角田裕毅、密かに抱く”王者”との争い「100%間違いない」2024年に向けRBの飛躍確信も一方では大観
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ビザ・キャッシュアップRBの角田裕毅は2024年シーズンの開幕に向け、昨年のダブルチャンピオンチーム、レッドブル・レーシングと争えるようになる事を期待していると語る一方、チームが置かれた状況を冷静に捉え、大局を見据えている。
ファエンツァのチームは「アルファタウリ」としての歴史に終止符を打ち、「RB」の名の下に新たな章をスタートさせる。
プロジェクトを率いるのはフランツ・トストに代わってチーム代表に就任した元フェラーリのスポーティング・ディレクター、ローラン・メキーズと、昨年新たに最高経営責任者(CEO)に着任したピーター・バイエルだ。
また、チームは2024年に向け、副テクニカルディレクターとして元レッドブルのチーフデザイナー、ギヨーム・カテラーニを、そしてレーシング・ディレクターとして34年以上のF1キャリアを誇る大物エンジニア、アラン・パーメインを迎え入れた。
更に今年10月には新設の最高技術責任者(CTO)として、マクラーレンで5度の世界タイトル獲得に貢献したティム・ゴスがチームに合流する。数々の大物の加入は角田裕毅を含め、チームに活気と大きな期待を与えている。
F1特派員兼プレゼンターを務めるローレンス・バレットとのインタビューの中で角田裕毅は、経験豊富なキーマン達の加入に触れて「新しい血は僕の成長を促してくれると思いますし、より良いドライバーになるための知識を与えてくれると思います」と語った。
「特にアラン(パーメイン)に関してはルノー時代にタイトルを獲得していますし、こういった勝利に対するマインドセットは僕らのチームに間違いなく必要なものだと思います」
トロ・ロッソ、アルファタウリ時代を通してファエンツァのチームが表彰台の頂点に立ったのは2レースのみで、昨年はコンストラクターズ選手権8位が精一杯であった。
角田裕毅の口から飛び出した「勝利に対するマインドセット」というワードは、リブランドを経てチームが、これまでであれば想像し得なかった高みを見ている事を示唆するものだと言える。
「僕らが目指しているのは単にトップ10に入ることだけではありません」と角田裕毅は笑みを浮かべる。「ある時点でレッドブルと戦うことができればと思っています。上手くいくと思いますし、上手くやれると思っています」
創設当初から17年に渡ってチームを率いてきたトストを含めて幹部の顔ぶれが大きく変わるなどファエンツァのチームは今、カスタマーカーの禁止に伴いマシンの内製化を強いられ、大量の人材を雇入れ開発部門を立ち上げるなどした2010年以来となる激動の時を迎えている。
しかしながら角田裕毅は、個人的にはニック・デ・フリース、リアム・ローソン、ダニエル・リカルドと、チームメイトが3名も入れ替わった異例とも言うべき昨年の経験が新しい環境に適応するうえでの「良いトレーニング」になったとして、今のところ「驚きも混乱もない」と述べ、上手く適応できていると説明した。
チーム内に漂う前向きな雰囲気を作り出しているもう一つの要素はレッドブル・テクノロジーとの協力関係の進化だ。これにはプルロッド式に変更されたフロント・サスペンションや、空力を含む一部の部門が置かれていた英国ビスターからミルトンキーンズ(レッドブルの本拠)への拠点の移転などが含まれる。
グランドエフェクトカー時代を席巻するシニアチームとの密接な協力は当然、競争力あるパッケージへの期待に繋がる。
リカルドは今季の目標について「トップ5」を挙げ、更には「表彰台」という野心的な言葉を口にしたが、角田裕毅の方はやや控えめ、より現実的な「トップ8争い」を見据えている。
他チームとのコラボレーションが規定で制限されている事に触れたうえで角田裕毅は「どれだけ緊密に協力できるかはこれからだと思いますが、それでもウイニングカーから知識が得られるというのは間違いなくポジティブなことです。そういった経験や知識がコンマ数秒のプラスになって、トップ8のクルマと戦えることを期待しています」と語った。
シェイクダウンはもちろん、未だシミュレーターにも乗っていないため、角田裕毅は2024年型「VCARB 01」が実際にどれだけ速いのかは未知数だとする一方、新生RBが「次の大きな一歩」を踏み出せる場所にいるのは「100%間違いない」とも強調した。
とは言え、すぐさま競争力を発揮できるとは考えていない。
「広範な変化とビッグネームの加入によって期待は高まっていますし、これによってチームには更なる経験がもたらされる事になりますが、同時に最高の仕事をするためには一つのチームとしてまとまること、皆が気持ちよく仕事に取り組める環境が必要です」と角田裕毅は語る。
「なので、そうなるには少し時間がかかると思いますし、初戦から最高のシーズンが過ごせるとは思っていません」
「僕もローラン(メキーズ)もより現実的になろうとしています。シーズンの序盤は主に、新しく加わった人たちがチームに馴染む期間として捉えていて、今は兎に角、基盤を作ること、将来に向けて強力な土台を築くことに集中しています」
「クルマに速さがあることを願ってはいますが、初戦については特に期待しているものはありません」