F1:2026年の“隠れた課題”、レッドブル若手ドライバー育成にも危機が?5つのF1チームが直面

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新たな技術レギュレーションが導入される2026年はF1にとって大きな転換点となる。一方で、幾つかのチームはそれとは別に、若手ドライバー育成計画に課題を抱えることになる。その背景には、旧車テスト(TPC:Testing of Previous Cars)がある。
TPCとは、前年度を起算とした過去3シーズンの技術規則に準拠したマシンを用いたテストのことで、一般的にはその中で最も新しい2年落ちのマシンが使用される。
しかし2026年は特例として、1年落ちの2025年型マシンの使用が認められる。これは、マシンやパワーユニット(PU)、タイヤの大幅な変更に対応するための措置だ。
2026年に向けて、エンジンサプライヤーを変更するチームは以下の5チームにのぼる。
- レッドブル:ホンダ → RBPTフォード
- レーシング・ブルズ:ホンダ → フォード
- アストンマーチン:メルセデス → ホンダ
- アルピーヌ:ルノー → メルセデス
- アウディ:フェラーリ → アウディ
これらのチームはTPCに関して厄介な課題を抱えることになる。特にレッドブルとアウディ(ザウバー)の2チームは、2026年と2027年の2年間にわたりTPCを実施できなくなる可能性もある。
レッドブルとアウディの問題
レッドブルはフォードと提携し、2026年より初の自社製PU「レッドブル・パワートレインズ(RBPT)」を搭載する。角田裕毅が現在所属する姉妹チームのレーシング・ブルズも同様だ。
現在、レッドブルとレーシング・ブルズはホンダ製PUを搭載しているが、ホンダは2026年からアストンマーチンへの独占供給に切り替えるため、2025年型ホンダPUの確保が重要な課題となる。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2025年型PUの供給についてホンダ側と合意したと示唆している。しかし、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「TPCの実施は困難」と発言しており、チーム内で認識の食い違いが見られる。
このような状況から、レッドブルが2026年以降もホンダPUを確保できるかは依然として不透明であり、今後の交渉の行方が注目されるところだ。
一方、現在フェラーリ製PUを搭載するザウバーは、2026年からアウディのワークスチームとして再出発する。しかし、フェラーリは2026年以降、ザウバーに2025年型PUを供給することに消極的とされる。これは、PUに関する重要なデータがアウディ側に流出するリスクを懸念しているためだ。
独Auto Motor und Sportによると、仮にフェラーリが2025年型PUの供給を認めた場合でも、1基あたり3~5百万ドル(約4.5~7.5億円)という高額な費用負担が発生する可能性があるという。
もし2025年型PUを確保できなかった場合、レッドブル(レーシング・ブルズを含む)とアウディは2028年までTPCを実施できなくなる可能性がある。これは、2026年型マシンがTPCで使用可能になるのが2028年からであるためだ。
条件付きで合意に達したメルセデスとアストン
アストンは2025年までメルセデス製PUを使用するが、2026年からホンダ製PUに切り替える。そのため、TPCでの2025年型PUの供給についてメルセデス側と交渉を進め、条件付きで合意に達したと報じられている。
メルセデスが提示した条件は、「アストンがTPC専用の施設と独立した運営スタッフを用意し、通常のチーム運営と明確に区別すること」とされる。これには、メルセデスの機密情報がホンダに流出することを防ぐ目的があるとみられる。
比較的シンプルなアルピーヌの移行
アルピーヌは現在、ルノー製PUを使用しているが、2026年からメルセデス製PUに変更する。
ルノーは2025年末をもってF1から撤退し、エンジン開発を終了するが、2027年までヴィリー=シャティヨンに専任のエンジニアチームを維持し、TPCをサポートする方針だ。
よって、アルピーヌは他チームに比べてスムーズにTPCを継続できる見通しとなっている。