F1:レッドブル・ホンダがピエール・ガスリー再昇格を除外する理由…ではペレス起用の可能性は?
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モンツァでのキャリア初優勝によって、レッドブル・ホンダへの再昇格に注目が集まるピエール・ガスリーだが、英ミルトンキーンズのチームを率いるクリスチャン・ホーナー代表は、ガスリーのレッドブル・ホンダ復帰の可能性を除外した。
ガスリーはトロロッソでの成功を経て、2019年シーズンにレッドブル・ホンダへの昇格を果たしたものの、成長のための時間が与えられる事はなく僅か12戦後に古巣への出戻りを命じられた。
だが、ガスリーの後任としてシートを得たアレックス・アルボンは、僚友マックス・フェルスタッペンに予選・決勝共に遠く及ず、対照的に降格となったガスリーは、ファエンツァのチームと共に大きく成長を遂げつつあるように見える。
こうした背景から、イタリアGPでの劇的勝利以降、ガスリーが将来的にレッドブル・ホンダに復帰する可能性が論じられているが、クリスチャン・ホーナーはガスリーのパフォーマンスを称賛する一方で、アルボンを続投させていく意向を明らかにした。
© Getty Images / Red Bull Content Pool、2020年F1イタリアGPでの優勝を祝って記念撮影に臨むピエール・ガスリーとアルファタウリ・ホンダのメンバー
F1トスカーナGPのFIA公式プレスカンファレンスに出席したクリスチャン・ホーナーは、ガスリー復帰の可能性について問われると次のように答えた。
「ピエールは素晴らしい仕事をしていると思う。トロロッソ、つまり今のアルファタウリに戻ってからの彼は自信を取り戻し、信じられないほど良い走りを披露している」
「それにアルファタウリの方も彼と共に見事な仕事をやってのけており、両者が上手く噛み合っているのが見られて私は満足している」
「レッドブル・レーシングのシートに関してだが、我々はアレックス・アルボンに絞っており、シートを維持するための最高のチャンスを彼に与えたいと考えている。マシンには取り組むべき問題があり、個人的に言えばドライバー交換は的を得ないと考えている」
もはや”Bチーム”ではないアルファタウリ
クリスチャン・ホーナーがガスリーをアルファタウリ・ホンダに留めておきたい理由の1つは、それが「トロロッソ」ではなく「アルファタウリ」であるから、のようだ。
スクーデリア・トロロッソはレッドブル・レーシングのための若手ドライバー育成チーム、つまりインキュベーターであった。だがリブランドによって、今はファッションとしての「アルファタウリ」のプロモーション装置としての機能が求められている。つまり、従来とは異なり好成績を上げなければならない。
© Red Bull Content Pool
「アルファタウリは今や、”ジュニアチーム”ではなく”姉妹チーム”となったのだ」とクリスチャン・ホーナーは続ける。
「フランツ(トスト代表)はピエールに満足しているだろうし、つまり…ドライバーラインナップの最終的な決定時期は今年の後半になると思うが、我々の側から交代を推進することはない」
「アルファタウリは今シーズンに向けて新しくリブランドされたチームだ。彼らが目指す場所は、トロロッソ時代のそれを超えている」
クリスチャン・ホーナーの隣に座っていたアルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表は、次のように補足する。
「我々はアルファタウリのブランドアンバサダーであるため、良いパフォーマンスを発揮しなければならない。そうでなければアルファタウリがF1に留まる意味がなくなってしまう」
「クリスチャンが言っていたのは、我々はパフォーマンスを向上させなければならない立場にあるという事だ。実際我々は競争力を高めているし、モンツァでの勝利はその証明だ」
セルジオ・ペレス起用の可能性は?
セバスチャン・ベッテルの2021年アストンマーチン移籍の決定に伴い、ドライバーマーケットには経験豊富なセルジオ・ペレスが放出された。クリスチャン・ホーナーが認めるようにRB16には解決すべき問題が残っており、アルボンの成長を待つよりもベテランの力を借りるのが手っ取り早い。少なくともアルボンが現在の力量に留まるようであれば、コンストラクターは勿論、フェルスタッペンのドライバーズタイトルへの挑戦も期待できない。
レッドブルは伝統的に育成傘下の若手ドライバーをトロロッソで起用し、荒波に揉まれて将来性を発揮した者をレッドブル・レーシングに登用する仕組みを貫いてきた。だが、インキュベーターとしてのトロロッソは消滅し、今のアルファタウリには実力が求められるなど、従来の関係性に変化が生じた。
© Racing Point
レッドブルが直接、外部のドライバーを起用する可能性はあるのだろうか? 例えばペレスはどうだろうか? そう問われたクリスチャン・ホーナーは次のように返し、必要に応じてジュニアドライバー以外にも目を向ける可能性に言及した。
「我々は常に、若い才能を育てることを優先してきた。セバスチャン・ベッテルにしても、ダニエル・リカルドにしても、マックス・フェルスタッペンにしても…彼らはみんなジュニアプログラムを経て、フランツの指導を受けてきた。そしてレッドブルでは常に良い成績を収めてきた。だからこそ我々は、自らが育て上げた才能を一貫して優先しているのだ」
「だが、もしも”プール”に十分な大きさがないのであれば、当然、時にはプールの外に目を向けることも必要だ。だが我々は、自分達のタレントプールを使って仕事をする事を第一に考えている」
レッドブルの”プール”には、数多くの才能あふれる若手に交じってレッドブルとホンダ双方からのバックアップを受ける角田裕毅が控えている。角田裕毅は今季よりカーリンからFIA-F2選手権に参戦。早々に2勝を挙げて現在ランキング4位につけており、日本だけでなく世界中のメディアの注目を集めつつある。
トストはシーズン後のアブダビテストで角田裕毅を起用する意向を示し、また、モータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、今季中にスーパーライセンスを取得させるべくF1フリー走行の出走すら視野に入れており、ダニール・クビアトと角田裕毅本人の今季の成績次第で2021年にアルファタウリ・ホンダからF1デビューを飾る可能性がある。