジ
  • ヘイロー
  • ディフューザー
  • コーク/エンジンカバー
  • ルーバー
  • リヤ・サスペンション
  • リアコーナー
メルセデス
  • フロント・サスペンション
  • サイドポッド・インレット
  • フロア・ボディ
  • リアウイング
アストンマーチン・メルセデス
  • サイドポッド・インレット
  • フロア・フェンス
  • フロア・エッジ
  • ビームウィング
  • リアコーナー
アルピーヌ・ルノー
  • フロア・ボディ
  • コーク/エンジンカバー
  • フロント・サスペンション
レッドブル・RBPT
  • フロントコーナー
  • コーク/エンジンカバー
  • フロア・フェンス
  • フロア・エッジ
フェラーリ
  • コーク/エンジンカバー
マクラーレン・メルセデス
  • リアウイング
  • ルーバー
ハース・フェラーリ
  • フロントウィング翼端板
アルファロメオ・フェラーリ
  • ノーズ
アルファタウリ・RBPT なし

ウィリアムズ

今季初のアップグレードパッケージを持ち込んだウィリアムズ。FW44は殆どBスペックと呼んで差し支えない程、激変した。サイドポッドはレッドブルとフェラーリをブレンドしたような形状で、兎角注目が集まるが、細かいところまで含めると12箇所もの変更を行っている。

グローブのエンジニアリングチームは、より大きなダウンフォースを作り出すべくフロントウイングに調整を加え、上下気流の改善のための新しいフロアを持ち込んだ。

車体後部への気流改善のための新型サイドポッドを導入すると共に、これに合わせてミラー形状を変更。内部冷却構造を最大限に活用しつつ、後部への気流改善のためにエンジンカバーとコーク形状を一新した。またエンジンカバーの高い位置に冷却用の新しいルーバーが設けられた。

Courtesy Of Williams

ウィリアムズFW44のローンチ版とF1イギリスGPでアップグレードされたBスペック版の比較

ラジエーターの吸気口はフェラーリによく似ており、その下部のアンダーカット形状も同様だが、サイドポッドは以前のメルセデス型から完全に脱却し、側面部分が外側に張り出したレッドブル風へと変貌している。

またリアウイング及び下部ビームウイングへのフロー改善のためにヘイローにウイングレットを追加し、ディフューザーも刷新。更にリヤサスペンションにも変更を加え、リアコーナーに配置されていたウィングレットのジオメトリーも変更した。

Courtesy Of Williams

ウィリアムズFW44のローンチ版とF1イギリスGPでアップグレードされたBスペック版の比較

これほどの大幅に変更されたマシンからパフォーマンスを最大限に引き出すにはシーズン前半戦だけでは足らないかもしれない。

なおこのパッケージはアレックス・アルボンのマシンにのみ投入されており、ニコラス・ラティフィは少なくともフランスGPまで待たなければならない。

メルセデス

メルセデスも大型アップグレードを持ち込んだ。フロア下の気流改善のために空気の渦を作るべくフロントサスペンション(プッシュロッドとトップウィッシュボーン)を変更し、サイドポッド前方の整流板を調整して冷却性能を向上させた。

またフロア前方部の負荷を増やすため、ウィングスロットを前方に拡大するなどしてフロア全体に変更の手を入れ、シルバーストン向けにドラッグを低減した調整型リアウイングを搭載した。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

改良型フロアを搭載したメルセデスW13、2022年7月1日F1イギリスGP

2番手で初日を締め括ったルイス・ハミルトンは、特に高速コーナーでのバウンシングはまだ残っているとしながらも「確実に進歩した。一晩でもっとクルマを改良できるはずだ」と述べ、一定の手応えをうかがわせた。対してジョージ・ラッセルは「正直なところ、あまり自信がない」と語った。

またエンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、この日のシルバーストンが強風に見舞われた事に触れ「アップデートが期待通りに行われているかどうかを判断するのは難しい」とする一方、「心配するようなことは何もない」と語った。

アルピーヌ

ディフューザーへの流量増加を目的とした新型フロアや、車体後方への気流調整のための新しいエンジンカバー、そして気流改善のために改良されたプッシュロッドを持つ新たなフロントサスペンションを投入した。

サイドポッド上部の窪みはフェラーリF1-75を彷彿とさせる。

Courtesy Of Alpine Racing

アップグレードされたアルピーヌA522をドライブするフェルナンド・アロンソ、2022年7月1日F1イギリスGP

アストンマーチン

多様な条件下でより良いダウンストリームを生み出すべく、サイドポッド上部の整流板およびビームウイング先端形状を変更し、リアブレーキダクトに整流板を追加した。

また、コンセプト最適化のためにフロアフェンス及びエッジ形状を微調整する事で、アンダーフロアの気流を改善すると共に、局部荷重を改善させた。

レッドブル

冷却性能向上のためにフロントブレーキ・キャリパーを変更し、コース特性に合わせてエンジンカバー回りを修正。局所的な気流改善のためにフロアも変更した。

フェラーリ

マシンコンセプトの最適化として空力効率の改善を目指すべく、サイドポッドのアンダーカットやミラー・ハウジング、アウトボードステー、車体後方の冷却出口部を変更した。

マクラーレン

広範にドラッグを調整できるようリアウイングのフラップを変更し、より柔軟に冷却レベルを変更できるよう追加のルーバーパネルを持ち込んだ。いずれもサーキット固有の特性に合わせた調整で車体の基本パフォーマンスを底上げするものではない。

ハース

前輪後部の気流分布に影響を与えるべく、新しいフロントウイング翼端板を投入した。これによりアンダーボディへの気流改善が見込まれるという。

アルファロメオ

ノーズコーン前端部に空気取り入れ口を設けたノーズを持ち込んだ。ドライバー向けの暑さ対策だ。

F1イギリスGP特集

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