F1ポーパシング介入:各ドライバーの反応…評価多数の一方で批判的なフェルスタッペンとルクレール、ハミルトンは影響除外

ピエール・ガスリー、シャルル・ルクレール、マックス・フェルスタッペン、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテル、ケビン・マグヌッセン、ダニエル・リカルド、ジョージ・ラッセル、2022年F1カナダGPにて

ドライバーの健康被害が懸念されるポーパシング、バウンシング問題に関して、国際自動車連盟(FIA)が技術指令書の発行を通して介入した事について、F1ドライバーたちはどの様に受け止めているのだろうか?

対策が発表された翌6月17日にジル・ビルヌーブ・サーキットで行われたF1カナダGP金曜会見の中でのドライバー達の反応を以下にまとめる。

FIAは許容振動レベルを逸脱したチームに車高を上げるよう強制する短期対策と、内容は不明ながらも抜本的な解決のための中期対策の2つを柱に上げているが、会見での質問は両者を区別して行われたものではなかったため、各ドライバーがどちらを念頭に答えを返したのかが不透明な部分に留意されたい。

なおアルファロメオのバルテリ・ボッタスと周冠宇、マクラーレンのランド・ノリス、ハースのミック・シューマッハ、そしてアルファタウリの角田裕毅には質問が飛ばなかったため、この5名がどう捉えているのかは分からない。

レッドブル

Courtesy Of Red Bull Content Pool

会見に出席したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2022年6月17日F1カナダGP

マックス・フェルスタッペンは、制限が自分達に不利に働くか、有利に働くかは別にして、シーズン途中で”ルール変更”が行われるのは「適切ではない」と主張した。その理由として、問題の解消に向けては単純に、チーム側がライドハイトを上げれば良いだけだからだと説明した。

また、競技生活において健康を害するリスクがあるのはF1だけでなく、モトクロスやMotoGP、サッカー選手も同じだとして「僕は自ら進んでリスクを取っている。これが僕らのスポーツなんだ」と付け加えた。

チームメイトのセルジオ・ペレスは「ドライバーの健康にとって良い事はないから、FIAが介入して沈静化させようとするのは良い事だ」と歓迎した。

メルセデス

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

インタビューに答えるメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年6月16日F1カナダGP

ルイス・ハミルトンは「究極的には安全が何よりも重要」だとした上で、ポーパシングとバウンシングを引き起こしている現行のマシンコンセプトは今季のみならず少なくとも今後4年間に渡って継続される予定である事に触れ、「未来のドライバーを含めた僕ら全員が、将来に渡って背中に問題を抱えることがないようにすることが大切」だと語った。

またフェルスタッペンが「この問題を大げさに騒ぎ立てるべきではない」とした事について、健康を理由に「軽視すべきでない」と反論した。

更に、制限の導入によるグリッドの序列に対する影響については、予想が間違っているかもと前置きしつつも「パフォーマンス面で大きく変わる事はないと思う」と語った。

ジョージ・ラッセルは「解決策というよりは、おそらく応急処置」だとして様子見の構えを示した。ただその一方で「最も苦しんでいないチームでさえ、恐ろしく攻撃的でバンピーな乗り心地」だろうと主張して、競技生活が送れるのは「健康あってのもの」だと強調した。

フェラーリ

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

セッションに向けて準備するフェラーリのシャルル・ルクレール、2022年6月17日F1カナダGP

シャルル・ルクレールは、今季のグランドエフェクトカーは確かに「硬く」、バウンシングを誘発しやすい特性があると認めながらも、個人的には「特に問題を感じていない」として、FIAの加入について「完全には同意できない」との考えを示した。

カルロス・サインツは「これほど早い反応や行動を期待していなかった」とした上で、影響は「ほぼ全チームに出るだろう」との見解を示し、まずは詳細な手順と具体的なやり方を見守りたいとして、現段階での直接的な評価を避けた。

アルピーヌ

Courtesy Of Alpine Racing

アルピーヌA522に乗り込み出走を待つエステバン・オコン、2022年6月17日F1カナダGP

フェルナンド・アロンソは、例え身体的に痛みを抱えていてもドライバーからチームに対し、車高を上げるなどの形でパフォーマンス低下を求める事は事実上困難だとして、FIAが腰を上げた事について「多かれ少なかれ賛成だ」と語った。

エステバン・オコンは、アルピーヌのポーパシング状況はライバルほど酷くないと認めながらも、FIAがドライバーの安全のために対策に乗り出した事は「非常に前向き」だと評価した。

また、振動の問題はポーパシングだけでなく「クルマの硬さ」にも起因しているとして、ポーパシングのみに目を向け過ぎると問題の本質を見誤る危険性があると注意を促した。

アストンマーチン

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

セッションに向けて準備するアストンマーチンのセバスチャン・ベッテル、2022年6月17日F1カナダGP

セバスチャン・ベッテルは、全チームにとって最良の解決策を見出す事は「非常に困難」で、全会一致も「不可能」だとして、「このような状態を今後4・5年と続けていく事は不可能」だと指摘し、「パフォーマンスより安全性」を優先したFIAを評価した。

ランス・ストロールは「毎年こんな調子だと体に負担がかかる」として、現行レギュレーションの見直しを訴えた。

マクラーレン

Courtesy Of McLaren

マクラーレンMCL36に乗り込み出走を待つダニエル・リカルド、2022年6月17日F1カナダGP

ダニエル・リカルドは他チームほど苦しんでいないと認めながらも「バクーは今年経験した中で最もバンピーだった」と述べ、問題解決に向けて取り組んでいく事に「前向きだ」と認めた。またドライビングの際の姿勢が、身体的リスクを高めている可能性があるかもしれないと付け加えた。

ウィリアムズ

Courtesy Of Williams

母国レース用のスペシャルヘルメットを手にスタンドに腰掛けるウィリアムズのニコラス・ラティフィ、2022年6月16日F1カナダGP

ニコラス・ラティフィは「健康への長期的悪影響は確実にある」として、仮に今回の措置に納得していないチームやドライバーがいたとしても、FIAが介入した事は評価できるとした。

アレックス・アルボンは、こうした事態に発展するのを予想できた者は「多くはいなかったはず」だとしながらも、一致団結すれば状況を改善できるはずだと主張した。

アルファタウリ

Courtesy Of Red Bull Content Pool

会見に出席したピエール・ガスリー(アルファタウリ)、2022年6月17日F1カナダGP

ピエール・ガスリーは今季のレギュレーションの方向性そのものは正しかったとしながらも「現在起きている幾つかの副作用が予想以上に極端だった」として、今後F1デビューを果たす事になる若手のためにも、こうして一歩前進できた事を「ただ嬉しく思う」と述べた。

ハース

Courtesy Of Haas

マイクを持ち笑みを浮かべるケビン・マグヌッセン(ハース)、2022年6月16日F1カナダGP

ケビン・マグヌッセンは全チームが同意してルールを改定する事は現実的に不可能だったとして、チーム合意の下でのルール変更を待たずに対策に着手したFIAは「すべき事を為した」と評価した。

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