レッドブル、”仕返し”の先手戦略で劇的1-3!ホンダが30年ぶりの3連勝 / F1フランスGP《決勝》結果とダイジェスト
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スペインGPの借りを返す先手必勝の2ストッパー戦略を以て、レッドブル・ホンダがポール・リカール・サーキットでの53周に渡る激戦を制し、V6ハイブリッド・ターボ時代における初の3連勝を飾ると共に両チャンピオンシップでのリードを広げた。
2021シーズンFIA-F1世界選手権 第7戦フランスGP決勝レースが6月20日に行われ、マックス・フェルスタッペンが後続のルイス・ハミルトン(メルセデス)を2.9秒引き離してポール・トゥ・ウインを飾った。
優勝の25点に加えてファステストラップのボーナス得点をも得たフェルスタッペンは満額を手にし、ドライバーズ選手権でのハミルトンに対するリードを12点に広げると共に、この日のDriver of the Dayに輝いた。
また、「ポール」「ファステストラップ」「優勝」のハットトリックを達成したF1史上46人目のドライバーとして歴史に名を刻んだ。
”仕返し”の先手戦略で30年ぶりの快挙
最後までどちらが勝つのか分からない手に汗握る大接戦だった。
1周目にハミルトンに先行を許したフェルスタッペンは、1回目のピットストップでアンダーカット戦略を成功させ早々に首位を奪還。そのままフィニッシュへと向かうかに思われたが、後続が1ストップを決める中で中盤に再びピットイン。一旦は4番手に後退するも残り2周でハミルトンをパス。攻めの2ストップ戦略を成功させトップチェッカーを受けた。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は奇策とも言える2ストップ戦略について、ラップをリードしながらも先手の2ストップ戦略に打って出たメルセデスに逆転負けを喫した今季スペインGPに触れて「ちょっとした仕返しだ」と笑った。
もう一台のレッドブル・ホンダRB16Bをドライブするセルジオ・ペレスは、予選4番手からスタートすると第1スティントを引き伸ばし、タイヤの優位性を活かして終盤にバルテリ・ボッタス(メルセデス)をオーバーテイク。3位表彰台に上がった。
ホンダF1にとっては、1991年の鈴鹿日本GP・オーストラリアGP以来となる30年ぶりの2戦連続のダブル表彰台で、3連勝としても同じく30年ぶりの快挙となった。
明暗分かれたマクラーレンとフェラーリ
当初予想された以上にタイヤのデグラデーションが酷く、各車10周目を過ぎたあたりからグレイニングに苦戦。タイヤマネジメントと戦略が鍵を握る事となった。
この点で見事な仕事をやってのけたマクラーレン勢が大きく躍進。ランド・ノリスが5番手、ダニエル・リカルドが6位と、中団グループとしてはこれ以上ない成績を残した。
その一方で、予選で速さを見せたフェラーリ勢は2台共が入賞圏外に滑り落ち、予選5番手のカルロス・サインツが11位、予選7番手のシャルル・ルクレールに至っては16位でクルマを降りる事となった。
見事に戦い抜いたガスリー
マクラーレンに続いたのは母国レースを迎えたアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーだ。
ペースが上がらないサインツに前を塞がれた事でリカルドとルクレールにアンダーカットを許し、スティントを引き伸ばしたノリスに対して先行を許したものの、地元ファンの目の前で7位入賞を飾ってみせた。
チームメイトの角田裕毅は予選クラッシュを経てピットレーンからレースをスタート。早々にウィリアムズとハースの4台を抜き去る場面もあったが入賞には及ばず、1周遅れの13位でヘルメットを脱いだ。
レース概要
決勝は日本時間20日(日)22時にブラックアウトを迎え、1周5,842mのコースを53周する事で争われた。日曜のル・カステレは午前中に雨が降る場面もあったが、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温24℃、路面31.5℃、湿度60.4%のドライコンディションで開始された。
レコノサンスラップでは、サインツがタイヤをロックアップさせ、コース外にある摩擦係数が高い赤色の路面にまで飛び出す場面もあった。
公式タイヤサプライヤーのピレリは中間レンジのC2からC4までのコンパウンドを投入。Q3進出組は全て中古のミディアムタイヤを履いてグリッドに着いた。
11番手以降としてはジョージ・ラッセル(14番手)、ミック・シューマッハ(15番手)、ニコラス・ラティフィ(16番手)、そして角田裕毅(ピット)の4台がミディアムを履き、他はハードをスタートタイヤにチョイスした。
注目のオープニングラップでは、ポールシッターのフェルスタッペンがターン2でコース外に飛び出てしまい、ハミルトンがラップ先頭に躍り出た。角田裕毅はハース勢を一気に抜き去り18番手にポジションを上げ、2周目にはラッセルを交わして17番手に浮上した。
デグラデーションの酷さに真っ先に悲鳴を上げたのはフェラーリで、リカルドに追い抜かれるや否や、ルクレールが13周目に先陣を切ってピットイン。結果的にこれが仇となり、フェルスタッペン以外で唯一の2ストッパーとなったルクレールは最終16位でレースを終えた。
