メルセデスとは対照的…レッドブル・ホンダがF1イギリスGPでアップグレードを投入しない理由
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2021年シーズンの行方を占う試金石足るシルバーストンでのイギリスGP。メルセデスは今季最後のアップグレードをW12に持ち込むが、これまで毎週末のように開発物を持ち込み続けているレッドブル・ホンダはRB16Bに大きな変更を加えないとしている。何故か?
イギリス空軍飛行場の跡地に立つこの超高速サーキットは、2014年のV6ハイブリッド時代以降、2018年を除いてメルセデスとルイス・ハミルトンが完勝し続ける牙城であり、イギリス人F1ワールドチャンピオンを擁する英国本拠のシルバーアローにとってのホームレースだ。
その意味でかの地はメルセデスにとって象徴的な場所であり、敗れる事になればチーム全体の士気やモチベーションといった心理面に大きな影響を及ぼしかねず、更にシルバーストンの翌々週末に予定されるハンガリーGPではシーズン前半戦が閉幕を迎える事になる。
トト・ウォルフ代表が説明しているように、チームは次世代シャシーが導入される2022年に向けた開発を加速させる必要があり、リソース配分の観点からメルセデスはこのタイミングでの開発終了が合理的と判断した。
レッドブル・ホンダにとってもシルバーストンはホームレースであり重要な地位を占める週末である事は確かだが、マックス・フェルスタッペンが「イギリスのファンがイギリス人ドライバーを応援している事は承知している」と述べているように、多くはミルトンキーンズのチームではなくブラックリーをサポートしている。
ただ無論、レッドブル・ホンダがアップグレードを控えるのはホーム性云々が理由ではない。レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはMotorsport-Totalとのインタビューの中で変則的なフォーマットを理由に挙げている。
今年のシルバーストン戦は特殊なスケジュールで開催される。通常は3回のフリー走行を通して予選と決勝に向けたセットアップ作業を進める事ができるが、今回は1回の練習セッションの後、すぐに予選が行われる。
「つまり、その時点からパルクフェルメ規制が適用されるのだ」とヘルムート・マルコは説明する。
「ようするにその1時間でセットアップを上手くやらないと週末全体が台無しになってしまう。だからこそ我々は、シルバーストンではマシンに大きな変更を加えず、今あるものをベストな状態でセットアップしようと考えている」
レッドブル・ホンダはオーストリアでの2連戦に大掛かりなアップグレードを持ち込んだ。それは第1レースのシュタイヤーマルクGPの際に既に現地に持ち込まれていたものの、チームは新型ディフューザーを除いて実戦投入を第2レースまで引き伸ばした。
開発パーツから即座にパフォーマンスを引き出す事は容易い話ではない。それが複数ともなれば尚更だ。レッドブルは第1レースの週末にベースラインを作り上げ、このデータを元にして第2レースでアップグレード全体を見事に機能させた。
チームメイトのセルジオ・ペレスに先行して改良型バージボードと連動する新型フロントウイングを搭載したフェルスタッペンは、第2レースのオーストリアGPを史上稀に見る圧勝で制して自身初のグランドスラムを達成した。
最大のライバルが今季の開発競争から降りた今、レッドブル・ホンダは一体いつまでRB16Bの開発を続けるのだろうか?
チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「必要ならば最終アブダビGPまで」と冗談を飛ばしているが、率直なヘルムート・マルコは「あまり具体的なことは言いたくない」と明言を避けている。