サインツ、”リスキー”な2025年メルセデスF1候補に復帰…アントネッリに注文をつけるウォルフ
Published:
遅々として決断を先送りにし、奇跡を待ち続けたカルロス・サインツ(フェラーリ)にトップチーム移籍の扉が開きつつある。メルセデスのトト・ウォルフ代表はF1イギリスGPに先立ち、スペインの日刊紙ムンド・デポルティーボに対して「カルロスには間違いなくまだチャンスがある」と語った。
2025年シーズンを前にマックス・フェルスタッペンをレッドブルから引き抜くことは益々、難しくなっており、加えてルイス・ハミルトンの後任最有力候補と見られていたアンドレア・キミ・アントネッリはFIA-F2選手権でのルーキーシーズンに苦戦。今週末のイギリスを前に優勝はおろか表彰台にも上がれておらず、ランキング9位に留まっている。
サインツとメルセデスが交渉の席から立ったのは、お互いが求めるタイムラインが異なっていたためだと考えられている。サインツは当初、シーズン早期のシート確保を目指していたが、メルセデスは時間をかけて全てのオプションを精査することを望んだ。
ウォルフは数週間前、サインツは選択肢になく若手を検討すると仄めかしていたが、アントネッリの苦戦が続いていること、そして移籍市場が大きく動いていることを受け、イギリスGPの初日を迎えたシルバーストンでスタンスを改めたことを半ば認めた。
来季のシートに関連してアントネッリに関する懸念はあるか?と問われたウォルフは、アントネッリは「冷たい水の中に身を置き、泳がなければならない」と述べ、厳しい状況を乗り越えて結果を残す必要があると示唆した。
「ペースもあったし先週末はかなり良かった。スタートでミスがあった点についてはルーキーとして学ばなければならない。だが彼は大きなプレッシャーを背負っており、また多くの話題に上っている」とウォルフは語る。
「ジュニアフォーミュラやカートにおける彼の実績は他に類を見ないものだ。だからこそプレッシャーも高まっているのだ。しかしながら彼の父親が言うように、チャンピオンになるためには冷たい水の中に身を置き、泳がなければならない。彼らはその点をよく理解している」
「ただ、現在のドライバーマーケットは大いにダイナミックで興味深いものになっている。ドライバーによってはより多くの選択肢があり、チームによってはより多くの選択肢があるからだ。ゆえに興味深い。バーニー(エクレストン、F1の前CEO)が言ったように、『先週はこう思っていたが、今週は違う考えを持っている』という感じだ」
今後の状況についてサインツはシルバーストンで「これからの数年の人生に関わる問題だから、決断に時間をかけるのは妥当なことだと思う」と述べ、できるだけ多くの時間をかけるつもりだと繰り返した。
メルセデスへの扉が開きつつあるとは言え、決断を長引かせるのはサインツにとって大きなリスクだ。
トップチームにこだわるサインツは、現在、交渉中のアルピーヌ、ザウバー(アウディ)、そしてウィリアムズに対して1年のオプション付きの単年契約を求めたものの、これに同意したのはウィリアムズだけと見られている。
ウィリアムズとアウディは既にエステバン・オコンやバルテリ・ボッタスと交渉中と考えられている。またアルピーヌにはジャック・ドゥーハンやミック・シューマッハという選択肢もある。さらにはセルジオ・ペレス、あるいはダニエル・リカルドがドライバーズ・マーケットに転がり込んでくる可能性もある。
決断のタイミングを見誤った場合、サインツは余り物を手に取る他になくなる。ウォルフは11月まで決定がもつれ込む可能性を認めている。