厳罰求めるレッドブル・ホンダ、新証拠の一つは映像…ハミルトン裁定が覆る可能性はあるのか?

レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコ、2021年7月21日F1イギリスGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはF1イギリスGPのクラッシュを巡る28日(木)の再審査請求調査会を前に、ルイス・ハミルトンに厳罰を求めるための新証拠の有効性に期待を示した。

事故発生以来、責任の所在とペナルティの程度を巡る議論は尽きず、今季チャンピオンシップの行方を左右しかねないこの問題は大きな物議を醸している。

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ホイール同士が接触してクラッシュしたレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトン、2021年7月18日F1イギリスGP決勝

事故の当事者であるマックス・フェルスタッペンは一件への対処をチームに一任しており、場外でのドタバタ劇に関与する気はないとしているが既に再審査請求は提出されており、例え無関係を装ったとしてもメディアからの質問が集中する事は避けられないだろう。

スチュワードはフェルスタッペンがリタイヤを余儀なくされたシルバーストンでのクラッシュについて「主たる責任」はハミルトンにあると判断。10秒ペナルティを科す裁定を下したがレッドブル・ホンダはこれに異議を唱え、事故発生の5日後に国際自動車連盟(FIA)に対して再審査を請求した。

FIA国際スポーティング・コードは「新たな重要証拠が発見され、それが当該事項の決定時点で再審を求める当事者が利用できなかった場合」に限り、抗議申請期限を過ぎた後でも再審査を要求する事ができると定めている。

厳罰求めるレッドブル、映像証拠を用意

厳罰求めるレッドブル・ホンダの姿勢に変化はなく、それに足るとの判断で用意された証拠の一つが映像証拠である事が分かった。

ヘルムート・マルコはRTLとの28日(水)のインタビューの中で「肝心なのは新しい証拠、新しい事実を持ち込む事」であるとして詳細な言及を避けつつも、裏付けに足る映像が存在する事を認めた。

証拠の内容については例のインシデントに「別の視点」をもたらすものだと説明し「再評価が行われる事を期待している」と語った。

またハミルトンに科された罰則は「甘すぎる」として「ドライブスルー」や「次戦でのレース出走禁止」といった「優勝を阻むようなペナルティ」が相応だとの従来の主張を繰り返し、スチュワードの判断を見守る意向を示した。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコとホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクター、2020年F1スペインGPにて

F1第11戦ハンガリーGPの開幕前日となる7月29日(木)中央ヨーロッパ時間16時より行われるビデオ会議では、スチュワードが新たな証拠の有効性についてチーム代表者の聴取を交えて検証を行なう。

過去の事例に見る裁定が覆る可能性

証拠が認められない以上、再審査が行われる事はない。過去の事例を紐解けば明らかなように再審査へと至る道程は険しく、また再審査によって裁定が覆る可能性は更に低い。

例えば昨年の第2戦エミリア・ロマーニャGPでキミ・ライコネンに科された30秒ペナルティの件においては、スチュワードが裁定時に根拠としていた規約に関する説明が事実とは異なるとしてアルファロメオが再審査請求を行った。

スチュワードはヒアリングと証拠の検証を経て請求を正式に受理。再審査を行ったものの、説明に不足があった事を認めつつも、ルールそのものの有効性は十分だとして訴えを却下した

Courtesy Of Mercedes

芝生からコース復帰したセバスチャン・ベッテルと、後ろに迫るルイス・ハミルトン、2019年F1カナダGP決勝レース43周目のターン4

また2019年のカナダGPにおけるセバスチャン・ベッテルへの5秒ペナルティの一件では、フェラーリがテレメトリデータ分析やカメラビューのビデオ解析、フェイスカメラ映像、カルン・チャンドックが行ったビデオ分析やベッテル本人の証人陳述書等を持ち込んだが、スチュワードはその全てを証拠として採用しない判断を下した

同じくフェラーリが再審査請求を行った2016年メキシコGPにおけるベッテルに対する10秒ペナルティの裁定に関しても、GPSデータを含めた証拠はすべて却下された。

Courtesy Of Daimler AG

コース外に飛び出るメルセデスW11のルイス・ハミルトン、2020年F1オーストリアGPにて

だが稀であるものの、再審査によって裁定が覆った事例もないわけではない。それはレッドブル・ホンダが主導したものだった。

2020年のオーストリアGPではバルテリ・ボッタスがグラベルに飛び出した事で予選Q3で黄旗が振られ、後方を走行していたハミルトンが減速を怠ったとして審議が行われた。

スチュワードはマーシャルポストで黄旗が振られる一方、グリーンライトパネルが点灯するという相反する2つのシグナルが表示されていたとして本件を不問とする決断を下したが、レッドブル・ホンダからの要請を受けて再審査が行われ、最終的にハミルトンに3グリッド降格と2点のペナルティポイントが科される事となった

証拠とされたのはハミルトンの車両に搭載されていた360度カメラで、これには不問とされた根拠を覆す映像が収められていた。

再審査請求のハードルが如何に高いかについて十分に理解しているレッドブルが実際に権利を行使した事の意味は小さくない。まずは木曜の再審査請求調査会の結果が注目される。

F1ハンガリーGP特集

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