計3台のマシンと2基のPU毀損…メルセデスからの謝罪を受け入れないレッドブルのクリスチャン・ホーナー
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レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はF1ハンガリーGPの1周目の玉突き事故について、引き金を引いたバルテリ・ボッタス擁するメルセデスのトト・ウォルフ代表からの謝罪を受け入れていない。
2番グリッドのボッタスはスタートの蹴り出しで大きく出遅れ、ターン1へのブレーキングの際に制動ポイントを見誤った事でランド・ノリスに衝突。この衝撃でマクラーレンMCL35Mがマックス・フェルスタッペンを、メルセデスW12がセルジオ・ペレスを直撃した。
謝罪を受け入れないホーナー
スチュワードはボッタスに次戦ベルギーGPでの5グリッド降格を科し、本人も「僕のミスである事は明らか」等として被害者達に謝罪したが、チームのボスも自らのドライバーに過失があった事を認め詫びている。
ウォルフはSky Sportsとのインタビューの中で、2戦連続で他者の餌食となり潜在的に多くのポイントを失ったフェルスタッペンのフラストレーションは「痛いほどよく分かる」として陳謝した。
「あれはブレーキをかけ過ぎるという小さなミスだったが、ランドと2台のレッドブルを道連れにしてしまった」
「あってはならない事だが、雨は状況をかなりトリッキーなものにしてしまう事がある」
「ちょっとしたミスが大きな事故に繋がってしまった。ダブル表彰台の可能性もあったという点で彼らは多くのポイントを失った。本当に申し訳なく思う」
これは公に謝罪の言葉を口にしただけだが、ニコ・ロズベルグによるとウォルフはホーナーに会いに行き直接詫びたものの、ホーナーはそれを受け入れなかったという。
なおホーナー自身は、ウォルフから謝罪の言葉があったかと問われると「彼にツケを払う気があると思うのかい?」と返して、そもそも謝罪される話ではないと主張した。
「いいかい、これがレースなんだ。クルマをドライブしていたのはトトではなく彼のドライバーだ。彼は『レッドブルに突っ込め』とは言っていないはずだ」
「確かに今日の結果は彼(ウォルフ)にとってさほど残念なものではなかったと思うが、バルテリにそういう指示をしたわけではないだろう。少なくとも私はそう確信している」
穏やかでない心中
レース競技に人生を捧げてきたが故の矜持だろうが、その心中は穏やかではない。ホーナーはボッタスのドライビングはアマチュアのようだったと言わんばかりだ。
「バルテリのスタートが悪かった事は明らかで、最初のコーナーに向けてのブレーキングポイントで判断を誤ったように見える」
「まるで失態を取り戻そうとし過ぎて起こるカート競技でのミスのようなものだった」
「そして残念な事に、そのツケは我々のマシン2台が排除されるという結果となって表れた」
「とてつもない苛立ちを覚える」
確かにボッタスには5グリッド降格という一件に対する罰則が科されたが、次戦の舞台スパ・フランコルシャンはハンガロリンクと比べて余りにオーバーテイクが容易であり、ホーナーは「2周目が終わる頃にはポジションを回復しているだろう」と述べ、大したハンデにはならないだろうとの見解を示した。
破損によってハース化したマシン
良き友人でもあるノリスの車体がぶつかってきた事で、フェルスタッペンはフロアとバージボードに甚大な被害を被った。メカニック達は赤旗を利用して修復に取り組んだが傷は深く、フェルスタッペンは手負いのマシンで再スタートに臨んだ。
その結果、フェルスタッペンは大きく巻き返す事ができず、タイトル争いのライバルであるハミルトンが14番手からの3位フィニッシュ(2位昇格)を果たした一方、ポイント圏内に足を踏み入れるのが精一杯だった。
ホーナーは手負いの33号車のダウンフォースレベルを、今シーズン唯一ポイントを獲得できていないミック・シューマッハ駆るハースVF-21になぞらえた。
「右側のバージボードが全て無くなっていた。チームは素晴らしくもクルマをコースに送り出してくれたが、今日のマックスはシューマッハよりも低いダウンフォースしかなかったはずだ。あまりに残酷だった」
計3台のマシンと2基のPU毀損
レッドブル・ホンダとフェルスタッペンはこれまで順調にチャンピオンシップでのリードを積み重ねてきたものの、シーズン前半戦の終盤2戦で立て続けに衝突され、タイトル争いの行方を左右しかねない程の膨大な損失を計上した。
フェルスタッペンは3連勝目を達成した僅か2戦前のオーストリアGP終了時点で32ポイントものリードを持っていたが、イギリスとハンガリーのたった2戦でハミルトンに逆転を許し、8ポイントの差をつけられてしまった。
選手権ポイントもさる事ながら、より深刻なのはパワーユニットとマシンの毀損だ。イギリスGPではハミルトンとの接触によりフェルスタッペン駆る33号車RB16Bが全損に近いダメージを負っただけでなく、搭載していたパワーユニットも交換を余儀なくされた。
またハンガロリンクでのレースでは2台のマシンが同時に撃墜され、今度はペレスのパワーユニットがお釈迦になり兼ねない深刻な損傷を受けた。
ホーナーは事故の衝撃でペレスのPUがダメージを負ったとした上で「詳細に調べる必要があるが、取り急ぎの報告によると、もう使えないという事だった」と述べ、4基目を投入は避けられないとの見通しを示している。
僅か2戦でマシン3台分と2基のパワーユニットを失う事は、予算上限とパワーユニット使用制限が科せられる今シーズンのF1において致命的な打撃となり得る。
一連の事故によって、自らに非のない理由で競争力が削がれ得るというのは、競技としてのあるべき姿なのだろうか?
こうした視点が生まれつつある中、ホーナーは統括団体の国際自動車連盟(FIA)に対して何らかの対応を促そうとしているようだ。
壮絶な後半戦への誓い
少なくとも当日位は打ちのめされ、不満だけを口にしても許されそうなものだが、ミルトンキーンズの指揮官は前を向いている。
「今年の前半戦を見て欲しい。我々は6つのグランプリで勝利を収めたが、失ったのはタイヤブロー(アゼルバイジャン)、シルバーストンでの排斥、そして今週末のレースだった」とホーナーは語る。
「チーム全体がやる気に満ちているし、ポジティブな材料もたくさん得ている。チャンピオンシップ後半戦に向けて2週間ほど休んで充電し戦いに備えたい。すべてはやるのみだ」
「2人(ハミルトンとフェルスタッペン)の間には1位と2位という差があるのみだ。後半戦は壮絶なものになると思うが、我々は一切諦めるつもりはない」
「マックスは酷いダメージを負ってダウンフォースを失ったにも関わらず、懸命に戦い抜いて1ポイントを持ち帰ってくれた。これはシーズン終盤に決定的な意味を持ち得るものだ」
不屈の精神を持つのはドライバーも同じだ。フェルスタッペンは今回のレースが自身のアプローチや態度に影響する事はないとして、これまで同様にやるべき仕事をやり続けるだけだと訴える。
「多くのポイントが犠牲になり、数々の不慮の瞬間があったけど、次はどうだろうね」とフェルスタッペン。
「もちろん、彼ら(メルセデス) は本当に速いけど僕らは決して諦めない。自分達の事に集中し、プッシュし続け、その先に何が起こるのかを見てみるつもりだ」