F1初年度を経てガスリーに「刺激を与える」程の成長を遂げた角田裕毅、一体なにがどう変わったのか?
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セルジオ・ペレスに代わりレッドブルのシートを手に入れるには時期尚早と判断されたものの、グリッドの中で最も高い評価を受けるドライバーの一人、僚友ピエール・ガスリーに迫るなど、F1での2年目を迎えた角田裕毅は明らかに成長を遂げた。
クラッシュを量産していたルーキーイヤーとは異なりミスは明らかに減り、レースウィークでは堅実に積み上げていくなど変に気負う様子もなく、コースやコンディションによってパフォーマンスが大きくブレる事もなくなり、インタビューでの返しには成熟さが感じられる。
リアウィングのフラップとDRS周りの機構が壊れるという不遇なトラブルさえなければ、角田裕毅は2年目のシーズンの3分の1、アゼルバイジャンGPを経て、今もドライバーズ選手権で僚友ガスリーを上回る位置にいた事だろう。
フィードバックの改善、チームとの関係深化
角田裕毅はどういった部分で一歩前進したのか?
そう問われた車両パフォーマンス部門を率いるギヨーム・デゾトゥーは、新人ドライバーが今のF1で学ぶ事の難しさを指摘しつつ、総合的に成長したとの考えを示し、チームとの関係性の深化についても触れた。
「昨年と比較してユーキは大きな一歩を踏み出した。経験を積み、コースを知り、そしてエンジニアやメカニックの事を学んだ。関係性は良くなる一方だ」
「F1は若手ドライバーにとっては本当に難しく、チャレンジングな選手権だと思う。テストする機会も殆どないし、冬季テストは本当に忙しない。その一方でクルマを理解するためには数多くのエンジニアリング的要素を学ばなければならない」
「そのためドライバーに時間を割き、クルマについて学ばせるのは大変で、クルマをあまり劇的に変える事も難しい」
「ルーキードライバーがコースやクルマについて理解を深めるという点で、少し葛藤があるわけだ」
「だが彼が昨年から大きく成長し、より安定した走りができるようになったことは確かだ」
「彼のフィードバックはかなり改善されてきた。彼のエンジニアは彼が速く走るために何が必要であるかをより理解している。更にピエールにも迫るようになり、刺激を与えている」
「本当にポジティブだよ。私は今のこの状況に本当に満足している」
AT03の強みと弱み、ポーパシング
昨季からの変化と言えばマシンだ。地面とフロアとの間で生み出されるダウンフォース量を強化した2022年の新車は重量が大幅に増え、大口径のタイヤを履き、足が固められている。
「空力特性はもちろんだが、セットアップの面でも大きく異なっている」とデゾトゥーは説明する。
「それに車重もかなり増えたし、御存知の通り、かなりのバウンシングがある。セットアップ的に妥協点を見つけるのが毎回、難しい」
「空力的なパフォーマンスと、ドライブしやすいクルマ作りという部分での妥協点を常に追い求めている。この妥協点というものはコースによって異なる」
デゾトゥーはまた、AT03の強みとしてメカニカルグリップの高さを、逆に弱みとしては高温のコンディションを挙げた。
F1アゼルバイジャンGPの週末にはポーパシングによる健康被害がトピックの一つになった。
5位フィニッシュによって今季最高成績を挙げたガスリーは、クルマが激しく上下動する事により「椎間板に負担がかかる」として「健康的でないのは確か」であり、セッションの合間には必ず物理療法を受けていると明かした。
またパフォーマンス追求の代償として「健康を損なっている」として「30歳で杖をつくことにならないような解決策」を国際自動車連盟(FIA)に求めていると主張したが、チーム側との間には温度差があるようだ。
ポーパシングについてデゾトゥーは「難しいテーマで、とても複雑だ」としながらも、プレシーズンテストの序盤とは異なり「今のところ主要な焦点ではない」と語った。