FIA、ハーバートをF1スチュワードから解任「相容れない」物議の”副業”を問題視

2018年7月9日、英国ロンドンで開催されたF1 eスポーツ・プロ・ドラフト2018で解説を務めるジョニー・ハーバートCourtesy Of Red Bull Content Pool

元F1ドライバーのジョニー・ハーバートがF1スチュワードの座を退いた。国際自動車連盟(FIA)は2025年1月29日に声明を発表し、ハーバートとの間で「FIAスチュワードの職務とメディア解説者としての彼の活動は相容れない」との合意に至ったと説明した。

声明からは、ハーバートがメディア活動を続ける意向を示したため、解任を決定したと読み取れる。ハーバートは先月、後述のものとは異なる別のオンライン賭博サイト上で、2025年の開幕オーストラリアGPでスチュワードを務める予定であることを仄めかしていた。

賭博サイトでの物議の発言

3度のグランプリ優勝を誇るハーバートは、2010年より「ドライバー・スチュワード」としてレース審判団に加わり、レース中のインシデントを巡る裁定にドライバー視点で意見を提供する役割を担ってきた。スチュワードは4名体制で、うち1名はドライバーとしての経験を持つドライバー・スチュワードが担当する。

スチュワードの役割と並行して、ハーバートは2022年まで英Sky Sports F1の解説者として活動していたが、2023年シーズン前に番組を降板。その後はオンライン賭博サイトと提携し、公の場ではなく当該サイト上で、裁定に対する個人的見解を提供していた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバーズパレードでスカイスポーツF1の解説者で元F1ドライバーのジョニー・ハーバートと話すマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2016年8月28日、F1ベルギーGP(スパ・フランコルシャン・サーキット)

こうした発言はメディアやF1ファンの間で広く拡散され、FIAスチュワードの公正性が疑問視されることとなった。またこれに関連して、昨年は特にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に対する批判的なコメントが物議を醸した。

ハーバートがスチュワードを務めた2024年のF1メキシコGPでは、フェルスタッペンに2回のペナルティが科された。この件に関して、ハーバートは契約関係にあるオンライン賭博サイトのコラムで自身を正当化する発言を行った。

ランド・ノリス(マクラーレン)を故意にコース外に追いやったとするハーバートの発言を受け、フェルスタッペンは「かなり異常」な見方だと批判し、彼の父であるヨス・フェルスタッペンも「特定のドライバーに偏ったスチュワードがいる」と暗に非難した。

また、ハーバートはアブダビGPでのフェルスタッペンとオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の接触、さらにはフェルスタッペンとジョージ・ラッセル(メルセデス)との間のトラブルについても言及した。

常設スチュワード議論、再燃か

今回のハーバートの退任を受け、F1のスチュワード制度そのものにも改めて注目が集まることが予想される。

スチュワードは実質的にボランティアとして運営されており、旅費やレース現場での経費のみが支給される形になっている。レース事に異なるメンバーが担当するため、一貫性やプロフェッショナリズムに欠けるとの批判が以前からあった。

F1ドライバーたちは常設スチュワード制を求めており、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)のディレクターを務めるラッセルも「統一された基準を設けるべき」と主張している。

一方で、FIAのモハメド・ベン・スライエム会長は、常設スチュワード制には膨大なコストがかかるとし、慎重な姿勢を崩していないが、スチュワードの選考基準の見直しや、常設スチュワードの議論の活発化は避けられそうにない。

また、ハーバート自身が今後どのような形でメディアに関わっていくのかも注目される。

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