ハミルトンとラッセル、体調不良でメディア対応中止…F1シンガポールGP史上初のノンストップレースを終えて
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メルセデスのルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは、2024年9月22日にマリーナベイ市街地コースで行われたF1シンガポールGP後に体調不良を訴え、レース後のメディア対応を急遽、取りやめた。
深刻な状態というわけではなく、アイスバスに入るなどして既に回復しているが、レース直後に熱中症寸前の状態であることが確認されたため、大事を取って休ませたという。
英インデペンデント紙によるとメルセデスのトト・ウォルフ代表は、2人のドライバーの状態について「体調がすぐれず、熱中症ギリギリのところ、といった感じだったが、水分は採っており元気だ」と説明した。
すべてのF1ドライバーにはメディア対応が義務付けられているが、メルセデスはチームの医師の助言に基づき、2人のドライバーの対応免除をFIAに求めた。
マリーナベイ市街地コースでのレースは、シーズンの中で最も体力を要するレースの一つであり、特にその高温多湿の気候が例年、ドライバー達を苦しめている。
今回は、過去16年に渡るシンガポールGP史上初めて、セーフティーカーが導入されずにチェッカーフラッグが振られたため、ドライバー達は一瞬たりとも気を休める時間がなかった。
4位でフィニッシュしたラッセルはレース終盤、無線を通して「サウナのようだ」と訴えた。また、優勝したランド・ノリス(マクラーレン)はクルマを降りた後、「めまいがする」と訴えた。
レース中ではなくレース後に体調不良を訴える例は珍しいものではない。レース中はアドレナリンが大量に分泌されており、かつ、クラッシュによる命の危険もあることから、ドライバーはドライビングに全神経を集中させており、身体の異常に気が付きにくいという側面がある。
シンガポールGPを5位でフィニッシュしたシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、マリーナベイ市街地コースでのレースの過酷さを次のように説明した。
「大変だよ。とんでもなく暑いし、間違いなくキツい。でも実際のところ、レース中にはあまり感じないんだ。疲れも感じないし、暑さも感じない」
「そんなことを考える余裕がないんだよ。酷いのは、チェッカーフラッグを受けてクールダウンラップを走っている時だ。緊張から開放されるからだと思う」
「クルマから降りる時は、いつも気を失いそうになる。緊張が解けるまでは実感できないけど、かなり辛い。水分不足が原因なだけだけど、レース中に気を使うのはかなり難しいんだ」
「僕らのスポーツのかなり特殊なところは、アドレナリンと集中力が混ざり合って身体に作用する点だと思う。アドレナリンが支配するから、本来なら肉体的に感じる色んなことがあまり感じられなくなるんだ」
同じく暑い気象条件の中で行われた昨年のカタールGPでは、脱水症状によりリタイヤを余儀なくされたり、ヘルメットを被った状態で嘔吐したり、ステアリングを握りながら「気を失った」と主張する者もあった。
過酷なトレーニングを積むトップドライバー達がこれほどまでに疲労した原因としては、単に気象条件だけでなく、コックピット内に流入する空気が少ないことや、エンジンが発する熱の流入など、マシン自体に関わる技術的な要素も指摘されており、今年のオランダGPより国際自動車連盟(FIA)は、コックピット内の冷却を目的とした新しい空調システムを試験導入している。