レース展開が大きく動いたのは16周目。7番手を走行していたリカルドが前走のガスリーにアンダーカットを仕掛けるべくピットに入ると、各車ドミノ倒しのようにピットストップに動いた。
大部分が比較的早い段階で第2スティントへと移行した一方、上位を争うペレスとノリスは24周目までオープニングスティントを引っ張り、それぞれ4番手と14番手でコースに復帰した。
トップ4の中で最も早く動いたのは3番手を走行していたボッタスで、18周目にハードタイヤに交換。アンダーカットを防ぐべく、2番手を走行していたフェルスタッペンが翌周にカバーにまわり、こちらもハードに履き替えた。
ラップリーダーのハミルトンも同じくポジションを守るために20周目にピットに入るもフェルスタッペンの後方でコースに復帰。陥落したハミルトンは、第2スティントの前半でフェルスタッペンを猛プッシュし続け、毎ラップに渡って1秒圏内に入れ込む接近戦を展開した。
これに対してレッドブル・ホンダ陣営は、バルセロナでの二の舞を避けるべく先手必勝の戦略チェンジを敢行。33周目にフェルスタッペンをピットインさせ、ミディアムタイヤを履かせてコースに送り出した。代わって首位に浮上したハミルトンとの差は19秒だった。
猛追するフェルスタッペンはファステストラップを刻みながら44周目にボッタスを交わして2番手に浮上。5秒前を走るハミルトンに照準を切り替えたが、タイヤは徐々にタレれていき、周回遅れに前を阻まれるなど、一時は追い付くことすら不可能に思われた。
だがフェルスタッペンは決して諦める事なくタイヤから限界以上を引き出し、残り3周でハミルトンの1.5秒以内に付けると、残り2周のミストラルストレートのシケインでオーバーテイク。そのままトップチェッカーを受けた。
2021年F1第7戦フランスGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 53 | 1:27:25.770 | 26 |
2 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 53 | +2.904s | 18 |
3 | 11 | ペレス | レッドブル | 53 | +8.811s | 15 |
4 | 77 | ボッタス | メルセデス | 53 | +14.618s | 12 |
5 | 4 | ノリス | マクラーレン | 53 | +64.032s | 10 |
6 | 3 | リカルド | マクラーレン | 53 | +75.857s | 8 |
7 | 10 | ガスリー | アルファタウリ | 53 | +76.596s | 6 |
8 | 14 | アロンソ | アルピーヌ | 53 | +77.695s | 4 |
9 | 5 | ベッテル | アストンマーチン | 53 | +79.666s | 2 |
10 | 18 | ストロール | アストンマーチン | 53 | +91.946s | 1 |
11 | 55 | サインツ | フェラーリ | 53 | +99.337s | 0 |
12 | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 52 | +1 lap | 0 |
13 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ | 52 | +1 lap | 0 |
14 | 31 | オコン | アルピーヌ | 52 | +1 lap | 0 |
15 | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 52 | +1 lap | 0 |
16 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 52 | +1 lap | 0 |
17 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 52 | +1 lap | 0 |
18 | 6 | ラティフィ | ウィリアムズ | 52 | +1 lap | 0 |
19 | 47 | シューマッハ | ハース | 52 | +1 lap | 0 |
20 | 9 | マゼピン | ハース | 52 | +1 lap | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
---|---|
気温 | 24℃ |
路面温度 | 31.5℃ |
周回数 | 53 |
セッション概要
グランプリ名 | F1フランスGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | ポール・リカール・サーキット |
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設立 | 1970年 |
全長 | 5842m |
コーナー数 | 15 |
周回方向 | 時計回り |