F1新車解説:メルセデスの2022年型「W13」未踏9連覇に向け進化した”細マッチョ”

メルセデスの2022年型F1マシン「W13」のフロア前縁に設けられたベンチュリートンネルと4枚のベーンCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

前人未到のコンストラクターズ選手権9連覇を目指すメルセデスの「W13」は、これまでに発表されたライバルチームのクルマとは異なり、ある意味で新鮮味がない。プロトタイプっぽさが感じられないのだ。全く異るマシンながらも前季型「W12」のように、W13は既に洗練され完成された印象を感じさせる。

サイドポッドの形状やフロントウイングの各エレメントのライン、ウィッシュボーンの形状やブレーキダクト等、以下の写真で明らかなように、レンダリングイメージと新車発表展示モデル及びシェイクダウンで使用されたローンチモデルは大きく異る。ここでは実車画像を通してW13の特徴を追っていきたい。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデスの2022年型F1マシン「W13」のレンダリングと実車の比較

フロントウイング、ノーズ

フロントウイングの羽はライバルと同じく上限いっぱいの4枚構成で、マクラーレン「MCL36」やアストンマーチン「AMR22」とは異なり、ノーズは2枚目ではなく1枚目と一体化されている。鼻先はすぼまる形状ながらもフェラーリ「F1-75」程ではない。

だが、ウイングの形状は車両中心線にほど近い場所から中央付近に掛けて急激にせり上がり、その後エンドプレートに向かって緩やかに傾斜している。

copyright Formula1 Data

2022年F1マシンのフロントウイング及びノーズ比較:マクラーレンMCL36、フェラーリF1-75、メルセデスW13、アストンマーチンAMR22

サスペンション

サスペンションはフェラーリ、アストン、アルファタウリ、ウィリアムズと同じくフロントにプッシュロッド式、リアにプルロッド式を採用した。異端はマクラーレンとアルファロメオという事になりそうだ。

2022年F1マシンのサスペンション
マシン フロント リア
メルセデス「W13」 プッシュロッド プルロッド
フェラーリ「F1-75」 プッシュロッド プルロッド
アルファタウリ「AT03」 プッシュロッド プルロッド
マクラーレン「MCL36」 プルロッド プッシュロッド
アストンマーチン「AMR22」 プッシュロッド プルロッド
アルファロメオ「C42」 プッシュロッド プッシュロッド
ウィリアムズ「FW44」 プッシュロッド プルロッド

copyright Formula1 Data

メルセデスの2022年型F1マシン「W13」の前後サスペンション(フロント:プッシュロッド、リア:プルロッド)

ロールフープ、インダクションポッド

ロールフープは楕円形状のダクトの中にA型が収まる先代踏襲型で、リアビューミラーもアストンと似通った2点保持形式だが、外側の足はサイドポッドではなく、その上面に取り付けられた整流フィンとの一体型となっている。

Courtesy Of Aston Martin / Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

2022年F1マシンのラジエーター給気口とインダクションポッド比較:アストンマーチンAMR22、メルセデスW13

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデス2022年型F1マシン「W13」のサイドポッド上部フィンとの一体型リアビューミラー

サイドポッド、ボディーワーク

サイドポッドは非常にタイトにまとめられており、他チームと比べてコックピットのかなり後方に位置している。サイドポッドの上面はリアに向けて大きく下降してフロア上面の気流と合流するようなフォルムだ。

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2022年F1マシンのサイドポッド比較:アストンマーチンAMR22、メルセデスW13、フェラーリF1-75

同じPUを搭載するアストンマーチンのエンジンカバーにプレナム干渉を防ぐための唐突な膨らみがある一方、W13にはこれがない。またルーバー(排熱孔)もない。

四角い形状のラジエーター給気口の下部から側面にかけては大きくアンダーカットが設けられている。フロアの端は興味深い事に、チームが昨年のプレシーズンテストを前に隠し続けてきたものと同じく波打っている。アストンマーチンも昨年、同様のアプローチを採っていた。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

シェイクダウンを行うジョージ・ラッセルとメルセデスF1マシン「W13」、2022年2月18日シルバーストン・サーキットにて (5)

サイドポッドもそうだが、パワーユニットを格納するボディーワークは非常にコンパクトな印象で、まるで試合前のボクサーかの如く絞り込まれた”細マッチョ”だ。パッケージングの妙と言えるだろう。

エンジン部門を率いるハイウェル・トーマスが指摘したように、最新のメルセデス製F1パワーユニット「M13」は従来型よりも更に小型化されており、今季に向けて変更されたパーツの数は2014年にV6ハイブリッド・ターボが導入されて以来最大だと言う。

またテクニカル・ディレクターのマイク・エリオットは、理想的な空力ボディーを実現させるために「内部を完全に再パッケージ化する必要があった」と述べ「膨大な量の再設計とシミュレーション」を通して「サイドポッドとエンジンカバーのパッケージを如何にタイトにまとめ上げるかという点で、また一歩前進することができた」と語っている。

W13が如何にタイトかは、下記写真の広大なフロアを見るとよく分かる。

Courtesy Of Daimler AG

メルセデスの2022年型F1マシン「W13」ローンチモデルのフロア

アンダーフロア・トンネル

グランドエフェクト発生の導入口、フロア前縁には4枚のベーンが設けられた。外側のターニングベーンは前輪が発生させる乱流を車体外側に追いやるように角度が設けられている。ベンチュリートンネル入口の高さはラジエーター給気口より大きく、ライバルより遥かに高い印象だ。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデスの2022年型F1マシン「W13」のフロア前縁に設けられたベンチュリートンネルと4枚のベーン

フロア下面が公開される事はないため、このエリアの大まかな構造についてはF1が発表した以下の画像を参照されたい。如何にして高速の気流を大量にトンネルへと引き込むかがダウンフォース生成においてのポイントの一つとなる。

copyright FORMULA 1

2022年型F1マシンのフロア下部

新車発表に際し、物議のアブダビ以来初めてメディアに語ったハミルトンは、一度も現役引退を考えた事はなかったとした上で「体調も良いし最高の気分だ」「僕のベストが去年の終わり時点だと思うなら、今年を見るまで判断を待って欲しいね」と言ってのけた。

レギュレーションが変更され、チーム間序列が白紙に戻されたとは言え、少なくとも現時点においてメルセデス&ハミルトンに死角を見出すのは難しい…新車発表とシェイクダウンを経た現時点ではそう思わされてしまう。

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