佐藤琢磨、角田裕毅の苦戦理由を読み解く…F1での成功疑わず
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2002年から2008年まで最高峰シングルシーターに参戦した史上7人目の日本人フルタイムF1ドライバーであり、2度のインディ500ウィナーである佐藤琢磨は同郷の角田裕毅の才能を強く信じており、F1での将来的な成功を疑っていない。
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコもまた角田裕毅の才能を高く評価し、僅か1年のFIA-F2選手権を経て今季よりF1に昇格させる事を決断した。
パンデミック下での様々な制約というハンデを負いながらも、角田裕毅は開幕バーレーンGPでいきなり入賞を飾るなどパドックの驚きを誘うパフォーマンスを度々示す一方、初歩的なミスで幾度もクラッシュを喫したりと経験不足が露呈する場面も少なくない。
比較対象となってしまうのが若手随一の評価を受けるグランプリウィナーのピエール・ガスリーであるという点も苦戦を印象づけてしまう要素だ。アルファタウリ・ホンダの総獲得ポイントの75%はガスリーが持ち帰ったものであり、ハンガリーGPまでの11戦で角田裕毅はチームメイトに予選全敗を喫している。
人事権を掌握するマルコは、原則として来季も角田裕毅をアルファタウリ・ホンダに残留させる意向を示しているが、その寵愛を維持するために結果を改善する必要がある事は確かだろう。今の角田裕毅に足りない要素は何なのか?
佐藤琢磨は8月10日公開のポッドキャスト「In the Fast Lane」の中で、角田裕毅が必要としているのは何よりもまず経験だと指摘した。COVID-19の影響で今のF1ではテストやフリー走行でのトラックタイムが大きく制限されており、新人ドライバーが現行F1マシンの習熟を深めるのは容易ではない。
「彼は驚異的なスピードを持つドライバーですが、まだ20歳に過ぎず、今の彼が置かれている状況を考慮しなければなりません」と佐藤琢磨は語る。
「同じルーキーにはミック・シューマッハがいますが、彼の場合、チームメイトはルーキー(ニキータ・マゼピン)です。一方の裕毅はピエール(ガスリー)という最速の若手ドライバーと対峙しなければなりません」
「(そのドライバーの能力を計る上で)F1におけるチームメイトという存在は対戦相手としての物差しであって、適正とは言えないものの、おそらくチーム外の人達にとっては唯一の判断材料となります」
「チームは裕毅に能力がある事を知る立場にありますが、誰にポテンシャルがあるのかを部外者が判断するのは本当に難しいのです。ですが僕は、裕毅がF1で成功を収めるための非常に大きな可能性を秘めていると信じています」
「率直に言って彼には多くの経験が必要です。僕がF1にいた頃は、バルセロナやヘレス等、ほぼ毎週のようにウインターテストが行われていました」
「シーズン途中でさえ、サードドライバーやテストドライバーに頼らなければならない程でした。というのも、あちらこちらを飛び回るレースドライバーにとって大きな負担だったからです」
「周回数やタイヤテスト、計測ラップの量で言えば、おそらく今の裕毅が経験している10倍近い量だったと思います」
「こう言ってしまうのは公正ではありませんが、彼は非常にチャレンジングな時間を過ごしています」
「一旦この環境に慣れて自信を取り戻したら、日本GP前の2、3のレースを堅実に戦えば良いと思います。僕が2002年に経験したように(日本GPでは)彼には大きなサポートがあるでしょうから」
「そうすればスピード、一貫性、強さ、すべてを兼ね備えた状態でレースに臨む事ができるはずです。ですから我々は忍耐強く待ち、彼をサポートしていくべきです」