F1史上26人目の完全無欠試合…死角なきルクレール、”成熟”の背後にあるマインドセットの変化
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スクーデリア・フェラーリのシャルル・ルクレールは4月10日に開催されたF1オーストラリアGP決勝レースでパーフェクトゲームを展開し、F1史上26人目となるグランドスラム(優勝、ポール、ファステストラップ、全周リード)を達成したドライバーとして歴史に名を刻んだ。
ただし24歳のモナコ人ドライバーにとってそれは大した意味を持たない。アルバート・パーク・サーキットでの圧勝を経てルクレールは「特に何も意味はないよ。重要なのは僕が最終的にトップでフィニッシュしたって事だから」と語った。
グランドエフェクトカーの導入を含む歴史的なレギュレーション刷新を経て、開幕3戦に渡って繰り返されてきた「どのマシンが一番速いのか」という疑問に対する答えは「フェラーリ」一択に絞り込まれつつある。
レッドブル・ホンダとメルセデスが熾烈なタイトル争いを繰り広げる様を横目に、マラネッロの伝説的チームは昨年、虎視眈々、黙々と今季に向けて開発を続けてきた。2022年型F1-75はルクレールにとって、F1タイトルを狙うに足る高い競争力を持つ初めてマシンと言える。
これまでのルクレールは光る速さを見せる一方、予選でクラッシュを演じるなど肝心な局面でミスを喫する場面が少なくなかったが、チーム代表のマッティア・ビノットが「シャルルは成熟したパフォーマンスを見せ、今やそれは当たり前のものになりつつある」と指摘する通り、今年は非常に高い一貫性と安定感、落ち着きを見せており、今のところ死角らしきものは見当たらない。
その背景には意図的な”切り替え”があった。競争力あるクルマに恵まれた事を認識したルクレールは固定観念をリセットし、レースに対する思考パターンを変えたのだ。
「もちろんジュニアカテゴリー時代には経験してるけど、F1におけるこういう状況が意味するものは遥かに大きい」とルクレールは説明する。
「当然、過去2年間と比べると考え方が少し違う。なぜなら勝てるマシンがある事が分かっているわけだからね。実際、1つや2つポジションを上げるために無理をしたり、何か凄く特別な事をやったり、派手な事をする必要はないんだから」
「だから今年はマインドセットが少し違うんだよ」
筆頭対抗馬のマックス・フェルスタッペンは開幕3戦で2回のメカニカルトラブルに見舞われ大量得点を失った。ドライバーズランキング2位につけるのは競争力に欠くメルセデスのジョージ・ラッセル。チャンピオンシップでのリードは3戦にして37ポイントにまで拡大した。
F1-75は速さだけでなく信頼性も高い。連戦でコロナに感染するなどの不測の事態がなければ、ライバルがルクレールを逆転する事はかなり困難と言える。だが2007年のキミ・ライコネン以来となる15年ぶりのドライバーズ選手権制覇に向けてスクーデリアが手を緩める事はない。
「僕らが後手に回る理由は何もない。チームは素晴らしい仕事をしているし、マラネッロのみんなも今年に向けてこの素晴らしいクルマを作り上げてくれた」とルクレールは続ける。
「それにこれから幾つかのアップデートが予定されているし、僕はそれが正しい方向に導いてくれるものだと信じている」
「だから、他人のことはあまり気にしないことにしているんだ。自分たち自身ことに集中する必要がある」
「この2年間でチームは、自分達の弱点を見つけ出すという点において、毎週末のレース分析方法を飛躍的に向上させたし、苦手な部分を改善させるためのスピード感を上げてきた。だから、チームは今年も素晴らしい仕事をしてくれるって確信してるんだ」
フェラーリの本国、イタリアのイモラ・サーキットを舞台とする次戦エミリア・ロマーニャGPは4月22日のフリー走行1で幕を開ける。