辞任に非ず…不可解な時期に「解任」されたヴィティヒ、残り3戦 天王山でのF1レースディレクター電撃交代劇の裏に何が?
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国際自動車連盟(FIA)は公式声明を通して、ニールス・ヴィティヒがF1レースディレクターを”辞任”したと仄めかしたが、独Motorsport-Magazinによると、当人は「辞任していない」と強調した。
FIAは2024年11月12日、ヴィティヒがF1レースディレクターの職を「退任した」と発表した。
明確に「辞任」を意味する表現は使われていないが、ヴィティヒは「新たな機会を追求するため」に職を退いたとしており、自らの意思で職務から離れる決断を下したことが仄めかされていた。
しかしながら、ヴィティヒは「辞任していない」と明言した。報道によると、公式発表の直前に解任を通告されたという。また、同メディアに寄稿するジャーナリストのクリスチャン・ミナースは、ヴィティヒは「解雇」を告げられたと伝えた。
事前に憶測すら挙がっていなかった今回の交代劇は、次戦ラスベガスを含めたシーズン3戦を残した状況であることを踏まえると、極めて不可解な展開と言える。
英Sky Sportsによると、チーム幹部を含むF1の指導的立場にある何名かの人物は、驚きを隠さなかったという。
今回の決定の背景には、ヴィティヒとFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長の意見の相違が原因との情報もあるが、正確なところは明らかではない。
しかしながら、ベン・スレイエムの在任中に退任・退職した上級職は実際、数知れない。スポーティング・ディレクターのスティーブ・ニールセン、テクニカル・ディレクターのティム・ゴス、CEOのナタリー・ロビン等など…そして今度はヴィティヒだ。
レースディレクターはドライバーとFIAの板挟みとなる立場でもある。
ベン・スレイエム率いるFIAに雇用される立場のヴィティヒは、各レース週末に行われるドライバーズ・ブリーフィングで、つい先日、グランプリ・ドライバーズ組合(GPDA)がベン・スレイエムに反発した煽り言葉の問題を含め、様々なテーマについてドライバー達と対話する役割を担っている。
ヴィティヒの仕事ぶりは、例えば前戦サンパウロGPでの赤旗のタイミングを含め、時に問題視されることこそあれ、広く物議を醸すような問題を抱えてはおらず、ましてや即時の交代へと繋がるような重大な出来事があったわけでもなかった。
単にシーズンの最終盤というだけでなく、マックス・フェルスタッペンとランド・ノリスのドライバーズ・チャンピオンシップを含め、両タイトル争いは依然として続いている。
ルールを熟知し、迅速かつ冷静に判断できるレースディレクターが一層求められる状況で、FIA-F2選手権およびF3での経験はあるとはいえ、F1での経験がないルイ・マルケスへの交代に一体どのような合理性があるというのだろうか。
F1レースディレクターに対する要求レベルはジュニア・カテゴリーとは比較にならず、実際、チャーリー・ホワイティングが亡くなって以来、後任選定は困難を極めてきた。
F1レースディレクターの職は複雑かつ政治的な立ち回りをも要求される。この6年間で4人目のレースディレクターとなるルイ・マルケスのプレッシャーは計り知れず、チャンピオンシップ争いへの影響も注目される。