ピレリ:スタンディングウェーブ現象でタイヤが破損…レッドブルとアストンによる”想定外の低圧”走行が起因
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ピレリのモータースポーツ部門を率いるマリオ・イゾラは、アゼルバイジャンGPで発生した2件のタイヤブローの原因について、レッドブル・ホンダとアストンマーチンが想定外の低圧でタイヤを走らせた事でスタンディング・ウェーブ現象が発生したためだと説明した。
マックス・フェルスタッペンとランス・ストロールをリタイヤへと追い込んだ左リアタイヤの破損に関してピレリは15日(火)、デブリやタイヤ構造に起因するものではなく「走行状態」が引き金となって発生した事故との調査結果を発表した。
また、レッドブル・ホンダ及びアストン双方は内圧とブランケット温度に関する規定のスタートパラメータを遵守していたとしてチーム側の責任を除外したものの、フランスGPからの導入が決まった新たな技術指令書の行間からは、チーム側が何らかのトリックを使ってタイヤの内圧を低く抑えていた事が原因と疑っている様子が見え隠れしていた。
F1公式サイトによると第7戦フランスGPが行われるポール・リカール・サーキットでイゾラは、ピレリが想定していたよりも低い内圧で両チームがタイヤを走らせていた事を認めた。
「調査を始めた当初は、他のタイヤの中にトレッドに亀裂が入っているものがあったため、デブリによって構造が破壊されたのではないかと考えた」とイゾラは説明した。
「だが最終的な調査を経て、ルイス(ハミルトン)やセバスチャン(ベッテル)のタイヤで確認された亀裂とトラブルとは関係がない事が判明した。あれは確かにデブリによるものであったが、亀裂自体は構造を切断するほど鋭くはなかった」
「バクーでの一件は、走行状態の想定値と実際の値とが異なっていたために発生したものだった。破損とはインサイドショルダーの円周方向の切断のことだ」
「タイヤの内圧が想定よりも低く、タイヤに大きなエネルギーが加わった場合、サイドウォールにスタンディング・ウェーブと呼ばれる現象が発生する。これによってタイヤのショルダー部が大きな負荷を受け、その結果、ある時点でタイヤが壊れてしまったというわけだ」
スタンディングウェーブ現象とは、タイヤの空気圧が不足している状態で高速走行をした際にタイヤの接地面後方が波状に変形する現象のことで、”たわみ”が重なり合うことでより大きな波が発生し、波打った状態になってしまう事を指す。
タイヤがたわむとタイヤそのものに大きな負荷が掛かるほか、温度上昇によって内部組織が剥離したり繊維が損傷したりしてバーストに繋がる恐れが高まる。JAFによる以下の動画がわかりやすい。低速では問題ないものの、速度が上がるにつれて温度が上昇し、タイヤ全体が波打ち始める。
走行前の内圧に関しては、レッドブル及びアストン双方が既定値を守っていた事を認めているものの、現時点ではレース中・走行中の内圧を取り締まる方法がないため、ピレリはそれ以上の事は何も語っていなかった。
イゾラは想定よりも低い内圧で走行していたからと言って、走行中の最低内圧が定められていない以上、チーム側はレギュレーション違反を犯していないと強調した。
「今回のケースは、チームがレギュレーションに反した事をしていたために発生したわけではない」とイゾラは語る。
「チームがいつものようにパフォーマンスを追求した結果、我々が想定していたものとは異なるシナリオが生まれたためだった。我々は(火曜日のプレスリリースで)チームが規約違反を犯したとは言っていない」
実際にタイヤブローに見舞われたストロールは同じ日に「僕らはピレリが定めた規定の空気圧で走っているし、レース中の僕らのマシンには何も問題がなかった。ピレリは目下、今週末の安全性向上に繋がる解決策であるとの信念から内圧を引き上げようとしている。理由が何であれ、これ以上ブローアウトが出ないことを願うばかりだ。高速走行中に予期せぬパンクに見舞われるのは決して楽しくはないからね」と語っている。
他方フェルスタッペンは、バクーでのアクシデントに関する調査結果は「不十分」かつ「曖昧」であり、ピレリはチーム側を疑うのではなく「自分達自身に目を向ける」べきだと主張した。