ホンダF1、惨憺たる苦境を乗り越え迎えるラストラン「最終年の最終戦でタイトルを懸けて争える事が本当に誇らしい」
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2021年FIA-F1世界選手権第22戦アブダビGPが告げるのは長いシーズンの終わりだけではない。2015年の復帰から7年、計140戦。ホンダF1は遂に、ラストレースを迎える。
信頼性不足で走る事すらままならなかった復帰当初のマクラーレン時代を経て、ホンダはイタリア・ファエンツァの良き友人達に恵まれ、強豪レッドブル・レーシングとの提携を経て遂に世界タイトルに挑戦する立場にまで這い上がってきた。
ホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクターはヤス・マリーナ・サーキットでの最後の週末を前に「遂に我々は、今週末のアブダビでホンダとしてのF1ラストレースを迎える事になります」と語った。
「2015年からの7年間に渡るF1活動の集大成となるレースであり、寂しさと幸せ、そして良いものも悪いものも含めて多くの思い出と共に挑む事になりますが、私は最後のこの週末を楽しみにしています」
「とは言え、チャンピオンシップはまで決しておらず、我々はレッドブル・レーシングと共にメルセデス及びハミルトンと両タイトルを懸けて争っている最中にあります。ですので、このスポーツにおける我々の時間は終わりを向かう事になりますが、最高のパフォーマンスを目指すという我々の力強いコミットメントはこれまでと変わりません」
「ホンダは2015年にF1に復帰しましたが、このプロジェクトは必ずしも順調ではなく、特に最初の頃は非常に厳しく、これまでに多くの浮き沈みを経験してきました。復帰初期のあの頃を振り返ると、最終年の最後のレースでチャンピオンシップを懸けて戦える事を本当に誇らしく思います」
「タイトル獲得を夢に、我々はそれに向けて一歩一歩前に進んできました」
「その夢は今、手の届くところにありますが、日曜の最後のレースを終えた時に泣いているのか、笑っているのかは正直なところ分かりません。ですがホンダの“チャレンジング・スピリット”を見せるべく、チームメンバー全員が、レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリの仲間たちと共に臨みます」
「最後のチェッカーフラッグが振られるまで、私達は夢を追い続けます。この夢は、良い時も悪い時も応援し続けてくれているファンの方々と共有するもので、最後の瞬間まで私達に寄り添ってくださると信じています」
ライバルのメルセデス/ハミルトンは前戦サウジアラビアGPでポール・トゥ・ウインを飾り3連勝。そして迎えるヤス・マリーナ・サーキットは、今季シルバーアローが得意とする高速寄りのレイアウトに変更された。
だが、ホンダは最後の瞬間まで決して諦めたりはしない。
ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは今回のレイアウト変更について次のように説明する。
「ヤス・マリーナ・サーキットは新しいコースではありませんが、幾つかのコーナーが改修されるなどコースレイアウトに変更が加えられました。バックストレートの終端にある一連の90度コーナー群がハイスピード・バンクに置き換えられるなど、コース全長は僅かに短くなりました」
「また、その他のコーナーも高速化され、バックストレートに続くヘアピン前のシケインも取り除かれました。これらはオーバーテイクのチャンスを増やす事を目的としたもので、パワーユニットのエネルギー マネージメントも影響を受ける事になります」
「今週末は金曜のフリー走行を通して得たデータに加えて、過去の知見や新レイアウトでの事前シミュレーションによるデータを用いてパフォーマンスを最大限に引き出していきたいと思います」
「言うまでもなく今回のレースは、Honda F1プロジェクトにとっての最後のレースであり、素晴らしいパートナーであるスクーデリア・アルファタウリやレッドブル・レーシングとの最後のレースでもあります」
「更にマックス(フェルスタッペン)とルイス(ハミルトン)は同一ポイントで並んでおり、チャンピオンシップを懸けたハードな一戦ともなります。最後の最後までプッシュし続けたいと思います」
「今年はこれまで、本当に力強く戦い、何度かの素晴らしいバトルもありました。プロジェクトに関わるホンダの全メンバーは『絶対にタイトルを獲る』という強い気持ちを持っていますし、そのために全力を出し切る覚悟です」
「復帰後、我々はファンの方々からの力強いサポートと共にこれまでの道を歩んできました。日曜のチェッカーフラッグまで、皆様が我々に寄り添ってくださる事を願っています」
アブダビGPの戦いの舞台となるのはヤス・マリーナ・サーキット。本大会に向けてコース改修が行われ、全長は5,281mへと273m短くなった。第1・3シケインは各々ヘアピンに変更され、ラップの終盤、ヤス・マリーナ・ホテルの周りの4つのタイトコーナー(ターン17~20)にも手が加えられた。
昨年大会ではレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが堂々のポール・トゥ・ウインを飾り、2位にバルテリ・ボッタス、3位にルイス・ハミルトンと、その後方にメルセデス勢が続いた。
フェルスタッペンとハミルトンは同一ポイントで最終戦へと向かい、2021年シーズンのドライバーズチャンピオンシップにおける最終決戦に挑む。タイトルランナー達が同一ポイントで最終戦を迎えるのは47年ぶり。
F1アブダビGPは、日本時間12月10日(金)18時30分からのフリー走行1で幕を開ける。