ランド・ノリス、初優勝を逃した雨のステイアウト…判断を誤ったわけではない?
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マクラーレンのランド・ノリスはF1ロシアGPの終盤に雨が振り始めた際、スリックタイヤを履き続けた事で確実視されたキャリア初優勝を逃した。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)と同じ周にインターミディエイトに履き替える判断を下していれば、レース後のノリスには満面の笑みがあったかもしれない。だが本人は判断を誤ったとは考えていないようだ。
チーム代表のアンドレアス・ザイドルが「後知恵でどうすれば良かったのかを判断するのはいつだって容易い」と語る通り、結果を知った上で当時の決断を評価する事は簡単だ。
結果と決断の間に時間の隔たりがある以上、そこから偶発的要素を取り除く事はできない。そのため、結果のみから決断を評価する事はあまり意味をなさない。
ポールポジションからスタートしたノリスは1周目にカルロス・サインツ(フェラーリ)にリードを奪われたものの、13周目にトップの座を奪取。その後はハミルトンを抑えながら首位を維持してレース終盤を迎えた。
47周目に雨が路面を濡らし始めた際、雨は小降りで、ノリスはラップタイムを12秒程落としながらもスリックでコースを走り続けた。ポイント圏外で失うものがない者の中には、早くもその周にインターミディエイトに履き替える者もいた。
12秒ダウンというのはインターミディエイトを履いたチームメイトのダニエル・リカルドと同程度のラップタイムだ。つまり”この状況が続く限り”コース上に留まった方が有利である事は間違いなく、勝利はまだノリスの手の内にあった。
だが53周のレースの51周目に事態は急変する。雨量は一気に激しさを増し、コースはインターが巻き上げる水しぶきで白く曇った。
既にスリックで対応できるコンディションではなく、ノリスはスピンを喫してピットへと向かった。そしてそんな悲劇的なシーンの2周前にインターに履き替えたハミルトンが逆転優勝を飾り、ノリスは7位に転落した。
ノリスは当時の状況を「たった1周で全てが一変したんだ。ゲームが完全に変わってしまった」と振り返った。
「ルイスがピットに入った最後の周でさえ、コンディションはスリックだった。あのラップでチームから『インターに変えたいか』って聞かれたけど、そうしなかった。スリックタイヤが正解だったからさ」
「もちろん、今から振り返ってみればその判断は間違っていたわけだけど、僕は雨が強まっていくなんて知らなかったんだ。チームから雨がもっと降るって言われない限り、僕には知る術がない。でも彼らはそうは言わなかった」
「僕はステイアウトする決断を下した。なぜならチームは小雨が降り続けるだけと言っていたからだ」
口では「間違っていた」と言うものの、ノリスは判断を誤ったとは考えていないようだ。”雨脚が強まる”という情報を得ていて、それでもなおステイアウトを選択したのであれば”判断を誤った”と見做すのだろうが、そうではなかった。
ノリスは、与えられた情報と自身がコース上で集め、そして感じた情報から導き出される最適解が”ステイアウト”であった事は疑いないと信じており、問題は、判断材料とした”チームからもたらされた情報”にあったと考えている。
そして今回は問題として顕在化する事はなかったものの、レース中に戦略的決断を下す際のコミュニケーション作法についても見直す必要があると考えている。
ノリスは「僕が知っていた情報の内容から言えば、僕らがやった事はギャンブルじゃなかった。そもそも賭けるような状況じゃなかったんだ」と語る。
「雨が降っているコーナーもあれば、そうじゃないコーナーもある状況だった。スリックタイヤを履くのが正解だったんだ。だからギャンブルじゃなかった。ベストなタイヤを履いていたんだから」
「結果としては、僕が聞かされていた以上、あるいはチームが把握していた以上の雨が降る事になった。ただ彼らが知っていたとしても、僕にピットに入れとは言わなかっただろう。この点については話し合うつもりだ」
「僕らはその時点でベストだと考えていた事をやっていたわけで、チームを責める事はできない。僕は彼らの決定と自分の決断を支持しなきゃならない。その上で僕らはそれについて見直すつもりだ」
「(優勝を逃したのは)僕がクラッシュしたからでも、何か愚かな事をしたからでもない。F1でのベストリザルトを残せた可能性があり、レースウィナーになれたかもしれないからこそ辛い」
「最終的に7位に終わってしまった。ガッカリしているとか、何か愚かな事をしてしまったというよりも、虚無感とか悲痛感みたいなものを感じている」
なお最終盤のピットインの際にピットエントリーとコースとの間の白線をまたいだとして審議になっていた件については、スチュワードが叱責処分とする裁定を下した事でノリスの7位が確定した。