角田裕毅、ホンダとアストンを巡るレッドブルの「誤解」を懸念…F1キャリアへの悪影響を不安視
Published:
角田裕毅(アルファタウリ)は、ホンダとアストンマーチンが2026年よりタッグを組む事に関連してレッドブル首脳陣が自らの立場について誤解し、その結果としてレッドブル・ファミリーにおける将来のF1キャリアに悪影響が及ぶことを懸念している。
鈴鹿サーキットレーシングスクールの卒業生として2018年にホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)の育成ドライバーとなった角田裕毅は、ハンガロリンクでのF3テストを経てヘルムート・マルコのお眼鏡に叶い、レッドブルの支援を受ける事となった。以降現在に至るまで両者の支援を受けている。
ホンダはその翌年よりレッドブルにパワーユニット一式を供給。2021年にマックス・フェルスタッペンと共にドライバーズ・チャンピオンシップを制し、同年末を以て撤退するも、技術パートナーという名目で今もレッドブルとアルファタウリの事実上のPUサプライヤーを続けている。だが、それも2025年末までの話だ。
電動出力が50%に引き上げられ、100%持続可能な燃料が導入される2026年以降、ホンダはレッドブルとの関係に終止符を打ち、アストンマーチンと新たな道を歩む。これが角田裕毅の立場を複雑なものにしている。
英「The Race」によるとカタールGPの開幕を控えた木曜のロサイル・インターナショナル・サーキットで角田裕毅は、「何よりもレッドブルを誤解させたくないと思っています。例えば僕が今、アストンマーチンに焦点を合わせているといったような誤解です」と語った。
「僕はアルファタウリに所属していて、18歳の時からレッドブルと一緒にいます。僕はレッドブルのために良いパフォーマンスを発揮しようと集中しているわけで、アストンマーチンなど、その他のチームのためではありません」
「彼ら(レッドブル)がそういった誤解を抱かず、僕の将来のことを真剣に考えてくれる事を願っていますし、僕が他のドライバーより優れたパフォーマンスを発揮した場合、もっと考慮してもらえればと思っています」
今季前半戦の角田裕毅はグリッドの中で最も力強いドライバーの一人と評価されていた。チームをリードすると広く目されていた僚友ニック・デ・フリースを完膚なきまでに打ち負かし、パドックにおける自身の評価を一変させ、将来に向けて有望な一歩を踏み出したかに思われた。
ただ、ハンガリーGPを境に潮目が変わった。隣のガレージには8度のグランプリ優勝経験を持つダニエル・リカルドがレッドブル・ファミリーのレースドライバーとして復帰し、骨折により負傷したリカルドの代役としてリアム・ローソンは、新人離れした走りを披露して結果を残すなど、強烈な印象を与えている。
シート喪失が囁かれる2025年のセルジオ・ペレスの後任としてレッドブルは、角田裕毅ではなくリカルドに白羽の矢を立てていると見られており、また、早ければ2024年にもローソンにシートを与える構えを見せている。
レッドブルを誤解させる要因として角田裕毅は、ホンダとアストンの提携に言及し「僕がもうアストンマーチンに行くと思っているため、レッドブルは僕を昇格させたくないと思っている、等といったものをソーシャルメディアで目にしました」と語った。
「単なるソーシャルメディア上での話なので、それ(レッドブルが昇格を望んでいないこと)が本当かどうかは分かりません。ただそれ(アストンマーチンへの移籍が保証されていること)は事実ではありません」
「いずれにしても僕としては兎に角、自分のパフォーマンスを発揮して彼らを納得させ、レッドブルに相応しい事を示せるようにならなければなりません」
今年5月のアストンとの提携発表会見の中でHRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長は、角田裕毅がアストンの2026年F1シート候補に入る事を望んでいると認め、アストンマーチン・パフォーマンス・テクノロジーズCEOのマーティン・ウィットマーシュは「彼は候補として検討されるべきだ」と述べた。
ただ角田裕毅によれば、ホンダ側が望んでいるのはあくまでも角田裕毅個人としての成功であり、どのチームに身を置くかについては気にしていないという。
「ホンダ側は、僕が成功しさえすれば、どこに行こうが構わないと考えているのだと受け止めています。彼らが望んでいるのは僕が日本人ドライバーとして成功することであって、もちろん一緒に仕事をして成功できれば幸運なことではありますが、結局のところ、彼らはそんな事を気にしていません」と角田裕毅は語る。
「どのチームにいても気にしない。ホンダのそういうところが僕は本当に好きなんです」
レッドブルか、それともアストンマーチン・ホンダか。いずれにしても、その夢を掴むために角田裕毅に更なる結果が求められているのは間違いないだろう。両者はいずれもアルファタウリとは異なり、優勝争い、タイトル争いが求められるトップチームだ。
ペレスの座るレッドブルのシートはもとより、ワークス体制となるアストンのシートは間違いなく高騰する。そして2024年のドライバーズ・マーケットは近年稀な活況を帯びる事になる。
来季はアストンの現ドライバーであるフェルナンド・アロンソに加え、フェラーリのシャルル・ルクレールとカルロス・サインツ、アルピーヌのエステバン・オコンとピエール・ガスリーを含む多くのドライバーが契約の満了を迎える。更に2025年にはランド・ノリスが市場に出る。
トップチームの席を争うためにはトップドライバーと見なされる必要がある。潜在的なライバルはいずれも非常に手強い。