ヒュルケンベルグ、復帰戦は”1本のボルト”で台無しに「努力に見合う結果を残したかった」
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掴んだチャンスは無情にも手の内からこぼれ落ちた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したセルジオ・ペレスに変わり、第4戦F1イギリスGPでレーシング・ポイントRP20のステアリングを握る予定であったニコ・ヒュルケンベルグは、決勝のスタートシグナルを直前に控え、メカニカルトラブルのために欠場を強いられた。
2019年アブダビGP以来となるレースに向けて、13番手グリッドに着くためにレコノサンスラップへと向おうとしたヒュルケンベルグであったが、パワーユニットに火を入れる事ができず、無念の出走取り止めとなってしまった。
オトマー・サフナウアー代表は調査の結果、クラッチハウジング内の1本のボルトがせん断されてしまい、これが内燃エンジンの始動を妨げていたようだと説明した。ボルトはレーシングポイントが用意したものではなく、パワーユニットを供給するメルセデス側からの供給品だった。
「せん断の原因が材料の問題なのか、オーバートルクの問題なのか、私には分からない」とサフナウアー代表。
「これらのボルトは全て一定の仕様で締められていたはずだ。トルク比が適切でなかったりオーバートルクで締め付けられていたとしたら、せん断する可能性がある」
「製造上の材料の問題かもしれないが、すべてを調べてみない事には正確な理由は分からない」
昨年末を以てルノーのシートを失い浪人生活を送っていたヒュルケンベルグは、GT4マシンのテストのためにスペイン・マヨルカ島からドイツ・ニュルブルクリンクへと移動していた最中にサフナウアー代表からの電話を受け、行き先をイギリスへと変更。3時間程でシルバーストンに到着し、深夜2時までシート合わせに取り組んだ後、翌早朝からシミュレーターで準備に取り組み、FP1開始10分前にパドックへの入場許可を受け取った。
激動の22時間をヒュルケンベルグは「クレイジー」と形容したが、週末の結末もまたクレイジーだったと言わざる得ない。
ヒュルケンベルグは「レースをスタートできず本当にガッカリだ。グリッドに着かせようと精一杯を手を尽くしてくれたチームを思うと悔しい」と語る。
「みんなには心から感謝してる。今週末は色々な問題に直面したけど、このチームと働くのは楽しかった。努力に見合うだけの結果をレースで残せれば良かったんだけどね」
ヒュルケンベルグは来週末のシルバーストンでの第2レースでも代役を務めるものと見られているが、場合によっては、復帰戦は幻と消える可能性もある。
英国政府のガイドラインは当初、感染者の隔離期間を「7日間」と定めていたが木曜日に「10日間」へと変更された。どう解釈すべきかは当局からの説明待ちとされるが、仮に7日間であれば次戦F1-70周年記念GPにペレスが参戦する可能性があるためだ。