異例のタイヤ問題再発を防ぐ鍵は?FIAとピレリが挑むカタールGPの新たな試み
Published:
2023年のF1カタールGPで発生したタイヤトラブルを受け、ピレリと国際自動車連盟(FIA)は2024年大会に向け、問題の再発を防ぐため具体的な対策を講じた。
昨年大会では、決勝に先立って行われたスプリントレースにおいて、ロサイル・インターナショナル・サーキットの改修に伴い導入された高さ50mmのピラミッド型縁石が、特に高速コーナーでタイヤに大きな負担をかけていることが判明した。
この縁石を繰り返し使用することで、「高周波干渉」によってタイヤのサイドウォールとケーシングの間に微細な亀裂が生じていることが確認されたため、FIAは決勝に向け、如何なるタイヤも18周を超えて使用してはならないとの異例の指示を出した。この結果、57周のレースは必然的に3ストップレースとなった。
そこでFIAとピレリは、2023年の問題が繰り返されないよう、過去数か月にわたり包括的な対策を検討してきた。
縁石形状の変更
ロサイル・インターナショナル・サーキットの全16コーナーのうち、7つのコーナーに設定されるピラミッド型縁石が改良された。
具体的には、ターン1・2、4、10、そして最も大きな負荷をかけていたターン12〜14の縁石の先端が丸く削られ、タイヤのサイドウォールに加わる損傷リスクを軽減する仕様に変更された。
グラベルの設置
ドライバーによる縁石の過度な使用を抑制するため、ターン1、2、3、4、5、12、13、14、15の出口側にある縁石の奥に、幅2メートルのグラベルトラップを新設した。
ピレリによるテストと研究
ピレリはイタリア・ミラノの開発施設において、FIAから提供された新しい縁石のサンプルを用いたテストを実施した。さらに、2024年仕様ではないものの、過去のマシンを使用して実走データを収集し、シミュレーションの結果とテストベンチの指標を確認するための基礎資料とした。
昨年のカタールGPではタイヤ問題だけでなく、高温多湿という過酷な環境に起因して、ドライバーがレース中にヘルメットを着用したまま嘔吐する、深刻な脱水症状でリタイアする、あるいはレース後に失神しかけるといった事態が発生した。
ただし、2024年大会は約1か月遅い時期に開催されるため、気温条件は昨年より改善されることが期待されている。さらに、昨年の過酷なコンディションを受け、FIAは先日、2024年よりコックピット冷却システムを導入する決定を下した。