レッドブルの「政治的要素と力学の変化」に触れる角田裕毅、昇格難航の裏に何が…一方で見せる活躍への自信の裏付け
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シニアチームへの昇格を巡って角田裕毅(RBフォーミュラ1)は、自身がレッドブル上層部から過小評価されていると長らく感じてきたが、その不満は徐々に臨界点に達しつつあるようだ。
角田裕毅は2021年のデビューから一貫してレッドブルの姉妹チームに所属しており、3シーズン目以降は安定的に高いレベルのパフォーマンスを発揮。チームメイトを上回る成績を残しているが、レッドブルへの真剣な昇格候補として検討されたことはない。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは角田裕毅にチャンスを与えることに前向きと見られているが、チーム代表のクリスチャン・ホーナーを含む他の上層部は、否定的な立場にあるとされている。
半信半疑の評価テスト、昇格への障壁
ハースやアルピーヌとの熾烈なコンストラクターズ選手権6位争いの中で行われた前戦ラスベガスGPで、角田裕毅は非常に印象的なパフォーマンスを見せた。
FP1で苦しい状況に直面しながらもこれを乗り越え、予選では格上のマクラーレンを駆るオスカー・ピアストリを上回る7番手を記録。9位でレースをフィニッシュして2ポイントを獲得と、ほぼ完璧な週末を過ごした。
F1カタールGPを前に、昇格に向けて他に何ができると思うか? と尋ねられた角田裕毅は、「そうですね…今年の開幕戦からシーズンを通じて結果を残し、自分の完成度をレッドブルに示してきたと思っています。これまでの自分の仕事にはかなり満足していますし、レッドブルもそのことを認識していると思います」と困惑した様子を見せた。
「同時に(昇格に関する事柄は)僕がコントロールできることではありませんので、兎に角、自分のパフォーマンスを最大限に発揮し、今やっていることを続けていき、その結果を待つしかありません」
アブダビでのシーズン最終戦後に角田裕毅は、ヤス・マリーナ・サーキットで初めてレッドブルRB20をドライブする。このテストについてマルコは、2025年のマックス・フェルスタッペンのチームメイトを決める材料になるとしているが、角田裕毅は半信半疑だ。
英The Raceによると角田裕毅は「これまでのシーズンを通してレッドブルが僕をどう見ているかを考えると、テストはあくまでテストに過ぎないと感じています」と語った。
「テストが、ドライバーとしての僕の印象やイメージを少しでも良くするきっかけになればと願っていますが、シートに関する議論に加わるには、次の2戦の方が間違いなく重要だと思います」
「たとえ彼らがインタビューで、『ユーキは候補に入っている』と言ったとしても、それが本当かどうか、僕には分かりません。候補に入っていることを願ってはいますが、もしそうでないなら、これ以上、何をすればいいのか分かりません」
さらに角田裕毅は、自身がレッドブルに昇格した場合、「間違いなくコンストラクターズ選手権でより上位をかけて争える」と自信を見せる一方で、「政治的な要素」が昇格の妨げになっている可能性に触れ、現状に対する不満をにじませた。
また、レッドブルのドライバー昇格人事に関わるこれまでの歴史を引き合いに出し、パフォーマンス面でチームメイトを上回れば昇格するのが自然な流れだったとして、レッドブル内部の「力学」が変化した可能性に言及した。
「もしかしたら、力学が変わったのかもしれません。マテシッツさん(レッドブル共同創業者のディートリッヒ・マテシッツ)が亡くなった後、レッドブル自体が変わったのかもしれません」と角田裕毅は語った。
「それでもレッドブルのドライバーの一人はドライバーズチャンピオンを獲得していますし、チームは長い間、成功を収めてきたわけで、彼らがやっていることが悪いとは思いませんが、僕がこれまであまり議論の対象にならなかったことは、あまり納得できるものではありません」
レッドブルでの活躍、その自信の裏付け
2025年に向けてレッドブルのドライバーラインナップが注目を集めているのは、セルジオ・ペレスが慢性的な成績不振に陥っているためだ。ペレスは今季、コンストラクターズ選手権でチームに全く貢献できておらず、フェルスタッペンとの大差が問題視されている。
フェルスタッペンはシーズン2戦を残したラスベガスGPで総ポイントを403点に伸ばし、4年連続のチャンピオンを確定させた。一方のペレスは152点でランキング8位に留まっており、明らかにフェルスタッペンに遠く及んでいない。
この圧倒的な差については、RB20の扱いにくさや競争力不足が指摘されることもあるが、角田裕毅はアブダビでのテストに向けてレッドブルのマシンをシミュレーターで試した経験を基に、これに異を唱えた。
昇格の暁にはコンストラクターズ選手権争いで「間違いなくレッドブルに貢献できる」とする角田裕毅の自信の裏には、レッドブルのマシンが自身に合っているとの感触があるようだ。
「僕らのクルマと比べると、コーナーで維持できるスピードやターンインの鋭さが兎に角、本当に素晴らしく感じました」と角田裕毅は語った。
「少なくともシミュレーターで体験した限りでは、僕に合わないマシンだとは思いませんでした。むしろ、自分にすごく合っていると感じました」
仮にレッドブルがペレスの続投を決断した場合、角田裕毅の昇格の可能性はさらに遠のくことになる。一方で、リアム・ローソンやフランコ・コラピントといった他の候補が選ばれた場合、レッドブルでキャリアを追求することが角田裕毅にとって最善の選択肢であるかどうか、さらに疑問が生じるのは間違いない。