シミュレーターで年間20周しか走らずトラックウォークは「無意味」と言い切るハミルトンは如何に100ポールに至ったのか?
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F1におけるシミュレーターの重要性は過去20年に渡って右肩上がりに上昇し続けてきた。シャシーやエンジンの設計は勿論、週末のレースに向けてのクルマのセットアップやドライバーの準備にとって今や欠かせない要素の一つと言える。
シミュレーターは年20周のみ
だが、7度のF1ワールドチャンピオンに輝き、前人未到の3桁ポールポジションの偉業を成し遂げたメルセデスのルイス・ハミルトンはシミュレーターに全く興味がなく、年間20周程度しか走らないという。
第4戦スペインGPの週末にキャリア通算100回目のポールを獲得した際、英国ブラックリーのファクトリーにあるシミュレーターがどのように役立ったかと問われたハミルトンは「僕はほとんどシミュレーターで運転しないんだ。年に20周くらいかな。全く興味がない」と答えた。
実際にどの位の時間をファクトリーのシミュレーター作業に費やしているかは分からないが、これはプロ仕様の特注レーシングシミュレーターを自宅に設置し、シーズン中は勿論、暇さえあれば何時間も仮想レースに没頭するランド・ノリスやマックス・フェルスタッペンとは対照的と言える。
トラックウォークも「無意味」
更にハミルトンは、多くのドライバー達がグランプリ開幕の前日にエンジニアリングチームと共に実施するトラックウォークも「無意味」と断じた。
「若い頃はよくコースを歩いていたけど、結局僕にとっては意味のない運動に過ぎないって事に気づいた。高速でアプローチするのとはだいぶ違うからね。つまり僕にとってはエネルギーの無駄遣いだったんだ」とハミルトンは語った。
なおランス・ストロールはウィリアムズ時代の2017年にトラックウォークの重要性と意義について「得られる知見の多さにはびっくりだ。歩いて回るとは言え、F1マシンで高速走行する際にすごく役に立つ。路面の凹凸状況を知る事でクルマがどのように反応するかを感じ取ることができる」と語っている。
ヒントは過去にあり
シミュレーターには乗らない、トラックウォークもしないというのであれば、ハミルトンは一体どのような方法で週末に向けての準備を整えていくのだろうか?
「金曜と土曜の午前のセッション(3回のフリー走行)では様々な事を試す。基本的にはパズルのピースを見つけるような作業だけど、その時点では全てを組み立てるには至らない」とハミルトンは説明する。
「予選が始まると選択の余地はなくなる。すべてのピースを持っていようがいまいが、パズルを組み立てなきゃならない」
「そこで自分やライバルの過去のラップを見直したりする。忘れているものがないかどうかを確認するんだ」
ハミルトンの通算100ポール統計
ハミルトンはF1で過ごした過去15シーズンの全てでポールポジションを獲得してきた。
2007年のF1カナダGPで初のポールを獲得すると、デビューイヤーでは6回、2シーズン目には7回を獲得。マクラーレン時代には計26回を計上した。
つまり大部分は2013年のメルセデス移籍後であるわけだが、シルバーアローでの74ポールの内、69回はメルセデスが無双を誇るV6ハイブリッド時代のものだ。
逆に言えば、それ以外のポール獲得数は31回に留まる。これは歴代4位につける通算57回のセバスチャン・ベッテルには届かず、歴代8位のニコ・ロズベルグより1回多い数字だ。
通算100回目の大台に載せたのはエントリー270戦目の事だった。ポール獲得率は驚異の37%に達する。なお予選ベストシーズンは2016年で、計12回のポールを手にしている。
シーズン | ポール回数 | レース数 |
---|---|---|
2007年 | 6 | 17 |
2008年 | 7 | 18 |
2009年 | 4 | 17 |
2010年 | 1 | 19 |
2011年 | 1 | 19 |
2012年 | 7 | 20 |
2013年 | 5 | 19 |
2014年 | 7 | 19 |
2015年 | 11 | 19 |
2016年 | 12 | 21 |
2017年 | 11 | 20 |
2018年 | 11 | 21 |
2019年 | 5 | 19 |
2020年 | 10 | 17 |
2021年 | 2 | 4 |
なお、ハミルトンがポールポジションを獲得した際に誰がフロントロー2番グリッドに着いたのかを見てみると、最も多かったのは25回のニコ・ロズベルグで、これにセバスチャン・ベッテルが19回、バルテリ・ボッタスが19回、キミ・ライコネンが9回、そしてマックス・フェルスタッペンが6回で続く結果となった。