どうなるF1日本GPの未来?観客動員回復の一方で課題、ホンダのファン獲得戦略&新たなビジネス展開

鈴鹿サーキットのピットレーン入口、2024年4月4日F1日本GPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

F1は2025年に75周年を迎え、特に北米市場が牽引する形でグローバルな人気拡大と収益増加を実現している。一方、日本ではF1日本GPの来場者数が回復傾向にあるものの、その歩みは力強いとは言えない。こうした状況を受け、ホンダは新規ファンの獲得やビジネス拡大を目的に、国内イベントの強化や文化コラボレーションなど、新たな戦略に取り組んでいる。

世界的に拡大するF1人気と日本の現状

2025年に75周年を迎えるFIAフォーミュラ・ワン世界選手権(F1)は、世界最高峰のモータースポーツとして成長を続けている。年間650万人がサーキットで観戦し、TV視聴者数は累計15億人超、グローバルファン数は7億人以上に達する。

特に北米市場では、Netflixのドキュメンタリーシリーズ「Formula 1: Drive to Survive」の成功や、リバティメディアのマーケティング戦略が奏功し、F1人気が急上昇。2025年には全24戦中5戦が北米で開催される予定で、F1の総収益は2023年に前年比25%増の32億USドルに達した。

さらに、新たな都市でのレース開催やデジタルコンテンツの強化により、市場のさらなる拡大が見込まれる。ホンダが2026年シーズンにパワーユニット・サプライヤーとして復帰する背景にも、北米市場でのブランディング強化という狙いがある。

一方、日本におけるF1の人気は回復傾向にあるものの、課題もある。

F1日本グランプリは2006年の36万1,000人をピークに減少傾向が続き、2017年には過去最低となる13万7,000人を記録。しかし、2024年の観客動員数は22万9,000人にまで回復し、特に海外からの来場者は2019年の9%(1万500人)から22%(5万人)へと大幅に増加した。

しかし、国内来場者の平均年齢は48歳と高く、F1ブームを経験した世代が中心であることが課題として浮上している。若年層を中心とした新規ファンの獲得が、今後の日本GPの存続に向けた鍵となる。

ホンダモビリティランド(HML)が運営する三重県鈴鹿サーキットでのF1日本GPの開催契約は2029年までとなっているが、世界的なF1人気の拡大を背景に、新たな開催候補地が熾烈な誘致合戦を繰り広げており、日本GPの地位は決して安泰とは言えない。

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F1日本GPの観客動員数の推移(1987年ー2024年)

ホンダのF1ファン獲得戦略:新たな試みと継続施策

F1日本GPの観客動員数を増やし、若年層を中心とした新たなファン層を開拓するとともに、モータースポーツ未経験者にもF1の魅力を伝えるため、ホンダは従来の施策に加え、新たな取り組みを開始した。

F1との接点拡大

ホンダとHMLは2025年のF1日本GPに向け、新規ファン層へのアプローチを強化する新たな取り組みを開始した。既報の通り、2つのビッグイベントを首都東京で予定するほか、日本国内企業を巻き込むべく、日本GPの開催期間中に初めてビジネスカンファレンスを開催する。

  • 「F1日本グランプリビジネスカンファレンス」の初開催
    2025年4月4日(金)に鈴鹿サーキットで国内企業向けのビジネスカンファレンスを開催。F1のマーケティング活用やサステナビリティ分野での協業事例を紹介し、新たなビジネスチャンスの創出を促す。海外の成功事例を交え、日本企業向けにF1を活用したマーケティング手法を提案する。
  • F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025の大規模開催
    2025年4月2日(水)、および4月4日(金)~6日(日)の4日間、お台場・青海エリアで「F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025」を開催。従来のF1ファン向けイベントに加え、未経験者や家族層が楽しめる体験型コンテンツを充実させた。VRシミュレーターを導入し、F1マシンのリアルな走行を仮想体験できるプログラムも用意される。
  • 「Red Bull Showrun x Powered by Honda」の都市型展開
    2025年4月2日(水)に東京・お台場でF1マシンのデモ走行イベントを実施。市街地をF1マシンが走ることで、新たなファン層へのリーチを狙う。従来のイベントよりも広範囲でプロモーションを展開し、SNSでの拡散を促進する。

F1とのタッチポイントを増やす取り組み

ホンダは過去にもF1の魅力を広める取り組みを行っており、2025年も継続的な施策を展開する。

  • 歌舞伎とのコラボ
    2024年には歌舞伎俳優・市川團十郎氏を公式アンバサダーに迎え、歌舞伎座でF1ラスベガスGPのパブリックビューイングを実施。2025年のF1日本GPでは、市川團十郎氏・市川新之助氏親子が決勝レースのオープニングセレモニーで歌舞伎舞踊を披露し、日本文化とF1の融合を図る。
  • 鈴鹿サーキットでのサステナビリティ推進
    カーボンニュートラルの実現に向け、太陽光発電の導入や、脱使い捨てプラスチックの推進など、環境負荷低減の取り組みを強化。企業との協業を進め、持続可能なF1開催を目指す。

F1日本GPの未来

ホンダはF1日本GPの魅力を最大限に引き出し、従来のF1ファンだけでなく、新たなファン層の獲得にも積極的に取り組んでいる。同時に、F1をビジネスプラットフォームとして活用し、日本企業の参入を促す方針を明確にした。

今後の日本GPの成功に向けては、「エンターテインメントとの融合」が鍵を握るかもしれない。具体的には、アニメやモバイルゲーム、最新のデジタルエンターテインメント技術(VRやARなど)を取り入れることで、若年層やサブカルチャーファンとの新たな接点を創出し、日本ならではの独自価値を強調できる可能性がある。

また、ホンダの取り組みも、従来のビジネスモデルに留まらず、参加企業や地元クリエイターとのコラボレーションを通じて、より革新的なマーケティング戦略へと進化することが期待される。

日本はF1の歴史的な遺産が豊富である一方、国内のファン層が成熟していることが課題とされている。しかし、新たな文化融合やデジタル戦略を加速することで、国内外の若い世代を巻き込み、新しいF1体験を提供できる可能性は十分にある。今後、日本GPがどのように進化していくのか、その動向に注目が集まる。

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