冗談じゃない!フレキシブル・ウイング規制を巡る各チームの思惑…メルセデスも変更へ
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メルセデスの告発をきっかけに、国際自動車連盟(FIA)はフレキシブル・ウイングの規制に介入する事を決めた。統括団体は来月中旬以降の週末において、ウイングの剛性に関してより厳しい目を光らせる事になる。
マクラーレンやウィリアムズと共に、チーム首脳陣自らがフレキシブル・ウイングを使用していないと認めるチームの一つであるメルセデスは、タイトル争いを繰り広げるレッドブル・ホンダを相手にコース外でも火花を散らしている。
憤慨するアルファロメオ
だが、修正を余儀なくされるのはレッドブル・ホンダだけではない。アルピーヌやフェラーリも同じ様に、”たわみやすい”ウイングを搭載する事でストレート区間でドラッグを減らし、トップスピードでアドバンテージを得ているものと見られている。
スイス・ヒンウィルのチームも疑いの目が向けられているチームの一つだ。
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は第5戦モナコGPの木曜プレスカンファレンスにおいて「もちろん、(新しい技術指令の)影響を受けるのはフェラーリとレッドブルだけではない。ザウバーも同様に大きな影響を受ける事になると思う」と述べ、アルファロメオに言及した。
ボディーワークの設計には時間もコストも掛かる。ましてや今季からF1ではコスト上限ルールが施行されているため影響は少なくない。予算規模が小さいチームは尚更だ。
アルファロメオのフレデリック・バスール代表は、誰もがレギュレーションで定められた特定荷重下での変形量を遵守していたにも関わらず、FIAがシーズン中に突然「荷重と変形量を変えた」事は「驚くべき事」であり「冗談のような話だ」と不満をあらわにした。
また、規約で許可された範囲内で最大限を引き出したエンジニア達の仕事を侮辱するものであるとして「ルール変更のアプローチには少し憤慨している」と付け加えた。
設計変更によるパフォーマンスへの影響の程度については、ホーナー代表やフェラーリのマッティア・ビノット代表、アルピーヌのローラン・ロッシCEOといったライバルチームの首脳陣らと同じく「僅か」だと断言した。
猶予期間の存在を巡る攻防
テストの厳格化に際しては一定期間の猶予が設けられた。そのため第5戦モナコGPと第6戦アゼルバイジャンGPでは従来仕様のウイングの使用が認められる。
だが、規約違反の恐れがないマクラーレンのアドレアス・ザイドル代表は、猶予の存在に「強く反対する」と述べ、現在FIAと協議中だと明かした。
移行期間の存在に不満を募らせているのはルイス・ハミルトンも同じだ。
ポイントランキング首位に立つメルセデスのドライバーは、第6戦の舞台となるバクー市街地サーキットにおいては、フレキシブル・ウイングによるゲインが「コンマ6秒以上あるはず」だと述べ、「状況をコントロールするためにFIAに圧力をかけ続ける必要がある」と主張した。
レッドブル、ハミルトンの「0.6秒」発言を一蹴
これについてホーナーは、技術指令書への対処によってどの程度パフォーマンスがダウンするのかとの質問への回答の中で、ハミルトンの発言を「馬鹿げだ話」と一蹴した。
「数値化するのは難しいが… みんなが思っているほどではないと思う。コンマ6秒というコメントを耳にしたが、何とも馬鹿げだ話だ。コンマ1秒でさえ驚きだというのに」とホーナー。
「1パーツというものはクルマを構成する他のすべてのパーツと連動して機能するものであり、サーキット毎に異なるものだ」
「当然のことながら、クルマはレギュレーションに準拠して設計されており、FIAが定めたテストの全てをクリアしている。故にそれ(技術指令書の発行)は、ほとんどレギュレーション変更に等しいわけで、当然プロダクトに変更を加えなければならず費用も時間もかかる」
「今はマシンのリアに注目が集まっているが、いずれは他の部分にも目が向けられるようになるだろうし、他のチームも審査を受ける事になるだろう」
新規制導入のタイミングが遅いとのライバルからの批判についてホーナーは「事実上、ルールを変更する場合は、リードタイムが必要だ。コンポーネントに魔法をかけるような事はできない。費用をかけさえすれば一夜にして部品が手に入るなんて事はありえない」と述べ、FIAの判断を支持した。
メルセデスも変更を計画
なおフレキシブル・ウイングを採用しているチームだけでなく、使用していないメルセデスもウイングを「変更する必要がある」と認めている。ただし、ライバルとは異なり剛性を増やすのではなく減らして「柔らかく」する方向に、だ。
メルセデスのトト・ウォルフ代表は「我々は長い間、宙ぶらりんな状態に置かれてきた。我々は昨年の夏にフレキシブル・リアウイングの状況を報告したが、何のフィードバックも得られなかった」と語る。
「今年のクルマのコンセプトを考えると、もっと早くから取り組むべきであった思うチームのフラストレーションも理解できる」
「我々もウイングを修正しなければならない。柔らかくする必要がある。我々のウイングは剛性が非常に高く、たわんではならないとする例の規約第3条8項に準拠している」
ウォルフは更に「今回導入が決まった新たな検査は、我々にチャンスを与えてしまうような中途半端な解決策だ」と述べ、決定の遅さのみならず、不完全な対処方法しか導き出せなかったFIAを批判した。