敗者ベッテル、チームの論理に従う事を強要された宿敵メルセデスの二人を擁護「ハミルトンとボッタスは良い仕事をした」

2018年F1ロシアGPで表彰台に上がったセバスチャン・ベッテルとルイス・ハミルトン、バルテリ・ボッタスの3人copyright Mercedes

メルセデス陣営内の誰もが、自らが発したチームオーダーを心の奥底で後悔している一方で、そのチームオーダーによってチャンピオンシップで窮地に立たされたフェラーリのセバスチャン・ベッテルは、その決断に理解を示し、チームの論理によって落ち込み、気不味い空気となってしまった宿敵の二人を擁護した。

恐ろしくオーバーテイクが難しいソチ・オートドロームでのレースをポールポジションからスタートしたバルテリ・ボッタスは、自身2度目のロシアGP制覇に向けて順調にレースを展開していたものの、チームから後続のルイス・ハミルトンを前に行かせるよう指示された。

ボッタスにこれを拒否する権利などあろうはずもなく、25周目にチームメイトに道を譲った。その結果、ハミルトンは20得点を得てチャンピオンシップポイントを306に伸ばし、タイトル争いを繰り広げるベッテルに対して、50ポイントという今季最大のギャップを築いた。

レース後のプレスカンファレンスでは、シルバーアローのチーム戦略の是非についてハミルトンとボッタスに質問が集中。答えに窮する二人を脇に、その様子を伺っていたベッテルは、宿敵をかばってみせた。

「彼らの立場に立って考えれば、今日彼らがした事は特に気にするような事じゃないと思う。そういった質問を投げかけるのは適切じゃないかもね。僕らとしては全力を尽くしたけど、ルイスの前でフィニッシュ出来る可能性はほんの僅かだったよ」

「今日はガチンコのバトルが出来るような状況でもなかったし、僕らとしては確実に3位でゴールする事が目標だった。もちろんまだチャンスはあると思ってる。そうだね、確かに可能性は少なくなってきてるけど、例えば1度リタイヤするだけで全ての状況がガラッと変わる事になる。理想的には2回程DNFがあると良いね!いや、ルイスがそうなれば良いのにって言ってるわけじゃないよ」


© Ferrari S.p.A.、質問に答えるベッテル

「でも、この先何が起こるかなんて誰にも分からないんだから、出来る限りの結果を残し続けて選手権争いに留まり続けなきゃならないんだ。確かに今週末の僕らは完璧にやれてたわけじゃないかもしれない。でも、残されたレースで勝利するために、これから気を引き締め直して全力を尽くすよ」

「一戦一戦を戦うだけさ。僕は数学の天才じゃないけど、今後の選手権で何をしなきゃならないかを理解出来る程には十分賢い男だよ。ポイントを失ってしまったら難しくなってしまう。メルセデスの二人は良い仕事をしたと思う。彼らは一つのチームとして一丸となってレースをしたんだ」

チームからの”命令”によって勝利を捨てる事を強要されたボッタス。欲しくもない勝ち星を上げる事を求められたハミルトン。ベッテルは同じレーシングドライバーとして、二人の気持ちが痛いほど良く分かったのだろう。記者会見前の控室が不穏な雰囲気に溢れる中、その様子を肌で感じたベッテルは、国際放送を捉えるテレビカメラに向かってタオルを投げた。

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