メルセデスF1、9戦を経て遂にポーパシング克服を宣言!一方で立ちはだかるパフォーマンスとライドの悪循環

P3ボードの前にメルセデスW13を停めるルイス・ハミルトン、2022年6月19日F1カナダGP決勝レースCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデスのトト・ウォルフ代表兼CEOは第9戦F1カナダGPを終え「解決されたと思う」と述べ、ゼロポッド導入以降、パフォーマンス解放の妨げとなってきたW13のポーパシングを遂に克服できたとの考えを示した。

7度のF1ワールドチャンピオンは開幕戦以来、表彰台に上った事がなかったものの、ジル・ビルヌーブ・サーキットで3位フィニッシュを飾り、苦境の連鎖に終止符を打った。ルイス・ハミルトンは「セットアップさえ上手くやれれば、このクルマにはもっと大きな可能性がある」と期待を膨らませた。

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決勝レースを3位で終えたルイス・ハミルトン(メルセデス)、2022年6月19日F1カナダGP

3位のハミルトンに続き、ジョージ・ラッセルが4位と、メルセデスは開幕及び第3戦と並ぶ今季最高のリザルトを残した。ラッセルは「望んでいるパフォーマンスには依然として達していない」としながらも「僕らのレースペースはこれまで以上にフェラーリやレッドブルに近かった」と自信を深めた様子を見せた。

ハミルトンは過去3戦連続でチームメイトに予選で敗北してきた。そして開幕バーレーンGP以来、ラッセルの前でチェッカーを受けた事はなかった。その一因は個人としてのパフォーマンスを追求するのではなく、実験的なセットアップを担当してクルマの課題解決に取り組んできたためだろう。

土曜から日曜にかけて好転したモントリオールの天候と同じ様に、長く苦しんだ暗闇の先に光を見出したハミルトンは「本当に、本当に嬉しい」と述べ、「ひょっとしたらシーズン後半はジョージが実験を担当してくれるかもね!」と冗談を飛ばした。

これまでは失望や不満など、レース後のドライバー及び首脳陣の発言はネガティブなものばかりであったが、今回は課題点を見つめつつも前向きなエネルギーが感じられた。その理由は長く苦しんだポーパシングを解決できたとの結論に達したためだったようだ。

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メルセデスの最高技術責任者を務めるジェームズ・アリソン、トト・ウォルフ代表、リザーブのニック・デ・フリース、2022年6月19日F1カナダGP

英Autosportによるとウォルフはカナダでのレースを終え、「ポーパシング、あるいはバウンシングと我々が定義しているものに関してある程度の調査を終えた。マシンの空気力学的な動きに関するポーパシングに関しては、バルセロナの辺りで問題を解決、掌握できたと思う」と語った。

メルセデスの指揮官はモントリオールでの第9戦を以て、アンダーフロアへの気流が妨げられる事で高速走行時に発生する空力的な上下動を克服できたと主張した。ただし、ポーパシングという目下の課題が解消された事で、非常に硬いサスペンションがもたらすバウンシング=底打ち、という新たな課題に直面する事になった。

ウォルフは「今はそれよりも、クルマの乗り心地がドライバーの(不満の)発言の原因となっている。兎に角、クルマが硬すぎる。縁石やバンプを乗り越えた際のライドが悪い。この問題に取り組んでいけば、もっと上手く対処できるようになるはずだ」と説明した。

ドライバーに不快感を与えるバウンシングは車高を上げサスペンションを柔らかくするなどの工夫によって改善するものの、単にそれだけではクルマのパフォーマンスを失う事になる。パフォーマンスとライドの悪循環から抜け出す術をメルセデスはまだ知らない。

高速のロングコーナーが特徴の次戦イギリスGPは路面が滑らかであるため、メルセデスがより高い競争力を発揮する可能性はある。

シルバーストンではFIAが検討中のポーパシングに関する新たな制限が設ける可能性があるが、ウォルフの主張通り、既に完全克服できているのであればその影響を懸念する必要はない。

ただ、仮にそうだとしても現時点ではまだ、レッドブルやフェラーリに匹敵する速さを実現するための鍵を見つけられていないのは確かで、シーズンの4割を消化してようやく、本当の意味でスタート地点に立ったに過ぎないとも言える。

競争力を上げているのはメルセデスだけではない。フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)はバーチャル・セーフティーカー(VSC)とERSトラブルがなければメルセデスを抑える事は可能だったとしている。ディフェンディングチャンピオンの前に続く苦難の道はまだ終わらない。

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3位でチェッカーフラッグを受けたルイス・ハミルトン(メルセデス)、2022年6月19日F1カナダGP決勝レース

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