ホンダに非はない? レッドブルの開幕Wリタイヤに繋がった可能性がある3つのシナリオ
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レッドブルのダブルノックアウトの原因は何だったのか? ホンダF1パワーユニット改め、”レッドブル・パワートレインズ”のバッジネームが与えられたE10燃料対応の2022年最新スペックを搭載する2台のRB18は、開幕バーレーンGPの最終盤に相次ぎ姿を消した。
マックス・フェルスタッペンはブレーキのオーバーヒートとマシンバランスの悪化に加えて、セーフティーカー導入時の3回目のピットストップでのジャッキダウンの際にトラックロッドを破損。残り3周という最終局面ではホンダV6ターボが息絶えた。
これにより18点もの大量のチャンピオンシップポイントを失ったのみならず、ファイナルラップではチームメイトのセルジオ・ペレスも同じ運命を辿る事となり、フェラーリの1-2フィニッシュをお膳立てする事となった。
悪夢を経てチーム代表のクリスチャン・ホーナーは「2台揃って同じような問題に見舞われたようだ。リフトポンプなのか、コレクターなのか、その辺りなのか、まだ正確には分からない。何が原因なのかを正確に把握しなければならない」と語った。
燃料計算ミス
燃料タンクが空になれば、当然エンジンに供給される燃料は途絶える。レッドブルは燃料の計算を間違えたのではないのだろうか?
このシナリオは可能性が低くそうだ。
クリスチャン・ホーナーはレース後「燃料システムを分解して問題の原因を突き止める必要がある。燃料は残っていたのだから」と述べ、燃料がゼロである可能性を否定した。
ただ、F1テクニカル・アナリストのピエルジュゼッペ・ドナドーニはライバルチームからの情報として、”太り過ぎ”と噂されているRB18が単に燃料を使い果たしただけだろうと伝えている。
共通パーツの燃料ポンプ
レッドブルのダブルDNFが騒がれたのは、それがセンセーショナルな事件であったからというだけではない。実は予選終了後にFIAが気になる特例の通達を出していたのだ。
F1スポーティング・レギュレーション第40条6項では、予選終了後2時間以内にマシンを封印する事を定めているが、FIAは突如、この期限を1時間延長した。それは「燃料プライマーポンプの点検のため」だった。
燃料タンクからエンジンまでの経路は以下のようになっている。
- 燃料タンク
- リフトポンプ
- コレクター
- プライマーポンプ
- チーム用燃料流量メータ
- FIA用燃料流量メータ
- 高圧燃料ポンプ
- インジェクター
- エンジン
燃料プライマーポンプはスタンダード・サプライ・コンポーネント(SSC)に分類される、所謂共通パーツであり、ホンダやレッドブル・パワートレインズの責任の範疇にない。製造しているのはマレリで、高圧燃料ポンプはボッシュ製だ。
詳細は不明ながらも、バーレーンテストでフェラーリ製パワーユニット「066/7」を搭載する本家マラネロのチームとハースを含めた幾つかのチームが燃料ポンプ周りの不具合に見舞われたとされており、これを受けた措置とみられている。
ただ、予選後のパルクフェルメ下でこれを交換したチームはいなかった。レッドブルが変更したのは両マシンのリアブレーキの摩擦材、ペレス駆る11号車のギアボックス・オイルフィルターのみだった。
仮にほんの僅かでも共通パーツである燃料ポンプのトラブルが疑われたのであれば、クリスチャン・ホーナーは即座に批判的なコメントを発したはずだが、そうはしなかった。
ホーナーはFIAの通達に基づき申請を出し、プライマーポンプの検査を実施した事を認めているが「あれはレッドブル特有の問題ではなく、(全チームに共通する)一般的な問題だった」と述べ、プライマーポンプがリタイヤの原因ではないことを仄めかしている。
パーコレーション
ハードウェア上の問題ではなく、パーコレーションの可能性も考えられる。
パーコレーションとは、燃料の温度が上昇することで燃料内に気泡が発生し、エンジン内部に十分な燃料が供給できなくなる現象の事を指す。キャブ車時代に多くみられたが、インジェクターであれば絶対に発生しないというわけでもない。
2台のRB18はほぼ同時に同じトラブルに見舞われた。注目すべきはその直前にセーフティーカー(SC)が導入されていた事だ。
この日のレースは気温22.5~24.1度、路面温度26.3~29.2度のコンディションの中で行われた。フェルスタッペンがブレーキのオーバーヒートによってシャルル・ルクレールへの追撃を阻まれたように、温度がレース結果を決定づける一つの要因になった。
SCラップ中はレーシングスピードで走る事ができず、たびたび冷却が問題になる。
一般にエタノールを10%含むE10燃料はE0燃料より蒸気圧が高いとされ、蒸気圧が高いと高温時に燃料供給ライン中でベーパーロックが発生しやすくなるとされている。
ホーナーが「現時点では全てが主観に過ぎない」と口にしたように、詳細な調査を経てチームが原因を公表するまで確たる事は何も分からないが、いずれにせよ次戦サウジアラビアGPまでに残された猶予は5日しかなく、早急な対応が求められる事は確かだ。