ホンダF1山本MS部長、スペック3に至るまでのパワーユニット開発状況を披露「そんなに芳しいものではなかった」
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今シーズンのホンダ製F1パワーユニット「Honda RA618H」の最終型”スペック3″が遂に実戦投入の時を迎えた。ホンダ・レーシングは本拠地鈴鹿サーキットで開催されているF1日本グランプリに最新バージョンのアップグレードを投入。初日金曜のフリー走行で、会場に駆けつけたファンの期待に応えるスピードを披露した。
旧型エンジンから飛躍的なパフォーマンス向上を遂げたものとみられているが、Hondaのモータースポーツ部門を統括する山本雅史によれば、スペック3に至るまでのパワーユニットの開発状況は決して芳しくなかったという。
「今シーズンの開発に関しては、これまでのところは期待していたほど迅速には進んでいませんでした」と山本。F1日本GP金曜記者会見に出席し、スペック3投入に至るまでの開発の進捗をこのように明かした。
「ですがここ最近、特にICEの燃焼室の改善に成功し、全体として大きな改善を果たしました。我々は最終的にこれを完成させ、アップグレードとして投入しました。非常に成功した成果を確認しています」
スペック3はICE、すなわち内燃機関の燃焼効率を改善する事でパワーを向上。ターボ及びエネルギー回生を担う各コンポーネントに関しても、信頼性の向上と共に性能を引き上げた。
一体どのくらい速くなったのか?40馬力、1周あたりコンマ5秒もの大幅改善を果たしているとも噂され、フランツ・トスト代表はスペック3によってホンダはルノーを上回ったとの認識を示している。
だが山本は、まだレースディスタンスを消化したわけではなく、今回の日本グランプリが初めての実戦投入だとして、具体的な向上レベルについては明言を避けた。
「ロシアで投入はしましたが、ご存知のようにまだレースで使用したわけではありません。今回の日本グランプリがスペック3を実戦投入する最初の機会となります」
「どの程度の向上を果たしたのかについてはレースを終えた時に明らかとなるでしょう。今週末実際に走らせることで、以前の仕様のものとの比較が可能となりますし、エンジン単体だけでなく、クルマ全体のパフォーマンスを比べて分析する事ができるでしょう」
だが、山本の隣に座っていたスクーデリア・トロロッソのフランツ・トスト代表は、ホンダのお膝元で待望のエンジンを搭載する以上、予選Q3進出を果たす事が絶対条件だと具体的な数値に言及する。
「スペック3エンジンを使う以上、予選ではQ3に進出しなければならない。ザウバーはコンストラクターズ選手権で猛追してきており、我々は彼らの前に留まる必要がある。これが鈴鹿でのターゲットだ」
ホンダは今回のスペック3を基準として、来シーズン用のRA619Hの開発に取り組むことになる。来季はスクーデリア・トロロッソに加えて、3強チームの一角をなすレッドブル・レーシングへのPU供給が決定しており、ホンダはマクラーレン時代以上のプレッシャーに晒される事になる。
「トップチームと一緒に仕事が出来ることを非常に嬉しく思っています」と山本。やる以上は頂点に立たねば意味がない…ホンダが掲げるモットーはレッドブルの哲学と共鳴。2019シーズンは優勝争いに足るだけのエンジンパワーと信頼性が要求される。
「レッドブルはF1を代表する強豪チームです。私とクリスチャン(ホーナー代表)は、この一年を通してコミュニケーションを取り続けてきました。それ自体は素晴らしいものですが、同時にプレッシャーでもあります」
「我々としてはこのプレッシャーを、素晴らしい結果をもたらすための良いエネルギーに変えて進んでいきたいと思っています。無論、レッドブルだけでなくトロロッソ側からも重圧を感じていますが、こういったプレッシャーを力に変えて、2019年に良い結果を出せればと考えています」