レース中に嘔吐、失神寸前、脱水症状…一線を越えたF1カタールGPの”拷問”

パルクフェルメで汗を拭うレース優勝者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2023年10月8日(日) F1カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

レース中にヘルメットを被ったまま嘔吐したり、激しい脱水症状によりリタイヤを余儀なくされたり、レース後にクルマから降りようとして失神しかけるなど、2023年10月8日に行われたF1カタールGPの過酷さは明らかに一線を越えていた。

ナイトレースにも関わらず、日曜夜のロサイル・インターナショナル・サーキットは高い湿度と30℃を超える気温に見舞われ、コックピット内の温度に影響を与える路面温度は40℃近くにまで達し、レース中に36℃を下回る事は一度もなかった。

Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2023年10月8日のF1カタールGPの気温と路面温度の変化

高速コーナーが連なるロサイルのレイアウトによる強烈な横Gはドライバーを容赦なく襲い、事実上の3ストップ戦略が義務付けられた事もありドライバーは常にプッシュする必要を迫られた。

他車との直接的なバトルがなく、その意味においては最も身体的に負荷が少ない、ポール・トゥ・ウインで今季14勝目を飾ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)でさえ、クルマを降りるとパルクフェルメに座り込み、この状況について「許容されるべき限界に達した」と意見した。

7位でポイントを持ち帰ったエステバン・オコン(アルピーヌ)は英「Sky Sports」とのインタビューの中で「15周目か16周目には吐いていた」と明かし、「これまでにこんな経験をした事はない。2レース分の距離を走れるようトレーニングを欠かしていないけど、今日は兎に角、熱風がすごかった。クルマの後ろのエンジンからのね」と説明した。

「特にコックピットの気密性が悪かったんじゃないかと思う。クルマの中は80℃位に達していたはずだ。来年は12月の開催だから助かるよ」

Courtesy Of Alpine Racing

ランド・ノリス(マクラーレン)の前方を走るエステバン・オコン(アルピーヌ)、2023年10月8日F1カタールGP

レース中にステアリングから手を離し、コックピット内に風を呼び込むような素振りを見せていたジョージ・ラッセル(メルセデス)は「これまでに経験した中で最も体力が削られたレースだった。失神しそうになった。こんなの初めてだ」と振り返った。

「レース中ずっとバイザーを開けていたから熱風が吹き込んでいたけど、やらないよりはマシだった。あれは残忍だった」

レースを走り切れなかった者もいる。週末前の段階から「インフルエンザのような症状が出て衰弱」していたローガン・サージェント(ウィリアムズ)は、「激しい脱水症状」により57周のレースの40周目にリタイアした。

チームメイトのアレックス・アルボンも「急性の熱中症」に見舞われサージェント共々、レース後にメディカルセンターを訪れ検査を受けた。幸いにもいずれも問題無しと判断された。

Courtesy Of Williams

レース前のグリッドでクルマに乗り込むローガン・サージェント(ウィリアムズ)、2023年10月8日F1カタールGP

トラックリミットにより2度の5秒ペナルティを受けた原因についてランス・ストロール(アストンマーチン)は、気を失いかけて「縁石さえ見えなくなった」事が一因だと主張し、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)はこの状況を「拷問」と形容し、ランド・ノリス(マクラーレン)は「危険過ぎる」と訴えた。

これまでカレンダーの中でフィジカル的に最もキツイのはシンガポールとされていたが、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、「言葉にするのが難しいけど、シンガポールの2倍くらい厳しいレースだった」と語った。


2023年F1第18戦カタールGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季14勝目をポール・トゥ・ウインで飾った。2位はオスカー・ピアストリ、3位はランド・ノリスと、前戦日本GPに続きマクラーレンがダブル表彰台に上がった。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは現地10月16日のフリー走行1で幕を開ける。

F1カタールGP特集

この記事をシェアする

関連記事

モバイルバージョンを終了