角田裕毅、反ロシアを含めコース外でも主導的役割を果たすベッテルを「凄くリスペクト」

2021年11月4日のF1メキシコGPの記者会見でセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)と拳を突き合わせる角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)Courtesy Of Red Bull Content Pool

アルファタウリの角田裕毅は、ロシア・ウクライナ情勢をはじめとする国際問題などで最も主導的な役割を果たしているF1ドライバーはセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)であり、コース外においても「凄くリスペクトできる一面を持っている」と語った。

SNSの普及に伴い、今やF1ドライバー達は今や誰もがファンや世界に向けて直接メッセージを発する。ただ、あらゆる物事に例外があるのと同様に、F1ドライバーの中にも4度のF1ワールドチャンピオンという規定の範疇に収まらない人物がいる。

Courtesy Of Alfa Romeo Racing

アルファロメオのキミ・ライコネンとアストンマーチンのセバスチャン・ベッテル、2020年7月5日F1オーストリアGPにて

ベッテルは未だにソーシャルメディアから距離を置いており、公式サイトを除いて所謂オウンドメディア、つまりは情報発信ツールを持ち合わせていないものの、彼が行動を以て示すそのメッセージは、年を追う毎により強く、より深いものへと姿を変えてきた。

角田裕毅はF1バーレーンテストの開幕を翌日に控えた会見の中で、F1ドライバー組合とも呼ぶべきGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエイション)では、メッセージアプリ「WhatsApp」を使ってコミュニケーションを取り合っているとした上で、その中で最も積極的に意見を発信しているのがベッテルだと明かした。

WhatsAppについて角田裕毅は「ペナルティやレースに関して意見できる場」として機能しており「その中で自主性と言うか、意見をどんどん発信するのはやはりセバスチャン・ベッテル選手かなと思います」と語った。

「特に今はウクライナとロシアの問題があり、ドライバー全員でもっとメッセージ伝えていこう、あるいはどういう風にメッセージを伝えていくかという事が議題に上がるのですが、こういう場合は大抵、セバスチャン・ベッテル選手がまずはこういう案はどう?とか、こっちの方が良いんじゃない等と、自分から意見をどんどん出しています」

「ベッテル選手はそういうところにおいても凄くリスペクトできる一面を持っているなと思います」

Courtesy Of Red Bull Content Pool

「No War(戦争反対)」のTシャツを着用してロシア軍侵攻に苦しむウクライナの人々への連帯を示すF1ドライバー、2022年3月9日バーレーン・インターナショナル・サーキットにて

なお自身については「世界情勢の事は全く分からない」として、GPDAの集まりで「言うのはペナルティに対する愚痴くらいですね」と説明した。

「去年のブラジルGPでのオーバーテイクの際にストロール選手と接触して科された10秒ペナルティが全く腑に落ちなず、理解ができなかったので、その件については意見を出しました」

「あのペナルティについては殆どのドライバーが疑問だよねと言ってくれて、FIAを含めた次回のドライバーズブリーフィングの際に自分から意見する事になりました」

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ジェッダ市街地コースのターン1でセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)とサイド・バイ・サイドになる角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)、2021年12月5日F1サウジアラビアGP決勝レースにて

ベッテルが社会問題への関与を強めた最大のきっかけは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックだった。自らの人生観を価値観を見つめ直したベッテルは、まずは環境保護活動に大きな関心を寄せた。

ロックダウン中に有機農業のインターンシップを受け、オーストリアGPに際しては環境保護意識の向上を目的に地元の小学生達と共にミツバチのための巣作りに時間を割き、燃料の無駄遣いだとしてF1レース前のフライ・パスに苦言を呈した。ベッテルからの訴えを受けガルフ・エアは、本番のフライパスでバイオ燃料を使用した。

copyright Sebastian Vettel

アストンマーチンF1のセバスチャン・ベッテルがF1サウジアラビアGPに合わせて主催した女性限定のカートイベントの様子

また、昨年はイギリスGPでルイス・ハミルトンの大逆転優勝に歓喜した14万人の観客が残したゴミを人知れず拾い続け、F1ハンガリーGPでは失格処分を覚悟の上で同国で成立した反LGBTQ法に反対の意思を表明し、国家による人権侵害に厳しい目が注がれるサウジアラビアでのレースの際には、女性限定のカートイベントを開催する事でネガではなくポジに光を当てた。

更にレース運営に対しての疑問を口にする事も躊躇せず、雨のイモラで行われた昨年のエミリア・ロマーニャGPでは、事案発生からかなり時間が経過した後にスチュワードがペナルティ裁定を下した事について「プロ意識に欠ける」と糾弾。同じく雨のベルギーGP予選ではランド・ノリスの大事故を受け、明らかに危険な状況ながらも赤旗を出さなかったとしてFIAに「クソッタレ!避けられたはずなのに!!彼は大丈夫なのか?」と罵声を浴びせた

また最近では、ウクライナへの軍事侵攻を宣言したプーチン体制のロシアの行動を「極めておかしい狂ったリーダーシップ」と強く批判し、F1側にロシアGPの中止を求めると共に、仮に開催されてもボイコットする意向をいち早く表明するなど、基本的権利の侵害や環境汚染を含む社会問題全般に対して、行動を以てメッセージを発するというスタイルを貫いている。

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