余計な事は言わない方が良い、とレッドブル・ホンダ…フレキシブル論争を巡りメルセデスに警告
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レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は、もし自分がメルセデスのチーム代表ならば、自車に付いているフロントウイングを見て「口を閉ざし続けるだろう」と述べ、フレキシブルウイング論争を繰り広げるライバルチームに注意を促した。
国際自動車連盟(FIA)が技術指令書の発行によってフレキシブルウイングを巡る論争に介入した事で、F1では次戦フランスGPより新たな剛性テストが導入される事が決定しているが、導入のタイミングを巡ってメルセデスとマクラーレンが反発の声を挙げている。
メルセデスのトト・ウォルフ代表は、レッドブルが第6戦アゼルバイジャンGPで例のウイングを使用した場合、一件を国際控訴審判所に持ち込む事もあり得ると牽制。対するレッドブル・ホンダは逆に、”攻撃”されればメルセデスの”たわむ”フロントウイングを標的に異議申し立てを行なうと示唆。対立を深めている。
”ベンディ・ウイング”とも呼ばれるこの仕組みは、高速気流によってウイングをたわませる事でドラッグを低減し、直線区間でのトップスピードでアドバンテージを得るもので、フェラーリ、レッドブル、アルファロメオ、そしてアルピーヌがこうした類のリアウィングを使用している事を認めている。
6月4日のバクーでの初日プラクティス走行においては、両チームともに前戦とは異なるスリムなリアウイングを使用していたが、レッドブル・ホンダ、メルセデス共に2.2kmの超ロングストレートを走行している際に同程度の”たわみ”が見られた。
ホーナーはバクーでの初日セッションを終え、Sky Sportとのインタビューの中でメルセデスのリアウィングのたわみ具合に関する映像を見せられると「どちらかというとバクーでは我々よりも(メルセデスの方が)少し悪いように見えるね!」と反応。その上で「私としてはリアよりもフロントの方を見たいところだ」と続けた。
「クルマの片側を取り上げるのであれば、もう片方にも目を向けるのが筋というものだ。すべてのエリアを見なければならないが故に、時には自分が望むものに少し注意しなければならない事もある」
もし自身がメルセデスの立場であればどうするかと尋ねられるとホーナーは「もし私がトト(ウォルフ)なら、自分たちのクルマに付いているフロントウイングを見て、口をつぐみ続ける事を選んだだろうね」と答えた。
走行中のマシンは加減速や気流によってあらゆる負荷を受けるためボディーワークが変形する事は避けられないが、F1では技術規約第3条8項と9項において一定量以上の”たわみ”を制限している。
パーツをたわませる事でアドバンテージを得る手法が認知されたのは1990年代後半になってからとみられる。先鞭をつけたのは恐らくフェラーリで、マラネロが精力的にこの課題に取り組んでいた事はよく知られる事実だ。
なおFIAはアゼルバイジャンGPにおいて、映像による新たな監視体制の準備としてリアウィングにステッカーを貼り付けるようチームに指示した。これはウイングの”たわみ”の程度を確認する際の基準点に用いられれるもので、各車のリアウイングには10mmサイズのシールが12個貼られている。
マクラーレンとメルセデスは共に、バクーでの週末に異議申し立てを行なう用意があるとする前戦のスタンスを崩していないが、実際に行動に移すかどうかについては明言を避けている。
マクラーレンのアドレアス・ザイドル代表は「現時点では異議申し立ての話はしたくない。金曜の夜に行動を起こす事に意味はない」と述べ、ライバルチームが実際にフレキシブルウイングをレースで使用するかどうかは予選になるまで分からず、少なくとも土曜の状況を確認する必要があると主張している。