世界最速のF1マシン、WECポルシェ 919 Hybridにスパ・フランコルシャンで敗れ去る

スパ・フランコルシャンの世界最高速を記録したポルシェ919ハイブリッドEvoとニール・ヤニ

ポルシェLMP1チームは4月9日、同チームのプロトタイプマシン「ポルシェ919 Hybrid」が、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットでF1マシンを上回る世界最速のラップタイムを記録した事を明らかにした。919ハイブリッドは、ポルシェが2014年にFIA世界耐久選手権に投入したプロトタイプレーシングカー、ル・マン24時間レースを3度制している。

ポルシェドライバーを務めるニール・ヤニはこの日、全長7.004kmを誇る現行F1カレンダー最長にして最古の著名なサーキットで1分41秒770をマーク。2017年のF1ベルギーGP予選Q3でメルセデスAMGのルイス・ハミルトンが記録したこれまでのコースレコードを0.783秒上回った。

当日のスパは気温11℃、路面温度13℃のドライコンディション。ヤニは最高速度359km/hを叩き出し、その平均速度は245.61km/hにも達した。世界最高峰と歌われるフォーミュラ1マシンより速いタイムが記録された背景には、エアロパッケージと燃料、そしてタイヤに秘密がある。

ポルシェは昨年限りでWEC世界耐久選手権から撤退したものの、2018年シーズンに向けて17年仕様の車両をベースにマシン開発を進めていた。今回のタイムアタックで使用された919ハイブリッドEvoは、LMP1規定の制約を取っ払い、マシンが持つ純粋なパフォーマンスが追求された。

燃料流用の規制から開放された結果、EvoのV4エンジンの出力は500馬力から720馬力へと大幅に増加。また、エネルギー回生制限からの開放によって2つのエネルギー回生システムは400馬力から440馬力へと10%のパワーアップを果たした。

空力面ではリアウイングとフロントデュフューザーが大型化され、走行中に空気抵抗を削減するDRS(ドラッグ・リダクション・システム)が組み込まれた。結果としてダウンフォースは53%も増加し、これまで以上に高速なコーナリングが可能となった。

更に、車両重量も徹底的に見直された。エアコン、ワイパー、幾つかのセンサー類、レースコントロールに関する電子デバイス、ライト等、アタックラップに必要のない全てのコンポーネントが取り外された結果、乾燥重量は39kg削減され849kgとなった。

今回の挑戦には、長年ポルシェのタイヤパートナーを務めてきたミシュランも参加。競合ピレリが公式タイヤサプライヤーを務めるF1よりグリップ力の高いコンパウンドを目指して専用タイヤを開発した。

実際にマシンをドライブしたヤニは、大幅にパフォーマンスが高められた919 Evoの印象について、次のように語った。「919 Evoは桁外れに印象的だ。僕らこれまでに乗った事のある最速のマシンだよ。間違いなくね。グリップレベルは別次元で、予想を遥かに超えるものだった。何しろ2017年のF1のポールラップより速いというだけでなく、昨年のWECのポールラップと比較しても12秒も速いんだから!」

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