ピアストリ対ノリス、マクラーレンが競争禁止のチームオーダーを発動しなかった理由
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最終的にチャンピオンシップ争いにおいて決定的な意味を持つ可能性があるにも関わらず、F1オーストリアGPのスプリントでマクラーレンのピットウォールは、オスカー・ピアストリにチームオーダーを発動せず、ランド・ノリスと自由に競わせた。
前日の予選で0.093秒差でポールポジションを獲得したフェルスタッペンはDRSを使うマクラーレンの猛攻に晒され、5周目のターン3でノリスにリードを奪われるも、続くターン4ですぐさま抜き返した。
2人の争いをピアストリが見逃すはずもなく、僅かにロックアップしながらフェルスタッペンがノリスを交わしてターン4を抜けていくと、ノリスの横に並んで高速のターン6にアプローチ。アウト側から追い抜き2番手に浮上した。
一連のバトルについてピアストリは「2人が激しくやり合っているのは見ていたし、ターン4での動きがかなり遅かったから、2人まとめてパスできればと思っていたんだけど、時期を見計らうことにしたんだ」と振り返った。
「多分、あの翌周にマックスを追い越すチャンスが1度、あったと思うんだけど、その後はペースが上がらなかった」
ノリスは首位フェルスタッペンから69点ビハインドのランキング2位でシュピールベルクに乗り込んだ。一方のピアストリはノリスから63点ビハインドのランキング6位につけていた。
スプリントにおける2位と3位フィニッシュの差は僅か1ポイントに過ぎない。だが、シーズンを経る毎に争いはタイトになってきており、2021年のように僅かな違いが最終的にチャンピオンシップを決定する可能性は十分にある。
チームオーダーを発動してノリスの後方に留まるようピアストリに指示しなかったのはなぜなのか? この点についてマクラーレンのアンドレア・ステラ代表は「後で考えるつもりだ」と述べ、現段階では自由に競わせ合うべきだとの考えを示した。
「オスカーの動きは良かった。彼はあのポジションに値すると思う。ある意味、ランドがドアを開けたわけだが、それもレースの一部だ」
「もしレースに影響を与える必要があるならば、後でやることになるが、今は兎に角、時期尚早だ」
ノリスやピアストリに限らずフィールドの大部分において、レース開始直後には数多くの追い抜きや仕掛けが見られたものの、数周を経るとピタリとアクションが止んだ。
この現象に対する「技術的な説明」を求められたエンジニア畑出身のステラは「バルセロナでも同じことが起きた」と切り出した。
「レース序盤にマックスがラッセルを攻撃できる状態にあったのに対し、ランドは後ろに留め置かれていた」
「走行の開始からタイヤが安定するまでの移行期には、グリップの状態に応じて状況が変わるもので、タイヤの使い方に関しても多くの選択肢がある」
「最初の数ラップは燃料が重いため、変化が大きい。だが3、4周もすると状況が安定する傾向がある」
「だからこそ、スティントの開始時や特にレース開始の序盤に多くのアクションが見られるんだ」