ホーナー騒動の裏で動く2人のキーマン、加速するレッドブルF1内部分裂とメルセデス移籍の憶測
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クリスチャン・ホーナー代表兼CEOに関する一連の騒動を巡り、舞台裏には2人のキーマンによる相反する動きがある。レッドブル・レーシングの内部分裂を加速させるものと、間接的な理由から状況を修復させようというものの二つだ。
FIA会長、公の場でのホーナー支持を要請
複数の情報筋によるとモハメド・ベン・スレイエムFIA会長は開幕バーレーンGPのパドックでマックス・フェルスタッペンに対し、ホーナーを公の場で支持するよう求めた。パルクフェルメでは両者が話し合う様子が目撃されていた。
FIAはバーレーンでの週末、女性従業員に対するホーナーの疑惑についてフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)の経営陣と会合の場を持ったと見られており、FIAは現在も議論が進行中であると認めている。
フェルスタッペンはポール獲得後の会見の中で、ホーナーのリーダーシップに全幅の信頼を寄せているか?との質問に対し、チーム内での運営手腕とパフォーマンス面に対する評価を口にするに留めた。
複数の情報筋によると、こうした状況を背景にベン・スレイエムは公然とホーナーを支持するよう要請した。納得せず、あるいは拒否したとの報道もあるが、フェルスタッペンがどう返したのかは定かでない。ただ要請そのものがあった事は確実と見られる。
フェルスタッペンへのアプローチに先立ちベン・スレイエムは英紙「フィナンシャル・タイムズ」とのインタビューで、ホーナーを巡る騒動はF1に「損害を与えている。人間レベルでの損害だ」と述べ、「これに関するあらゆるものから我々のスポーツを守る」ことが重要だと強調していた。
メルセデスに接触するヨス、ホーナーを支持する大株主
疑惑そのもの、そしてこれが告発に至ったことそれ自体に関してはさておき、疑惑の発覚を受け生じた一連の出来事、つまり長引いた調査や、調査結果を受けてのレッドブルGmbHの決断、そして無罪放免発表の後に証拠とされる大量の情報がリークされた事については、その背景にレッドブル内部の権力闘争があるとの見方が強まっている。
レース後のパドックにはポールポジション、優勝、ファステストラップ、そして全周リードのグランドスラムを達成したフェルスタッペンを祝うホーナーの姿があり、また、妻ジェリ・ハリウェルが現地バーレーンに駆けつけるなど、ホーナーは公の場で家族、そしてチームの団結を示したが、内部分裂は加速している。
予選後のパドックでホーナーと激しい口論を交わしたと認めるフェルスタッペンの父ヨス・フェルスタッペンは、「被害者ぶっている」として騒動の責任はホーナーにあると主張。代表の座に留まればチームは崩壊すると警告し、事実上の退任を要求した。
現役トリプル王者が予選でポールポジションを獲得した直後にヨスは、17歳での史上最年少F1デビューを含め、息子のキャリアに決定的な成功をもたらしたレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコと笑顔で固い握手を交わした。マルコは昨年、チーム内の権力闘争においてホーナーと対立関係にあると噂された。
マーケットに出れば誰もが獲得を望むであろう3度のF1ワールドチャンピオンの父であるヨスがメディアを通して一件に介入した事は当然に更なる混乱を生むことになる。
ヨスはバーレーンのパドックや宿泊先のホテルでメルセデスのトト・ウォルフ代表と話し込む様子が何度も目撃されており、必要に応じて息子がメルセデスに移籍する可能性を周囲に漏らしているとの情報もあって、フェルスタッペンの電撃メルセデス移籍の可能性に関する憶測もまた加速している。
ホーナーと犬猿の仲にあたるウォルフは、ジュニア時代にフェルスタッペンの獲得を望んでいたものの、当時、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンの両名と長期契約を結んでいた事からこのチャンスを逃した過去がある。
土曜のレースにはホーナーと談笑するレッドブルGmbHの大株主、ホーナーの支持者とされるチャルーム・ユーウィッタヤーの姿があった。残りの49%の株式は2022年10月に亡くなった共同創設者ディートリッヒ・マテシッツの息子であるマーク・マテシッツが所有している。レースを経てホーナーは職務続行に「自信」を示した。